エアガン

2025/08/03

新 WESTERN魂!:コルトSAAの遊び方 2025

 

コルトSAAの遊び方 2025

 

「こいつは世界で最も高貴な銃、シングルアクションアーミーだ!」ウエスタンで最も代表的な銃はコルト シングルアクションアーミー(SAA)に間違いない。コルト ピースメーカーという愛称でも親しまれるこの古い6連発のリボルバーが「世界で最も高貴な銃」であるかは、私には正直、分からないが「世界で最も遊べる銃」だと確信している。今回はコルトSAAの遊び方をご紹介!

 

 トイガンを買うと、銃と一緒に必ず取り扱い説明書が付いてくる。そこには銃を使う上での注意点など、まず大事なことが書かれてあり、次に装填や撃ち方などの操作方法が説明されている。しかしコルトSAAの場合、どのメーカーの取説にも撃ち方として「撃つ前にハンマーを起こして、トリガーを引いて発射」としか書かれていない。ハッキリ言って、これじゃSAAの遊び方としては完全に説明不足。トランプの遊び方なら「ババ抜き」しか説明していないに等しい。


 今のスマホゲームなどに慣れた若い世代の皆さんが、今どきトランプで遊ぶのか分からないが、私に言わせればコルトSAAは、まるでトランプのような銃なのだ。もちろん「トランプ」と言っても現アメリカ大統領のことじゃない。Playing card、西洋かるたのことだ。トランプは非常にシンプルなものだ。トランプを使ったゲームがババ抜きだけなら、すぐに飽きるだろう。しかし「ポーカー」や「ブラックジャック」、「スピード」等のいろいろなゲームを覚えたら、もっとずっとたくさん遊べるし、加えて「カードマジック」や「カードさばき」までやり始めたら、一生飽きずに楽しめるアイテムなのかもしれない。同様にSAAは「シングルアクション」という極めてシンプルな構造の銃だが、多種多様な撃ち方、遊び方を覚えることで、ずっと飽きずに最高に楽しめる銃なのだ。リアルガンのSAAは“実用の銃”としては、とうの昔にその役割を終えているが、今もスポーツシューティングなどの趣味の世界では現役バリバリで多くの人に撃たれているし、トランプのカードさばきに相当する遊び方としてガンプレイ(ガンスピン)という回し技もある。


 今回はSAAの楽しみ方の説明として、まず撃ち方の基本にはじまり、カスタマイズする楽しみや「どこでみんなと一緒に遊べるか」まで簡単にご紹介したい。

 

コルトSAAは、その名のとおり「シングルアクション」という作動方式の銃だ。撃つ前には毎回、必ず手動でハンマーを起こす必要がある。現代銃と違ってトリガーを引くだけでは連射できないため「何だよ!コレ、めんどくさい銃だなぁ〜」と思われるかもしれないが、様々なテクニックを駆使することで現代銃よりも速く撃てるのがこの銃の魅力(のひとつ)なのだ。自動車の運転で言ったらマニュアル車のようなもの。「銃に動いてもらう」のではなく「自分で銃を動かす」楽しみに満ちているのがSAAなのだ

 

SAA遊び方の一例:二挺拳銃


 SAAを使った射撃のテクニックのひとつに二挺拳銃がある。二挺拳銃が活躍できるのは作り話の世界だけと思われるかもしれないが、これこそサイトを使わず勘(指さし感覚)で狙い撃てるSAAだからこそ現実的に可能と言えるのだ。


 現代のハンドガンのカテゴリー分けとして、よく「オートマチック」と「リボルバー」で大別されるが、私に言わせれば「SAAタイプのシングルアクションリボルバー」と「それ以外のオートマチックとダブルアクションリボルバー」で分類したい。オートもダブルアクションも「トリガーを引くだけで連射できる」、「予備マガジンやスピードローダーを使えば、一瞬でリロードを完了できる」という点で同じものだ。SAAはトリガーを引くだけじゃ撃てないし、リロードは1発1発行なうので時間がかかる。そのため弾切れを考慮して「銃を2挺、携帯する」という使い方が出てくるのは当然だ。

 

