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2025/11/04

新 WESTERN魂!:ハートフォードSAAチューンナップ!

 

ハートフォードSAAチューンナップ!

 

 今回はハートフォードのコルトSAAモデルガンの調整や補強などの方法をご紹介する。プラモデルを作れる工作技術があればできると思うが、いつもの記事より話のレベルは少し上がって難易度はやや高めとなる。話のメインはシリンダーのオーバーラン防止とバレルの補強のふたつだ。ファストドロウやガンプレイなどのガンアクションをされる方はぜひお試しいただきたい。

 

私が今回チューンしたSAAモデルガンは、これだ。
トルネード吉田企画・監修 ハートフォード×アームズマガジン
コルト フロンティア シックスシューター .44-40
1stジェネレーションレイトモデル マカロニシルバー4-3/4インチバレル
アームズマガジン直販限定モデル ¥59,400
(お問い合わせ先:アームズマガジン公式WEBショップ https://www.posthobby.com/SHOP/346355/list.html

 

「コルトSAAをウインチェスター モデル1873 / 1892レバーアクションライフルと一緒に使うなら、口径(弾)は. 45 Long Coltではなく、ライフルと共通で使える.44-40 Winchesterとなるはず」という私のこだわりから企画し、シリンダーへのレーザー彫刻など少し特別感のある仕様とした限定モデルだ。2023年7月の発売から2年経ってしまったが、これをファストドロウやガンプレイで実際に使えるようにチューンした。実は、以前からこういうスペシャルなシルバーのハートフォードSAAモデルガンを愛銃にするのが夢だったのだ。せっかくなのでハートフォードSAAモデルガンのチューンナップ方法を改めて皆さんにもご紹介したい

 

早撃ちでのシリンダーのオーバーラン

 

 SAAのトイガンは多くのメーカーから発売されている。タナカのSAAペガサス2ガスガンや東京マルイのエアコッキング式のSAA.45のように買ったままで(箱出しで)ファストドロウやファニング連射などの激しいガンアクションに対応している製品もあるが、ハートフォードのSAAは、「FDC」(ファストドロウカスタム)ではない通常のモデルの場合、チューンナップを施さないとそれらには対応できない。そのチューンナップとはボルト(シリンダーストップ)の調整(形状修正)だ。さらにFDCでも、使う人の腕前が中級者〜上級者のレベルとなってファストドロウで酷使するなら、やはりボルトの調整は必須だ。
 箱出しでファストドロウに対応できない最大の原因はシリンダーのオーバーラン(ボルトのスキップ)だ。ハンマーを渾身の力で素早く起こすと、シリンダーが定位置でストップせずに回り過ぎて、ハンマーのファイアリングピンがカートのプライマー(中心部分)を叩かずに不発になってしまうのだ。それを防止するために、ヤスリを使ってボルトの形状を修正する必要がある。

 

 

調整は昔ながらのモデルガンの楽しみ方

 

 このように書くと「なんだ、箱出しではダメなのか〜」と思われるかもしれないが、残念に思わないでほしい。ハートフォードのSAAモデルガンは、元は東京CMCという今はないモデルガンメーカーの製品で、今から48年前の1977年に発売された超ロングセラーの製品なのだ(ハートフォードはCMCから金型を引き継ぎ1994年4月にリメイクして発売)。昔のモデルガンは、箱出しで快調に動く銃は少なく、ユーザーが作動を調整して快調に動くようにして楽しむ物(あるいは調整そのものを楽しむ物)だったのだ。特に発火ブローバック式は。人気ロボットアニメのプラモデル、例えばガンプラだって45年前と最新技術で進化した今の製品では、出来具合はまったく違う。だがプラモデルも昔の製品を今も楽しんで作る人はいるし、SAAのモデルガンも似たようなものだ。ハートフォードのSAAは昔ながらの楽しみ方で味わう物なのだ。だから今回ご紹介のチューンもぜひ前向きに楽しんで挑戦していただきたい。自ら手を加えて完璧に動くようになったら愛着も更に増すというものだ。

