2019/08/24
無可動実銃の魅力「FA-MAS F1」
鋼鉄とグリスの匂いが漂う至高の浪漫
この国では、軍用銃を撃つことはおろか触れることすら難しい。故に軍用銃に対する評価は誰かの言葉の受け売りに偏ってしまう。だがその銃の真の価値を知っているのは、その銃で戦った戦士だけではなかろうか。銃の傷ひとつひとつが戦士の記憶だからこそ、無可動実銃に触れることは、戦士の記憶と自分を重ねられる崇高な儀式ともいえるのだ。
フランスらしい先進的なライフルの誕生
FA-MASとは、フランス語でサン=テチヘンヌ造兵廠製アサルトライフルの頭文字を取った名称である。誕生にはフランス軍のポール・テリエ将軍が強く関与している。
将軍は1940年士官学校在学中にドイツに占領されたフランスから北アフリカに脱出。戦後にフランスに帰国すると30歳で工学士号を取得し、1967年、FA-MAS自動小銃開発のリーダーとしてサン・エチエンヌ造兵廠に配属され、老朽化したMAS49/56の後継小銃の開発プロジェクトのリーダーに就任した。その時に開発したMAS 54アサルトライフルバリエーションの1つがブルパップであったが大口径との相性は悪く、次のFN FALをコピーしたタイプ62と呼ばれる7.62mmライフルは、軍部が5.56mm弾に強い興味を示し設計が変更されている。
小口径になったことで将軍が期待したブルパップが現実味を帯び、1952~62年の間に40ものモデルが試作され、完成したのがFA-MASである。テリエ将軍はFA-MAS以外にもFR-F1狙撃銃も設計しているが、こちらも現代では標準的なピストルグリップ型のスナイパーライフルとして先見性は群を抜いていた。
FA-MAS F1自動小銃
(#A98669、複数在庫品)
- 全長:757mm
- 口径:5.56mm×45
- 装弾数:25発
- 価格:¥648,000
あらゆる機能を盛り込んだスーパーライフル
同年代に開発されたステアーAUGより早い、1977年に世界初の正式採用されたブルパップライフルとして注目を集めたFA-MASは、単発、フルオート以外にも3点バーストも早くから採用され、バーストスピードも変更可能で、どの状態でも良好な命中精度を誇る。ブルパップの欠点である排莢システムも比較的容易に変更が可能で、グレネードも発射できるなどの機構も持っていた。これはべトナムで戦った米軍が辿ったM16の進化と同様であるのもとして興味深い。
射撃ごとに連動して動くコッキングレバーはキャリングハンドル内側に配置することで安全対策が取られている。ライフルグレネードサイトやバイポッド基部など多くの機能が所狭しに収められているのが魅力的だ
バレルに付けられたリブは放熱効果をもたらすだけでなく、グレネード用アジャストリングストッパーを兼ねている。ブルパップ特有の照準線の短さをカバーするためバイポッドが標準装備された
ブルパップライフルの特徴は機関部を後方に収められることだ。バランスと重量配分に配慮され、頬付けしやすいチークピースがつけられている
初期型のF1はM16A1で使用されたM193弾用に設計されたため、標準仕様のNATO弾を使用すると薬莢がちぎれてしまう可能性がある。そのため他国製のNATO弾の使用は禁じられ、鉄薬莢の5.56mm弾を生産し支給している。後期モデルであるG2になってNATO標準弾も使用できるようになったが、1挺あたりの納入単価が倍になったためすべてのF1モデルと交換することは難しく、F1も混合して使用されているため鉄薬莢はそのまま使われ続けている。
トリガー前のレバーはセレクターで、トリガーフィンガーだけで操作可能。グリップやハンドガードにはフィンガーチャンネルが付けられるなど70年代では先進的なスタイルを持っていた
ハンドガード下部にレールアタッチメントを付けることで近代の戦闘スタイルに対応可能になっている。この程度の改良は個人レベルでの裁量で行なえるようだ
近代戦に不可欠なウェポンアクセサリーや各種デバイスの取り付けが困難なため、前期型のFA-MASに対しては個人レベルでのカスタムが黙認されているようだ。特にレールシステムは必須なアイテムであることから、兵士達はそれぞれ工夫してレールを取り付けている。近年では外国製のアサルトライフルが導入されているが、フランスの財政事情から新型小銃への移行は緩やかに行なわれている。
純国産のアサルトライフルとしてフランスを象徴するライフルとなったFA-MASは、まだしばらくの間は使用し続けられるだろう。
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TEXT:IRON SIGHT
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この記事は月刊アームズマガジン2019年9月号 P.110~111より抜粋・再編集したものです。