2018/08/21
M4カービン LEオフィサーズ リアルガン製品レビュー 【2016年12月号掲載】
M4カービン LEオフィサーズ
1994年、軽量短銃身のカービン銃としてUSミリタリーに制式採用されたM4カービンは、幾多の実戦によってバトルプルーフされている。現在ではM16A4に替わり、M4A1が米軍の主力ライフルとなっている。このM4を使い倒すLEオフィサーにM4について語ってもらった。
ジェイソン・デイヴィス
アーケディアPDのSWATチームリーダー。M16A2コマンドをパトロールライフルとして持っており、すでに8万発も射撃してきた。ジェイソンはM16A2のフルオート射撃も難なくこなせる。といってもこれは並大抵のことではない。ボルトの前後サイクルが早いので、ディフレクターに衝突したケースが斜め前方に飛んでいるのが分かるだろう。それでもライフルそのものは物凄く安定している。これこそ日々の訓練の賜物なのだ
M4 ‶ザ US ミリタリーライフル”
すでに皆さん重々ご承知のこととは思うが、M4というのはUSミリタリーが制式採用している5.56×45mmNATO弾を使用するダイレクト・インピンジメントガスオペレート方式の軽量短銃身カービン銃である。元々M4というのはその伸縮式ストックやM16より5. 5インチ(約14cm)短い銃身を持っている。そのためおもに士官級オフィサーや車両搭乗員、工兵などに支給されていたカービンだ。しかし、USミリタリーの制式ライフルであった20インチ銃身で固定ストックの付いたM16シリーズに比べ、重量にして400g軽く、長さにして24cm以上(ストック伸縮時)短いM4は、CQB(近接戦闘)での取り回しを重視する特殊部隊員を中心に広く使われていくようになっていく。そして中東戦争などで手荒い実戦の洗礼を受けたM4は、各部の改良を受けM4A1となった上で、USアーミーと海兵隊においてM16A4に替わる主力ライフルとなったのである。
さらに2013年には、USアーミーが12万挺のM4A1をなんと“FN Herstal” 社に発注し、2018年までの納入が決定されたというショッキングなニュースが業界を駆け巡った。あのコルト社が受注の選択からはずされたというのも驚きだったが、数々の新制式ライフルのトライアルを行なってきたUSミリタリーが、今後しばらくはM4A1を主幹ライフルとして使用することを発表したことにもなるからだ。
ただし、このミリタリーにおけるM4シリーズの継続使用に関しては、かなりの紆余曲折があった。このあたりを、アーケディアPD(ポリスデパートメント)のSWATチームリーダーであり、コルト社の全米に7人しかいないアーマラーでもある、ジェイソン・デイヴィスに聞いてみた。彼はPDのインストラクターに就任した13年前から、パトロールライフルとして何とフルオート機構付きのM16A2コマンドを所有し、その総発射数は8万発という驚きの経験を持つ猛者である。
「そうだね、M4はAKと並んで“世界で一番使われているアサルトライフル” であるのは間違いない。当然のごとくM4とAKは比べられて、どちらが優位か、侃々諤々の議論がされているね。そうだな、まずはM4の弱点と呼ばれている部分を列挙してみよう。
・ バトルフィールド( 戦場)における5.56×45mm弾の威力不足
・ より過酷な自然状況(砂嵐や泥といった異物が機関部に進入するのが避けられない状況下)での信頼性がAKに比べると劣る
・ ジャムが比較的多い
・ 火薬の燃えカスなどを含む高温の発射ガスが機関部に吹き付けるため、内部が汚れやすく、頻繁な掃除を必要とする
逆に、M4がより優れているといわれる点は
・ 特に遠距離(200m以上)における精度が高い
・ 弾薬が軽く小さいため、兵士が身につけることのできる弾数が多い ※兵士1人が運べる重さを10kgとした場合、AK47(7.62×39mm弾)だとマガジンにして最高でも13本(390発)だ。一方M4は22マガジン(660発)分キャリーできる
・ 好みのオプティックサイト(光学機器)を最適な位置に装着できる
・フルオート時のコントロールが格段にしやすいといったところが取り沙汰されているね。
