ミリタリー

2026/08/29

「令和8年 富士総合火力演習」安全保障環境に対応するための新装備なども数多く披露

 

 

 6月7日(日)、静岡県御殿場市にある東富士演習場で「令和8年富士総合火力演習」が行われた。
 今年の総火演はウクライナ侵攻や島嶼防衛などの安全保障環境を色濃く反映した内容となった。また、それらの事態に対応するための新装備なども数多く披露された。

 


 

 まず着目したいのが、スタンドオフ防衛能力、つまり超長距離攻撃能力として「25式高速滑空弾(25HGP)」が披露されたことだ。
 25HGPは事実上の中距離弾道ミサイルで、日本が初めて保有するタイプの武器となる。現在配備されているブロック1は500km程度の射程距離と言われているが、ブロック2になれば射程は3000kmにも延びるため、西部方面隊に配備すれば東シナ海を飛び越えて、南シナ海にまで到達する。北部方面隊に配備されれば、極東ロシアをフルカバーできるほどの射距離だ。
 そして多目的誘導弾システム(改)にも注目したい。

 

 これは96式多目的誘導弾システムの改良バージョンで、射程を延伸して、同時に対応できる目標数を増やしている。また、システムを簡素化していることで、システム構成車両を6両から3両へと半減した。さらには、取得するためのコストも削減しているという。
 次いで無人アセットの準備状況にも驚かされた。これまでの陸自では考えられないほどスピーディに無人機関連の調達が進められているようで、アナフィやスカイレンジャー、スキャンイーグルなどのUAVのほか、ミッションマスターやテミスの各種UGVも披露された。
 両UGVともに、部隊の運用、特に小銃小隊や偵察部隊に大きな影響を与える可能性がある存在であるため、今後の配備状況に注目したい。
 なお、犬型UGVに関しては賛否が分かれているため、ここでは触れない。
 構成内容を見ても、従来までの各種火砲を紹介する前段演習を大きく変えて、火砲紹介も実運用に近いものを展示した。そして前段演習の後半は即応機動展開部隊が島嶼部における敵の侵攻を阻止する動きを展示し、後段演習は島嶼部における攻勢の場を捕らえた火力戦闘の様相を展示した。
 つまり、各種火砲の紹介はほどほどに、自衛官学生が学んでいる実際に発生するであろうシナリオを強く打ち出した総火演となったのである。

 

 これまで派手な戦車射撃や、特科の「TOT Fuji」などのエンタメ的な要素が多かった総火演から、本来の目的である自衛官学生への「教育」という本来の姿を取り戻した格好になった。
 なお、積極的に本誌を購入していただいている読者諸氏は、普通科隊員、特に小銃小隊の装備が気になるだろう。
 安心して欲しい。今回の小銃小隊も最新装備で身を固めていた。鉄帽から戦闘靴まで、つまり、頭からつま先まで従来までの装備は無いと言っても良いだろう。
 注目の20式小銃にも官品のスコープやライトなどが取り付けられているため、よーく見て欲しい。着こなしや弾嚢などの取りつけ方の参考になること間違いない。

 

もうお馴染みとなった19式装輪自走155mmりゅう弾砲。これまでシートで覆われていた車体側面の即応弾ラックがむき出しになっている点に注目だ

 

今年の総火演で初登場となったパトリアAMVの指揮通信型。6本のアンテナを装備し、車体後部の乗員室は無線機などを収納しやすいようハイルーフ化されている

 

陸上無人機(UGV)として初登場したテミスとミッションマスター。両者ともにコンセプトは類似しており、主に小銃小隊などと同行して各種作戦を支援する

 

16式機動戦闘車をベースに改造した25式偵察警戒車。車体後部には衛星用通信アンテナと、長い格納式マストに取り付けられた視察用カメラが搭載されているのが特長だ

 

今後搭載されるブロック2の誘導弾は最大射程が3000kmにも及ぶとも言われている、事実上の中距離弾道弾である25式高速滑空弾

 

全国の方面航空隊などへの配備が進むUH-2汎用ヘリコプター。まだまだ現役として飛んでいるUH-1Jと比較できないほど近代化されているため、パイロットの負担は少なくより軽快な飛行が可能だ

 

総火演会場の裏手を疾走する謎のデリカ。公開されている資料から読み解くと、三菱重工が開発を進めている陸上無人車両のテスト車だと考えられる

 

会場端で不意に射撃した01式携帯対戦車誘導弾。いつもであれば会場中央で射撃するため、見慣れたアングルになるが、この日は射線の前に出る形での撮影が出来た

 

こちらも偵察オートを搭載してきたV-22オスプレイ。部隊の即応展開を強力に支える存在だが、問題は稼働率である。いくら良い装備でも、稼働率が低ければ存在する意味がなくなる

 

全国に新編された即応機動連隊と偵察戦闘大隊が装備する16式機動戦闘車。見た目に大きな変化はないが、マイナーチェンジを繰り返し既にC7ロットが納入されている

 

普通科連隊が持つ最大口径の迫撃砲が120mm重迫撃砲だ。連隊長の指示によって、普通科中隊を強力に掩護する

 

飛び上がる小型無人機と、それを操作する陸自隊員。当初は輸入無人機が多かったものの、少しずつ国産無人機が揃うようになってきた

 

全国に先駆けて真っ先に20式小銃を装備した普通科教導連隊。左に写る隊員は5.56mm機関銃MINIMIマーク3を持つ。陸自での名称は「5.56mm機関銃MINIM(I B)」だ

 

全国に先駆けて真っ先に20式小銃を装備した普通科教導連隊。左に写る隊員は5.56mm機関銃MINIMIマーク3を持つ。陸自での名称は「5.56mm機関銃MINIMI(B)」だ

 

一部に私物装備が見受けられるが、ほぼ全身官品でこの見た目である。ここ数年で陸自装備が大きく変わったことを示す一枚となった

 

 

Text & Photos:武若雅哉

 

この記事は月刊アームズマガジン2026年9月号に掲載されたものです。

 

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