2026/01/03
【実銃解説】SIG SAUER P320【中編】
AM SPECIAL All about P320
![]()
SIG SAUER P320 -中編-
SIG SAUERがP320を発表したのは2014年1月のことだ。もうすぐ12年が経過する。このP320が誕生するまでの経緯と、それから起こったことを今、改めて振り返ってみたい。この銃の歴史は、かなり波乱万丈なのだ。
P320の登場
銃器の歴史に残るイノベイティブなモジュラーコンセプトを纏ったハンドガンがP250であったのだが、製品としての売り上げがまったく芳しくなくても、SIG SAUERは慌ててP250に大幅な改良を加えるといったことはしていない。例えば、ファイアコントロールユニットに手を加え、シングルアクション化して、トリガーにグロックと似たトリガーセーフティを設けるとかの対策を施せば、状況は大きく変わったのかもしれない。
しかし、やったのはグリップモジュールのわずかなデザイン変更やダストカバー部のレールを独自規格からピカティニーレールに変更するといった些細なことだけだった。
そんな状況が続いたが、約6年後の2014年1月15日、やっとP250をストライカーファイアードに変更したP320を発表した。今度は完全なシングルアクションストライカーだ。トリガープルは常に2.5㎏(5.5lbs)が維持される。これにより、P250が売れなかった最大の問題点が解消された。その結果、P320は注目を集め、モジュラーコンセプトに魅力を感じる人達がこの銃を買い求めるようになった。
最初に提示されたのは、4.7インチバレル/9mm×19/17連マガジンのフルサイズと3.9インチバレル/9mm×19/15連マガジンのキャリーの2機種で、口径は9×19mm、.357SIG、,40S&Wであったが、そのちょうど1年後の2015年1月の段階ではコンパクトとサブコンパクトが加わって、.45ACP仕様についてもアナウンスされていた。
ひとつ引っ掛かったのは、グリップモジュールのデザインで、ビーバーテイル部がかなり低い位置にあり、ハイグリップができないということだ。これはグリップモジュールをハンマーファイアードのP250と共通としたためにそうなっている。射撃時にグリップは可能な限り、高い位置を握るのが、マズルライズを小さく抑えるためにはよいとされており、このデザインは不利なのだが、普通に射撃するうえでは、大きな差にはならない。そこでSIG SAUERとしては、この時点において、互換性を優先したのだろう。
もっともベーシックなP320で2014年に発売された最初のモデルのスタイルを踏襲している。外観上違う部分は、アップグレード後の軽量トリガーが付いていることと、オプティックレディになっていることだけだ
2017年に採用された直後のもので、スライドの刻印がまだXM17となっている。トリガーも軽量化されていない。配備初期にはマニュアルセーフティ、ディスアッセンブリーレバー、スライドリリース等もすべてFDEカラーだった。その後、レバー類はブラック仕上げに変更され、このFDEカラーのレバーが装着されていた初期のM17は軍用サープラスモデルとして2019年末に民間市場に払い下げられた
アメリカ軍サービスピストル M17, M18
SIG SAUERにとって幸運であったのは、アメリカ軍のM9後継サービスピストルを選定するXM17 Modular Handgun System Competition(MHSコンペティション)のスタートが大幅に遅れたことだ。当初計画では2011年に実施のアナウンスがなされ、2013年中に評価テストを終えるはずだったが、これは後ろにずれ込み、アメリカ陸軍からの公式なRFP(Request for Proposal:提案依頼書)が発表されたのは2015年8月28日だった。当初計画のまま進行していたら、SIG SAUERはP250を提示するか、慌てて改良型を作り、この選定プログラムに参加しなくてはならなかっただろう。少なくともP250のままであったら、アメリカ軍サービスピストルに選ばれるはずはなかった。
P320は、P250が持つモジュラーコンセプトをそのままに、FCUをシングルアクションストライカーに変更したもので、同種のポリマーフレームピストルを製品化している競合他社製品のほとんどに備わっているトリガーセーフティすら取り去ったモデルだ。シューターはチェンバーに弾薬をあらかじめ装填した銃を持っているなら、あとはシンプルにトリガーをわずかに引くだけで撃てる。マニュアルセーフティもトリガーセーフティもなく、約2.5㎏のトリガーを引くだけだ。
アメリカ軍からのリクエストで、指で操作するマニュアルセーフティを加えたが、一般市販モデルのほとんどはマニュアルセーフティなしだ。
2016年に7社から提出されたモデルに対してのテストが実施され、P320はグロック17MHSならびにグロック19MHSと共に最終候補に残った。そして2017年1月19日、SIG SAUERのP320がアメリカ陸軍の次期サービスピストルM17、およびM18に選定されたことが発表された。
この時点では陸軍のみの決定で、それでも向こう10年間に約28万挺の納入予定とされた。その後、空軍、海軍、海兵隊がM18の採用を決め、合計調達予定数は42万1千挺に及ぶ。
P320バリエーション
2014年に発表されたP320は、その後の約12年間に驚くほど多くのバリエーションを発売してきた。その中には既に供給を終えたモデルや、当初から限定数のみ作られたものもある。そのすべてを網羅することは難しいので、主だったバリエーションを紹介してみよう。
- P320 FULL-SIZE 4.7インチバレルのベーシックモデル
- P320 COMPACT 3.9インチバレル、コンパクトグリップ付き
- P320-XFULL 4.7インチバレル Xグリップモジュール
- P320-XFIVE 5インチバレルのXグリップモジュール、LEGIONモデル
- P320-XCARRY 3.9インチバレル、Xグリップモジュール、フルサイズグリップ
- P320-AXG LEGION 3.9インチバレル、インテグラルコンペンセイター、アルミグリップフレーム
- P320 XFIVE SXG 5インチバレル、ステンレスグリップフレーム
- P320-XTEN 5インチバレル、Xグリップモジュール、10mm AUTO仕様
- P320-SXG Reserve 3.9インチバレル、インテグラルコンペンセイター、ステンレスグリップフレーム
以上はすべて現行モデルだ。ごく一部を除いてほとんどがXグリップモジュール、もしくはメタルフレームで、AXGがアルミ、SXGがステンレスフレームとなっている。全機種がオプティックレディ仕様で、インテグラルコンペンセイター搭載モデルが現在のトレンドだ。
現状、ほとんどが9mm×19仕様で、.45ACPはP320コンパクトのみ、.357SIG仕様もなくなった。おそらくそれらの需要は現在ほとんど無いのだろう。10mmのみXTENとして展開されている。
サブコンパクトモデルもなくなった。なぜならサブコンパクトクラスはP365が担うようになったからだろう。
FCUを銃本体としているP320は必要に応じて、様々な形に組み替えられる。需要があれば、それに応じた形態にできるのだ。.22LRのP320はないが、あまりにも弾薬のサイズが違うので、無駄が多くなる。そのため専用設計のP322が別途作られた。またスリムボディにすることは物理的にできないので、別ラインとしてP365が用意されている。
.45ACPと10mmはFCUが専用となる。そのため9mm仕様のFCUを使って.45、10mmに組み替えて撃つことはできない。一方、.45、10mm用FCUは9mm用に換装できる。
こうしてみるとP320とそのFCUは、銃というものが将来、まったく違う技術で作られるようにならない限り、ずっとこのままの形で発展させられるのではないか?と思えてしまうほど、完成度が高いのだ。
TEXT:Satoshi Matsuo
PHOTO:Yasunari Akita
この記事は月刊アームズマガジン2026年1月号に掲載されたものです。
※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございますので、ご遠慮いただきますようお願い申し上げます。