あとは細かく上げればキリがないが、これらの長所短所を突き詰めると、M4がAK47(7. 62×39mm弾)に劣っている点は、過酷な条件下における信頼性と、大口径、重量級弾による威力の差、の3点に集約されると思う。この信頼性に関しては、今度USアーミーが12万挺ものM4A1を新規契約したことからも分かるが、ちゃんとしたメンテナンスさえすれば、M4A1の信頼性には問題ない、ということなんだ。M4は、中東における戦争でさらなるバトルプルーフを受けたことになる。私もこのM16A2でいろんなテストをしてきた。これまで8万発撃ってきたが、耐久性や信頼性においては、まったく問題ないといえる。オペレーションシステムも、このダイレクトインピンジメントのままのほうが、あらゆる点で現行のM4シリーズ用ガスピストン方式よりも信頼性が高く、マイルドな撃ち心地や軽さからくる取り回しのよさなど、優れていると思う。あとは、常に問題にされる5.56×45mm弾の威力不足だね。
私の友人の中にも、バトルフィールドで5発以上ヒットしたにもかかわらず、敵が走って逃げていったとか、車のウインドウに6発もヒットしたのに運転者はそのままドライブして姿を消した、という経験を披露する奴もいる。それはそれで事実かもしれないが、一体どのくらいの距離で、どの弾薬を使っていたかという重要なファクターが抜け落ちていることが多い。これはM4カービンの威力について知る、大事な要素となってくると思う」
COLT M4LE
- 口径:.223Rem
- 銃身長:11.5インチ(29.21cm)
- 全長:27.5インチ(66.9cm)
- 重量:6.21ポンド(2.81kg)
これは“パトロールライフル”として、各パトカーに1挺ずつ配備されているM4である。当然のごとく、それぞれのオフィサーはこのライフルに特化した認定テストに合格しなければならない
誇らしげに入ったコルトのロゴと“M4 LE”の刻印。ロウエンフォースメント専用のモデルだ
反対側には“ミリタリー/ガバメント ロウエンフォースメント オンリー”という刻印が入る
ドットサイトはエイムポイント社製のH1。リアサイトはMATECK社製フリップアップサイトを採用している
サプレッサーはシュアファイア社製“SOCOM M556-MINI” モデル。これは全員に支給される。ライトはペリカン社製だ
COLT M16A2 Commando
- 口径:.223Rem
- 銃身長:11.5インチ(29.21cm)
- 全長:27.5インチ(66.9cm)
- 重量:6.21ポンド(2.81kg)
このコマンドモデルは、ジェイソンがSWAT隊員になった頃から愛用している1挺だ。13年間でトータルで8万発は撃っているが、いまだに100ヤード(約90m)で2インチほどに集弾するという。このライフルではいろんなテストもこなしてきたが、6,000発クリーニングなしでも、ジャムは弾が原因と思われる1回だけという。レシーバー内が汚れやすいダイレクトガスシステムのM16としては驚異的な結果だ
アーケディアPD SWATスナイパーの面々。全員がCrye Precisionの装備を使っている
これまた使い倒した感の強烈なレシーバー部。もちろんフルオート仕様だ。セーフティレバー部分をみればそれが分かる。ミリタリー仕様の刻印も入っていない
75ヤード(67.5m)で、スタンディング3発。必ずターゲットの黒点以内に収めなければならない
ニーリング3発
そしてすぐにプローン3発に移行する
75ヤードからだと、ターゲットはこんなに小さく見える
彼らのニーリングは、すぐに移動できるようライフルはどこにも固定しない
プローンでもライフルは地面に固定しない。リコイルを緩和するのと、とっさの移動を容易にするためだ
撃ち終わったら50ヤードまでダッシュで移動する
シュート オン ムーブ。前方に移動しながら撃つ
訓練中はダッシュの連続だ。75ヤードから50ヤードまで全力疾走だ
50ヤードでの3姿勢射撃のあと、またまた25ヤードまで疾走する
25ヤードはライフルにとって必殺ゾーンだ。ジェイソンの肩付けの位置をよく見てほしい。顔を傾けることのないよう、バットストックの下半分だけで肩に固定している。重要なポイントだ
これが最近採用されたダミーターゲット。着弾した部分が黒く浮かび上がる構造になっている。撃って黒くなった部分はスプレーを吹きかけることで再び使用できる
M16A2のフルオート射撃。毎分900発ほどのサイクルなので、11.5インチ銃身からのリコイルはかなりのものだ。しかしジェイソンは楽々と集弾させている