 


トルネード吉田の経験談とノウハウの継承

 

 私は昭和45(フォーティファイブ)年(1970年)生まれだが、小学校高学年の頃からモデルガンを楽しんでいる。最初に買ったのは東京マルイの作るモデルガン(プラモデル)。中学生になってからは、おこずかいが増えたのでマルシンやMGCのモデルガンの組み立てキットを楽しんだ。いずれも調整は必須だったので、ハタチ過ぎてからSAAにハマっても当たり前のように調整をした。最初に買ったSAAはコクサイの金属製モデルガン(1992年発売のブラックパウダーモデル、絶版)だ。もともと金属製モデルガンは観賞用で、私の遊び方も尋常じゃなく激しかったからだろう、さすがにバレルこそ折れなかったが、ありとあらゆるパーツが壊れた。そのひとつにシリンダーのオーバーラン(ボルトのノッチ穴の削れ)もあったので、その防止策をあれこれ思案し、今回ご紹介するボルトのチューンナップ、すなわちボルトの上面を斜めに削る方法へたどり着いた。ハートフォードが東京CMCのSAAモデルガンをリメイク新発売した頃は、銃器専門誌でそのチューンナップ方法を紹介する記事をよく見かけたが、ボルト上昇のタイミングを早める等は紹介されても、ボルトの上面を斜めに削ることを紹介している雑誌はひとつもなかったし、私の知る限りで私の他に同じ事をやっていた先輩は1人だけだった。
 今では今回ご紹介のボルトの形状修正は、ファストドロウの後輩達が引き継いで広めてくれている。これは一例だが、ハートフォードのSAAモデルガンは、このような調整方法や遊び方のノウハウがユーザーの間にたくさん蓄積されている。だから昔ながらのモデルガンでも安心して楽しんでいただけるし、完璧にチューンをすれば、これ以上にガンアクションで頼りになるSAAモデルガンは存在しないので、今もファストドロウシューター達の間ではハートフォードのSAAが一番人気なのだ。

 


 

シリンダーのオーバーラン防止のためのボルト加工

 

 ハートフォードのSAAモデルガンは(ノンスキップド・シリンダーを搭載したものを除き)箱出しのままではファストドロウやファニングに対応できない。カートを装填して思いっきり力を込めて素早くハンマーを起こすとシリンダーの回転の勢いでシリンダーストップのノッチが欠けて、シリンダーが定位置で止まらずにオーバーランしてしまうのだ。その原因はボルト(シリンダーストップ)とシリンダーのノッチ穴がうまく噛み合っていないからだ。これはボルトの形状を修正することで、ある程度まで対応できる。別売のノンスキップド・シリンダーを併用すれば完璧だ。またノンスキップド・シリンダーを使っている場合でも、ファストドロウで酷使するなら、やはりボルトの形状修正は必須だ。ボルトは昔からSAAの作動の要とも言われる重要なパーツなのだ。

 

こちらは最もスタンダードなハートフォードのSAAモデルガンのヘビーウエイト樹脂モデルだ。東京CMCの時代から非常に長くウエスタンファンに愛されている“昔ながらのモデルガン”だ。愛用しているユーザーも多いため、チューンナップなどのノウハウもユーザーの間で蓄積され情報共有されている。メーカーのサポートも充実していることから、ファストドロウやガンプレイをするのに最適だ

 

ボルトの形状修正に必要な工具はこのようなヤスリだ。すべて私が実際に使っているもので、上から平形、半丸形、細めの丸形。他に耐水ペーパーも使う。ペーパーは400番、800番、1500番、2000番まで揃えているが、ボルトの形状修正では1500番までを使っている。私は非常に多くのボルトを加工し手慣れているので、これらを使って30分程度で作業を完了する

 

製品そのままのボルトの突出量はこのとおり。この状態ではボルト先端がシリンダーノッチにわずかな面積で噛み合っているだけだ。そのためノッチがすぐに欠けてしまう

 

