ミリタリー

2026/04/07

IFR26 インド海軍国際観艦式2026

 

灼熱のインドで行われた巨大式典

 

ヴィシャカパトナムのあるアーンドラ・プラデーシュ州警察対テロ特殊部隊グレイハウンズ。1989年に創設され、構成員は現在約3,000名。警察官とは思えない厳つさが特徴的だ

 

2026年2月15日から25日に渡り、インド海軍は、ヴィシャカパトナムにおいて、国際観艦式IFR26を含む各種公式行事を立て続けに行った。海外から18ヵ国19隻、そしてインド海軍及びインド沿岸警備隊からも多数の艦艇が参加。トータル85隻にもなった。そこにはインド海軍の力の象徴である空母「ヴィクラント」の姿も。灼熱のインドで行われたこの巨大式典を軍事フォトジャーナリストの菊池雅之が現地で取材した。

 


 

 2026年2月18日、インド東海岸にある港湾都市ヴィシャカパトナムにおいて、International Fleet Review(国際観艦式)2026が行われた。略してIFR26と表記される。このIFR26の開催前後は、観艦式予行の他、インド洋海軍シンポジウムIONSなどさまざまな海軍関連の催しが行われ、21日から25日には、引き続き多国間軍事演習MILAN26が実施された。
 これまでインド海軍では、2001年、2016年と2回ほど大規模な国際観艦式を実施してきた。初回だけ開催地はムンバイだったが、2回目、そして今回は、ヴィシャカパトナムとなった。この街にはインド海軍東艦隊司令部があり、艦艇の運用上都合が良いのだろう。

 

インド海軍特殊部隊MARCOS(マルコス)。Marine Commandosを略した。主力小銃としてIWI ターボルTAR-21/X95を採用している

 

観閲艦隊として観閲艦に続いた1隻、スカーニャ級P-53「サヴィトリ」

 

ドラウパディ・ムルム大統領が乗艦した観閲艦。サリュウ級OPVの3番艦P58「スメダ」が務めた

 

インド海軍の象徴である空母R-11「ヴィクラント」。受閲艦隊のトリを務めた。インド海軍では、もう一隻、空母R-33「ヴィクラマーディティア」を保有。こちらは元ロシア海軍の航空巡洋艦「ゴルシコフ」だ


 国際観艦式の名にふさわしく、日本、ロシア、韓国、オーストラリア、南アフリカ、フィリピン、バングラディシュ、UAE、ミャンマー、インドネシア、イラン、ベトナム、マレーシア、タイ、スリランカ、オマーン、モルディブ、セイシェルの18ヵ国19隻が参加。インド海軍を含むとトータル85隻にもなった。実は、当初アメリカも参加予定であり、アーレイバーク級駆逐艦DDG-91「ピンクニー」を参加せる計画だった。しかしながらインドへ向かう途上で故障し、シンガポールで修理をすることに。…しかし、このIFR26及びMILAN26終了後、アメリカはイランを攻撃しており、それに関連してこれなかったのではないか、との疑念を持たれている。また、そのイランも当初は3隻で参加予定だったが、最終的にモッジ級フリゲート75「デナ」1隻での参加となった。これはまったくの偶然だったのか…。そしてその「デナ」は、その後米原子力潜水艦に撃沈されるという運命が待っていた。
 観閲官を務めたのは、ドラウパディ・ムルム大統領だ。大統領は、サリュウ級OPVの3番艦P58「スメダ」に乗艦。同艦が観閲艦となり、その後にメディアボートとなったP50スカーニャなどが続き、観閲艦隊を編成した。
 そして受閲艦隊は、ヴィシャカパトナム沖で錨泊。その各艦艇の前を観閲艦が通過し、受閲艦隊から敬礼を受ける、停泊式観艦式での実施となった。インドはすべて停泊式観艦式にて実施している。これはインドが特別なのではなく、海外では多く見られる実施方法だ。なお、日本の場合、観閲艦隊と受閲艦隊が洋上で移動しながらすれ違う移動式観艦式を実施している。

 

セーシェル沿岸警備隊巡視船P-609「ゾロアスター」

 

モルディブ沿岸警備隊巡視船P-801「フラヴィー」

 

オマーン海軍アル・オフーク級哨戒艦Z22「サド」

 

オーストラリア海軍アンザック級フリゲートFFH-152「ワラムンガ」

 

タイ海軍リバー級哨戒艦OPV-551「クラビ」

 

ミャンマー海軍アウンゼア級フリゲートF-11「キング・アウンゼア」

 

UAE海軍ゴーウインド級コルベットP-111「アル・エマラト」

 

南アフリカ海軍ヴァラー級フリゲートF-145「アマトラ」

 

バングラディシュ海軍フリゲートF-29「サムドラ・アビジャン」

 

ロシア海軍ウダロイ級フリゲート543「マーシャル・シャポシニコフ」

 

ベトナム海軍ペチャ級フリゲート(159型警備艦:ロシア)HQ-17(艦名なし)

 

フィリピン海軍ミゲル・マルバー級フリゲート F-06「ミゲル・マルバー」

 

スリランカ海軍ヴィクラム級哨戒艦 P-622「サガラ」

 

スリランカ海軍サール4型ミサイル艇 P-701「ナンディミトラ」

 