M193 Ball、M855、そしてM855A1へ
「1980年代まで、USミリタリーではM193 Ballと呼ばれる、55グレイン フルメタルジャケット鉛芯の弾頭を持つ5.56×45mm弾を制式採用していた。ライフルでいうとM16A1が支給されていた頃の話だ。銃口初速はM16A1の20インチバレルからだと3,250fps(990m/秒)であり、有効射程は550ヤード(500m)だった。しかし前線からはボディアーマーを撃ち抜けない、車のドアが撃ち抜けない等の貫通力不足が報告され、新たな対応が迫られてきたんだな。
そこで新たなモデル、M16A2の開発にあわせて、62グレイン フルメタルジャケット弾頭の内部先端に、鋼の“ペネトレーター”と呼ばれるパーツを組み込んで鉛を充填したM855という弾薬を開発したんだ。1983年には制式採用となり、このアモは賛否両論で迎えられることになる。確かに貫通力は向上したが、ボディアーマーを着ていないターゲットには、簡単に貫通してしまうだけで、十分なストッピングパワーが発揮できないというのが徐々に分かってきたんだ。
そしてさらに新しく開発されたのが、2010年に制式採用された“M855A1” 弾だ。弾頭重量は62グレインと同じだが、いくつかの改良が加えられた。
1. 鉛を一切使わないため、弾頭の全長が少し長くなった
2. M855より重くなったぺネトレーターはその先端が弾頭に露出し、ブラウンのコーティングがかけられた
3. 推進薬(発射薬)はWC-844からSMP-842に変更され、初速が上がり、さらに発射炎も抑えることができた。また発射時のチャンバー内の圧力が上がった
4. 貫通力が大幅に向上した。M855では9.5mm厚の鉄板を160mまで貫通できたのが、M855A1では同じ鉄板を350mまで貫通できるようになった
5. 弾頭の構造改良により、やわらかいターゲットにも十分な効果を示すようになった
とまあ、威力の向上を高い次元で実現したといわれている。ただし、弾頭の初速が上がり、腔圧も高くなった代償として、焼損によるバレルの磨耗や、各パーツの耐久性に問題が出るのではないか、ともいわれている。このあたりは、今後さらに実戦における
データが積み重なって、明らかになっていくだろう。
私は、このM4プラットフォームは世界でも最先端の実力を持っていると思う。欲をいえばいくつか改良の余地もあるが、このままでもちゃんと正常進化した優れたアサルトライフルだと思う。特に我々のようなポリスオフィサーにとっては、もはや最適ともいえるウェポンなんだ。近距離での使用が多いから、威力不足はまったく感じないし、現
在デューティアモとなっているSpeer社のゴールドドット(55グレイン ソフトポイント)を使っている限り、オーバーペネトレーション(壁などを貫通して、第3者を怪我させてしまったりすること)の心配も少ない。我々のM4は11.5インチ銃身だから、車
内や室内での取り回しも問題ないし、メンテナンスも簡単だ。まさに理想のカービンといっても過言ではない。それでも、きちんとしたトレーニングは必要だから、使い手を選ぶウェポンである、というのも事実だね」
今回は、ジェイソンの多大なる強力により、M16A2によるフルオート動画撮影もすることができた。彼が撃つと、大したリコイルもなく簡単にこなしているように見えるが、なにせ短い銃身で毎分900発もの発射サイクルを持っているのだから、そのリコイルは相当なものだ。実銃の動き、そしてその迫力を読者の皆さんにも楽しんでいただければ幸いである。
彼らが訓練に使うのは、すべてファクトリーアモだ。それもソフトポイントやJHPなので割高だ。貧乏性の私などは気が遠くなってしまう
アーケディアPD SWATの制式プレートキャリアは、Crye Precision社の“Jumpable
Plate Carrier”だ
これが最新の“DFNDR Armor” 社のレベルIIIAプレートである。その重さはなんと450gしかない。これで.44マグナムの240gr.JHPまで止めてしまうというから凄い
3-4発のショートバースト後の1発目は、サプレーサー内のガスに引火してこんな発射炎が出ることがある。珍しい瞬間だ(実射シーンの動画はこちら)
TEXT&PHOTO:Hiro Soga