形状修正のステップ1の加工で、まずはこのようにボルトの突出量を多くする

 

形状修正のステップ2の加工で、シリンダーノッチのガイド溝の傾斜に合わせてボルトの上面を斜めに削る。ここまでやらない人も多いが、実はこれが重要なのだ

 

上の写真が無加工のボルト。下が形状修正済のボルトだ。なお撮影の都合上、各工程のボルトの写真はすべて別の個体だ

 

ハートフォードSAAのボルトはプレス加工で作られているため個体によってバラつきが多い。写真右のボルトは足の先が内側に曲がっていて、足の間隔が狭いのがお分かりだろうか。これでは作動が安定しないのと、ハンマーのボルトカムの先端をすぐに摩耗させてしまう。そのため、まずはラジオペンチ等をふたつ使って足の先を並行になるまで広げる。若干「ハ」の字になる位くらいでもよい。またボルトの突出部分の厚みがありすぎてシリンダーノッチに入らない場合は、平ヤスリで少し薄く削る

 

形状修正のステップ1。ボルトの突出量を多くするため、写真のように3箇所を平ヤスリや半丸ヤスリ等で削る。足の下側を削るのは、ここを削らないとトリガースクリューに当たってしまうためだ。これらは多少削り過ぎても問題ない。削ったらボルト(とトリガースクリューも)をフレームに取り付けて、突出量を確認してみよう

 

形状修正のステップ2。ボルトの上面を斜めに削る。写真のように平ヤスリでボルトの上面を左側から少しずつ削っていく。この時ヤスリは往復させずに、矢印の方向のみで削るのがコツ。ちなみに、このように削るのはボルトの位置がフレームのセンターではなく右側に寄っているからで、実銃のコルトSAAのボルトも上面は斜めになっているのだ

 

ボルト上面の角度は極端な話、あればあるほどよいのだが、角度をつけすぎるとシリンダーが逆回転してしまうので注意だ。実際に使うシリンダーのノッチのガイド溝にそって、ボルトがノッチ穴へ滑り込むような角度に合わせること。ハートフォードSAAのシリンダーのノッチは個体差が多く、深いものから浅いもの、前寄りについているものなど様々だ。そのため個々に合わせて少しずつ削り、ボルト上面の角度を適正につけるのだ

 

▲写真の右が形状修正のステップ2の加工後だ。斜めに削る角度の参考にしてほしい。ノンスキップド・シリンダーの場合はノッチが深めなので、写真よりもう少し角度は浅くてもよい

 

ボルトの形状修正にはステップ3まである。ボルトの突出量を多くして本体へ組み込むと、ハンマーを倒した時にボルトの足の先がハンマーのボルトカムに噛み合わなくなりハンマーが起こせなくなる。そのため次の加工を行なう必要がある(写真はシリンダーを外していますが、実際にはシリンダーを取り付けた状態で調整を行なってください)

 

ボルトの足の先の内側を細めの丸棒ヤスリで少しずつ、ボルトカムと噛み合うまで削る。その際、角を丸めるとよい

 

最後に、ハンマーを起こした時にボルトが上昇するタイミングを早めるために、左側の足の先を少しずつ削る。フルスピードでハンマーを起こす人は、ハーフコックがかかる位置を過ぎた直後のタイミングでボルトがリリースされるように調整する。調整ができたら仕上げにボルトの上面と足を耐水ペーパーで磨き、削り跡を滑らかにすればでき上がりだ

 


 

ノンスキップド・シリンダーのチップ紛失防止

 

 ハートフォードのノンスキップド・シリンダーはノッチの部分に金属のチップが埋め込まれ、ノッチの耐久性を上げている。このチップは瞬間接着剤で固定されているそうだが、ファストドロウなどで使っていると知らない間に脱落していることが多い。チップを紛失したらスペアを購入できるが、1枚が500円と意外と高価だ。そのため、より強力に接着し直す必要がある。ハッキリ言って、ここは瞬着ではダメでエポキシ系の接着剤を使う。