海上自衛隊むらさめ型護衛艦 DD-103「ゆうだち」

 

マレーシア海軍スリ・インディラ・サクティ級支援艦 1503「スリ・インディラ・サクティ」

 

韓国海軍忠武公李舜臣級駆逐艦DDH-979「カンガムチャン」

 

 


 

イラン海軍IFR26参加艦撃沈される!?
「デナ」の最後の雄姿

 

 世界は誰も予想だにできぬ事態へと陥った—。
 2月28日、突如としてアメリカとイスラエルがイランへと侵攻した。米軍によるミサイル攻撃や爆撃などの攻撃に対し、イランは報復として、米軍基地のある隣国等をミサイルやドローンを使って攻撃。これにより戦火は中東全域にまで広がっていった。
 そんな中東エリアから離れたインドで、前述のようにIFR26やMILAN26が平和的に行われた。しかしその後、まさかの事態となった。イラン海軍より参加していたモッジ級フリゲート75「デナ」が、帰国のためスリランカ沖を航行中に、米海軍原子力潜水艦の魚雷攻撃を受け、撃沈したのだ。
 1970年代以降に就役したアルヴァンド級(当初はサージ級と呼ばれていた)フリゲートの後継として2000年代以降に就役していったのがモッジ級だ。トータル6隻が建造され、現在はもう1隻が建造中とされているが詳細は不明。この中の4番艦が「デナ」であり、2021年6月14日に就役した。満載排水量約1300t、全長94.5mと小柄な船体ではあるが、76m速射砲と40mm機関砲または30mm機関砲を1門ずつ、20mm機関砲を2門、対空ミサイル×4、対艦ミサイル×4となかなかの武装をしている。
 支援艦「ブシェーフェル」、揚陸艦「ラヴァン」とともにイランを出港。当初この3隻でIFR26に参加する予定であったが、結局2月17日、「デナ」単艦にて、ヴィシャカパトナム沖へと到着。18日の本番を迎えた。その後MILAN26へと参加し、各国と訓練を行ったあと、帰国の途に。いつ頃ヴィシャカパトナム沖を出たのか詳細は不明だが、3月4日、スリランカ沖で米海軍の原子力潜水艦SSN-766「シャーロット」による魚雷攻撃を受け、撃沈。乗員136名の内104名が戦死した。
 観艦式の翌19日に市内で行われたパレードには、各国艦艇部隊も参加。そこにはイラン海軍の姿もあり、「デナ」乗員も堂々たる行進を披露していた。この中に戦死者もいるのかと思うと残念だ。改めて“戦争” の恐ろしさを知った。

 

ヴィシャカパトナム沖に錨泊する「デナ」。この後まさか米海軍潜水艦に撃沈されることになろうとは誰が予想できたであろうか…

 

2月19日に行われた市中パレードにて、行進する「デナ」乗員らを中心としたイラン海軍士官及び下士官・兵ら

 


 

砂浜を駆け抜けるインド陸軍のBMP-2サラス。インド国内でライセンス生産されたもの。歩兵戦闘車として約2400両を配備する。最新型はBMP-2M

 

BMP-2の砲塔に装備されている対戦車ミサイル9M113コンクルスのダミーを取り外している

 

浜辺で行われた訓練展示にて、フレアーをまきながら飛行するインド海軍の哨戒機P-8

 

 参加国が多いので、参加艦艇も多彩だ。注目はやはり、今まさにウクライナで戦争を繰り広げているロシアからやってきたウダロイ級フリゲート543「マーシャル・シャポシニコフ」だ。そして繰り返しとなるが、もはや見ることは叶わなくなってしまったイラン海軍のモッジ級フリゲート75「デナ」などなど貴重なものばかり。枚挙に暇がないので、あとは写真でご紹介していきた。
 インド海軍はインド沿岸警備隊を含め、すべての艦種を参加させた。トリを務めたのは、空母R-11「ヴィクラント」だ。インド国産空母であり、2022年9月2日に就役したばかり。満載排水量は約45,000tにもなる。艦載機として運用しているのは、Mig-29kだ。翌19日には、国内外の記者を対象とした「ヴィクラント」乗艦取材(停泊中)も行われた。
 2月19日は海岸沿いに伸びる直線道路で市中パレードが行われた。主会場はラーマクリシュナビーチとなり、そこではインド陸軍のBMP-2による訓練展示などが行われた。基本的に招待者のみしかこのエリアに入ることは出来ないが、パレードの一部は、制限エリア外も行進するので、一般の人たちも楽しめた。
 IFR26の後に行われたMILAN26は、完全に非公開で実施された。インド海軍がSNSなどで公表した写真や記事を読むと、実弾射撃を含む、対水上、対潜、対空戦闘訓練が行われたようだ。

 

インド海軍の多目的哨戒機シーキングMk.42からファストロープにて降下する特殊部隊MARCOS

 

アーンドラ・プラデーシュ州警察とテランガーナ州警察の合同特殊部隊オクトパス。2007年に創設された

 

 

Text&Photos:菊池雅之

 

この記事は月刊アームズマガジン2026年5月号に掲載されたものです。

 

※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございますので、ご遠慮いただきます。

Twitter

RELATED NEWS 関連記事

×
×