 

ズバリ書くが、今回ご紹介する接着の場面で使う接着剤は、すべて写真の商品を使ってください。接着剤は過去にいくつか試したが、これがベスト。具体的な商品名を挙げると、セメダインの「ハイスーパー5」だ。商品名の数字の5はA剤とB剤を混ぜた後の硬化開始時間(作業にとれる時間)の5分を表しており、30分型でもよい。この接着剤のよいところは強力なのはもちろんだが、半乾きの状態だとハミ出した部分を手で綺麗に簡単に剥がせるところだ。そのため非常に楽に作業でき、とてもきれいに仕上がるのだ。なので、この商品の使用を強く推奨する

 

ハートフォードのSAA用の別売りオプションパーツの「ノンスキップド・シリンダー」。買ったままだとブッシング(シリンダーの軸が通る写真の銀色の部分)が抜けて脱落するので、これをハイスーパー5で接着する。ブッシングの表面に接着剤を少し多めに塗り、そのままシリンダーへ挿入。はみ出した接着剤は、塗ってから大体3 〜6時間後位の半乾きの状態で、カッターで切り込みを入れてマイナスドライバーなどの先でグッと押すと、簡単にペリッと綺麗に剥がれてくれる

 

チップの接着の前に、取り付けられているチップを外す。チップの取り外しは、細い棒をポンチ代わりにして、棒の先をチップの端に当てハンマーでトントンと叩くとスライドして写真のように突出してくるので、簡単に取り外せる。チップにハイスーパー5を塗ってシリンダーへ挿入(チップには向きがあるので注意)。はみ出した接着剤を半乾きで剥がす場合は、ノンスキップド・シリンダーのノッチ穴は底が非常に薄くなっている個体もあるので、接着剤に引っ張られて穴の底が欠けて貫通しないように注意する

 


 

バレル折れ対策のためのバレル根元補強

 

 ガンプレイの練習でSAAを落としてバレルを折ってしまうのは、よくあることだ。バレルと一緒に「心まで折れました」とならないように、あらかじめバレルを補強しておこう。またファストドロウでも(特にツーハンドシューターで)バレルをホルスター内側に強くこすりつけて抜く人は、バレルのインサートから下半分だけでも補強して置いたほうがよい。なお、この補強方法は、ファストドロウをやっている優秀な後輩が考え出したものだ。折れたバレルも修理できる。

 

補強の説明の前に、ハートフォード公式でのバレルの修理・補強についてご紹介したい。意外と知られていないのが、ハートフォードによるバレル修理サービスだ。ハートフォードでは、写真のような補修用パーツを使って折れたSAAのバレルを修理する有償サービスを実施している。その方法は、まずフレーム内側のフォーシングコーン(バレル入口の突起)を全て削り落とし、フォーシングコーンを兼ねた樹脂製のインナーパーツを挿入・接着するというものだ。このパーツは耐久力の高いジュラコン製で、550円で販売もしてくれるため、自分で修理することも可能だ。通常のバレル折れの修理には、これで大丈夫だがインナー部分の長さが27mmで少し短めのため、激しい落下を繰り返すガンプレイ練習用としては少々強度不足なのは否めない

 

バレル補強の前提知識としてフレームの構造を説明する。ハートフォードのSAAは、異なるバレル長を商品展開するためにフレームとバレルは別パーツとなっていて、バレルがフレーム側にあるパイプ状の凸部(青い部分)、その長さはフォーシングコーンから計測して計52mmによって接合されている構造だ(強力に接着されているため分解はできない)。そのため銃口とフォーシングコーンの内径は異なり、フォーシングコーン側の内径は10mmだ。このフォーシングコーン側の接合部に対してインナーパーツを自作して補強を行なうのだ

 

これがバレル補強用のインナーパーツだ。写真のように、アルミ製のパイプを完全に縦割りにした長さ44mmの部品を2本作り、これをフォーシングコーン側からバレル内部のインサートを挟み込むように挿入・接着する。これで落下程度では、まず折れなくなる。この補強方法で留意していただきたいのは、インサートをまったくいじっていないことと、インナーパーツは完全な半円状で、パイプ状には一切なっていないことだ。当然ながらインサートを取り除き、金属製のパイプを挿入することは絶対にやってはならない。樹脂製モデルガンであっても、インサートを故意に取り除いたら違法行為となる(実際に検挙事例あり)。もちろん金属製のパイプをバレル内部に挿入するのも違法だ。念のため業界団体へ確認済だが、写真のようにパイプ状になっていなければ、金属製であってもインナーパーツをインサートにサンドイッチする形での補強は問題ないとのことだ。長さを約44mmとする理由は、フレームの内側からフォーシングコーンへ挿入できる最大の長さだからだ。また発火時のガス抜けを考慮して、両端を写真のようにラッパ状に広げている

 

バレル補強用のインナーパーツは、直径10mmのアルミ製パイプから自作する。アルミが硬くて加工に手こずるならABS製のプラパイプでもいいだろう。パーツの自作は工作が得意な方でないと難しいかもしれないので、難しいと思われるのであればハートフォード公式の修理・補強で対応しよう

 

加工に必要な工具の一例。上から金属用の小型鋸、平形ヤスリ、丸形ヤスリ。自作する部品は最終的に見えなくなるので、私は仕上げには特に気を使っていない

 

インナーパーツの自作は、正直ちょっと大変だ。まずパイプを鋸で縦に切っていく。44mmまで縦割りできたら、そこでパイプを切断。綺麗に縦割りできれば一度で2個分を作れるが、素人作業ではだいたい曲がって切断されてしまうため、一度で2個分を取れないことも多い。縦方向の切断はパイプを万力で固定できれば、かなり楽だろう。切断できたら、平ヤスリで切断面を平に整える。その際、けっこう薄くまで削る必要がある。フレームとのフィッティングは、インナーパーツをすべて挿入してしまうと取り出す時に苦労するので、まずインナーパーツが片側から半分くらいまで挿入できることを確認したら、次は反対側から半分くらいまで挿入できることを確認できればOKだ。「キツ過ぎず、ユル過ぎず」な位まで薄く削るのがポイント。両端のラッパ状の加工は写真のように丸形ヤスリを使って加工している

 

インナーパーツを2本加工できたら、インナーの外側のみにハイスーパー5をつけて、写真のように板を使って一気にフォーシングコーンへ押し込む。ハミ出した接着剤は大体3 〜6時間後くらいの半乾きの時に、まずカッターで切り込みを入れて、次にマイナスドライバーの先端等で切り込み部分を押し込むと、簡単に剥がれてくれる。これで完全に接着剤が硬化すれば完成だ。さらに強力に補強したい場合や折れたバレルの修理では、続けて次の加工へと進む。インナーパーツをバレル下からピン、またはネジで完全固定するのだ

 

写真のように、バレル下のフレームから6〜7mmくらいのところにピンバイスで穴を開ける。この位置であれば、ベースピンで隠れて穴は目立たない。穴はインナーパーツを貫通させるが、インサートまで貫通させる必要はない(インサートは硬くてピンバイス程度では貫通できない)。この穴に適当な太さのピンを打ち込む。私の場合はピンではなく、絶対に抜けてこないようにネジを使用している。ネジで固定する場合は、写真のようにピンバイスで開けた穴にタップでネジを切る。ネジは、私はいつも余っているものを流用するので一定ではないが、径がM2.6かM3のものを使っている。この写真はM3のホーローセット(イモネジ)で固定する例だ。これもハイスーパー5で完全固定する。細めのM2.6の普通の平ネジを使う場合は、あえて長めのネジを使い、はみ出した部分をニッパで切断、残ったネジの突起をヤスリで削って平らに整えている。仕上げは雑だ。ガンプレイ用は、いずれ本体全面に自然と多くの傷がつくので、この程度の加工跡はまったく気にしない

 


 

その他オススメ加工あれこれ

 

 ここからは必須ではないが、やっておくとよいチューン等をいくつかご紹介する。

 

ハンマーハーフコックでのシリンダー位置の微調整

 

SAAはハンマーをハーフコックにすると、ゲートを開けてカートを出し入れできるが、写真のようにカートのリムがフレームに引っかかって出し入れできない場合がある(薬室6つの内の2つとか)。この不具合はシリンダーハンドを削ることで解消できる

 

まずはシリンダーハンドの二段目(矢印)を少しずつ削ってみよう。私の場合は水平に削るのではなく、写真のように内側に傾斜をつけるように削っている。あわせてハンドの先端も少し削って短くするとよい場合もある。ハートフォードのモデルガンは個体差が大きいので、この調整も一気に削らずに「少しずつ削って合わせて」を繰り返す。ハンドの先端を削りすぎると、ハンマーを起こす際に、ボルトが下がりきる前にシリンダーが動き始めることになってしまい、シリンダーが回転しなくなるので注意だ

 

シリンダーの空回転を勢いよくする

 

ハンマーハーフコックでシリンダーの「チーッ!」をやりたい方は、シリンダーハンドのスプリングのテンションを調整してみよう。ちょっと分かりにくいが、写真の左がノーマルで、右がスプリングを弱めた状態だ。これはラジオペンチなどを使ってスプリングを少し曲げるだけだ

 

シリンダーの「チーッ!」で、シリンダーゲートが少し開いてしまう場合は、写真のようにゲートの先端を少し斜めに削って角を落とせば解消できる。なお「チーッ!」は無茶しないこと。カートフル装填でシリンダーの回転の勢いがあるうちにハンマーフルコックで回転を止めるとノッチが破損する

 

スプリングの選択について

 

ハートフォードSAAのトリガー&ボルトスプリング2種。私個人としてはトリガープルの軽さよりも、ボルトの押しのテンションを強くして作動を確実にしたいのでノーマルの板スプリング(写真左)を使用している。ただしノーマルの板スプリングはたまに自然とボルトを押す部分が折れるので、常にスペアを数枚ストックしている

 

ハンマーストップについて

 

FDCで採用されているハンマーストップ(トリガーガードに追加されたハンマーのオーバーラン防止のスクリュー)。これを使うとハンマーのフルコックでのガタがなくなり、あわせてトリガーの摩耗も軽減されるメリットがある。このハンマーストップの加工はドリルとタップとイモネジで簡単に加工できるので、わざわざFDC仕様のトリガーガードに買いなおす必要はない。なお私の場合はハンマーストップを使うとハンマーが最後まで(バックストラップに接触するまで)起きなくなることで、なぜかハンマーをつかんだまま親指が離れなくなってしまうため、ハンマーストップは使っていない。そのためトリガーは早く摩耗するので、常にトリガーはスペアを数本ストックしている

 

メインスプリングについて

 

ハートフォードのメインスプリング(ハンマースプリング)は時々折れる場合がある。そこで私はタナカのペガサス式SAAガスガンのメインスプリングへ交換している。タナカのスプリングは25年使ってきたが一度も折れたことがない。ただしそのままではハートフォードのSAAモデルガンには流用できない。スプリング先端のハンマーローラーのガイド溝が合わないのだ。そこで写真左のように平形ヤスリでスプリング先端を薄く削って溝をなくす加工をしている

 

プラグリップについて

 

ハートフォード標準のプラグリップはヤスリで外周のエッジをすべて落としている。エッジが尖っていると、たまにガンプレイをして(特に投げ技)エッジで手のひらを切ることがあるからだ。あわせて内側のピンのダボ穴を写真のようにプラリペアで補強している。銃を落としてダボ穴が欠けてもプラリペアとドリルで修理できる。なお私の場合、SAAの重量バランスはバレル側が重い方が好みなので、プラグリップの金属ウエイトは外している

 

エジェクターチューブの外れ防止

 

ガンプレイでSAAを落とすと衝撃でエジェクターチューブが外れる場合がある。そこで私はエジェクターチューブをバレルに接着している。チューブの先端にハイスーパー5を塗って布テープなどで仮留めして硬化するまで待つ。その際、チューブのスクリューは挿入しない。スクリューまで接着してしまうと外せなくなってしまうからだ。チューブを接着した場合のエジェクターの分解方法は後述する。後にフレーム交換などで接着したチューブをバレルから取り外す場合は、チューブとバレルに先端からドライバーを2本挿し込んで“股裂き”の要領でエィッ!と広げると接着が外れて取り外せる

 

エジェクターチューブのスクリューは、写真上がそれだが、私はSAA用の短いスクリューへ交換している。写真上のスクリューだと、緩んでくるとチューブから突出し、それがガンベルトのホルスターの内側を傷つけてしまうからだ

 

チューブを接着した場合のエジェクターの分解方法。まずはシリンダーを外し、エジェクターヘッドを押し込んでエジェクターロッドを突出させる(写真の状態)。ロッドの先端はネジになっているので回してヘッドから外し、引き抜く

 

チューブ内に残ったスプリングをマイナスドライバーの先端を使って前方へ圧縮し、外したエジェクターロッドの先端を写真のようにチューブの溝の根元からスプリングの中に入れる

 

この状態でスプリングを開放すれば、ロッドがガイドになって外へ飛び出してくる。ヘッドもエジェクターチューブの溝の根元から取り出せる。組み立てる場合は、この逆の手順で行えばよい。組み立ての際はロッドのネジを最後まで締めること。締めが緩いとヘッドが下に垂れてくる

 

ハートフォード新製品情報

 

私がガンアクションで使うハートフォードのSAAモデルガンにはすべてシア部を強化したハイブリッドハンマーが搭載されている。最近はメーカー品切れで入手しにくくなっているが、現在ハートフォードでリニューアル版のハイブリッドハンマーが企画進行中だ。写真は左がノーマルハンマーで左がツーハンド用。リニューアル版ではシア部の材質が変更となり、アルミ板の張り合わせとなっている。ハートフォード社内での耐久テストでは1千回のドロウに耐えたとのことだ。11月中旬発売予定

 

ご参考に、これらは私が過去に交換し廃棄となったフレームの一部だ。激しい使用によりすべて破損しているが、バレルは今回ご紹介した補強により折れていない。だがハンマーの打撃の繰り返しによってハンマースクリュー付近がパックリと割れ、その補修がプラリペア等でできなくなるとそのフレームは交換となる。なおフレームを廃棄する前に、トリガー&ボルトスプリングのナットを外して保管しておくと、これがフレームのネジ穴の再生に役に立つ。ネジ穴がナメてネジが締まらなくなってしまったら、ネジ穴をハンドルーターで拡大して、ライターで熱したナットを埋め込むことでネジ穴を復活できるのだ

 

まとめ

 

今回はフロンティア シックスシューターのマカロニシルバー3挺をチューンナップした。内2挺はガンプレイ用、残りの1挺はファストドロウの全国大会用だ。3挺を任意に入れ替えて使っても違和感がないように、基本的にまったく同じ内容でチューンした。今回ご紹介したチューンは(ハンマーストップを除き)すべて3挺に施してある。他にはベースピンをハートフォードの別売りオプションパーツのロングベースピンに交換済だ。ロングベースピンはガンプレイショーでのカートのリロードで非常に役にたっている。レーザー彫刻入りのシリンダーはノンスキップド加工済だが、この加工だけは素人の工作技術では難しいため、私のファストドロウの先輩のご友人にこの加工ができる方がいらっしゃって、先輩経由でお願いしてやってもらった。やはり自分だけのスペシャルな銃は気分がいい。それが自分自身で手を加えて仕上げた銃なら尚更だ。来年のファストドロウ全国大会も増々楽しみになってくる。

 

 

TEXT:トルネード吉田

 

この記事は月刊アームズマガジン2025年12月号に掲載されたものです。

 

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