 そして銃を2挺持てば、2挺を瞬時に持ち替えるテクニックや、2挺を両手に持って交互に、あるいは同時に撃つというテクニックが必然的に生まれてくる。例えば有名な二挺拳銃のテクニックに、撃ち終わった利き手の銃を宙に投げ、左右の銃を持ち替えて撃ち続ける「ボーダースイッチ」や「ボーダーシフト」と呼ばれる技がある(ちなみにガンプレイなどの技に正式な統一した名称はないらしい。海外の有名ガンプレイヤーに確認済だ)。また両手の2挺を交互に次々と連射するのは「マシンガンシュート」などとも呼ばれるが、西部劇だと『シルバラード』でケビン・コスナーがカッコよく披露している。こういった映画に出てくるアクションを真似るのも楽しいし、練習してそれができるようになった時の嬉しさは、また格別だ。


 二挺拳銃は一例だがSAAにはエマージェンシーリロードの装填撃ち(『荒野の用心棒』のラストの決闘に出てくる技だ)な、まだまだ多くの“SAAならでは”のテクニックや遊び方がある。今回は、ほんの一部だが今後も続きをご紹介していきたい。

 

 

銃の基本操作編

 

SAAの撃ち方の基本のひとつである「ファニング」。マカロニウエスタンなどでよく見る撃ち方だ。SAAはトリガーを引いたままにすると、ハンマーを起こしてリリースするだけで連射することができる。そのハンマーの操作を、銃を握るのと反対の手(右利きの場合で説明すると左手)で“うちわ=ファンを扇ぐように”行なうのがファニングだ。慣れれば一瞬で6連射できる。ファニングはビジュアル的に派手なため人気が高い。連射の仕組みがシンプルなので簡単に思われがちだが、実は高等テクニックだ。単に素早く6連射するだけでも難しい。コツは、左手を「前から後ろ」ではなく「上から下へ」動かすことだ。「前から後ろ」ではハンマーを最後まで起こせない

 

SAAを最も正確に狙い撃てるのが、この両手保持でサイトを使い、左手親指でハンマーを操作する撃ち方だ。マスターすれば、現代銃に負けない速さで連射できる。アメリカでやっているカウボーイ アクション シューティングでよく見られる撃ち方だが、“西部劇っぽくない”のが欠点。西部劇で稀に見ることはあるのだが。撃ち方には2通りあって、ひとつはファニング同様、トリガーを引いたまま起こしたハンマーをスリップさせて撃つ方法と、1発1発トリガーから指を離して撃つ方法で、前者はスピード重視、後者は狙いの正確さ重視だ

 

写真は西部劇サバゲでのデュエル(早撃ち決闘)の一コマだ。合図とともに腰の銃を素早く抜いて撃ち合う。写真の左が私だが(もちろん相手に命中させ勝利だ)、この時、銃のサイトを使って狙い撃っている訳ではない。相手を指さす感覚で狙って撃っている。射撃におけるSAAの最大の優れたところは、サイトを使わず直感的に、すなわち“指さし感覚で”撃てることだ。撃ちたいものに「アレ」と指をさすように銃口を向けて当てることができるのだ。これがマスターできれば現代銃よりも速く撃てる。ただし、これをやるには銃と腕が“一直線になるように”正確に握らないとダメだ。

 

初心者のほぼ全員が銃を握ると無意識に左の写真のように若干、銃口が外側に(右手なら右側に)向く。この状態から手首を少し内側に曲げて正面へ向くように補正して撃っている。これでは直感的には狙えない。右の写真のようにはじめから銃(バレル)と腕が一直線上になるように、銃を少し内側へ向けた状態でガッシリ握るのだ。実はこれが早撃ちの基本中の基本にして、究極の奥義だ。当然ファニング(というよりヒップシュート=腰の高さでの射撃)もサイトが使えないため、この握り方が必須となる

 

SAAでのサイトの使い方の注意点。ふつう銃のオープンサイトは上の写真のようにリアサイトの溝の高さにフロントサイトの頂点を合わせて照準する。しかしSAAでは、これだとかなり下に着弾してしまう。リアサイトの溝に対してフロントサイトが高すぎるからだ。そのため下のようにリアサイトからフロントサイトを少し突出させて狙うのが正解だ。どれくらい突出させるかは銃によって微妙に異なる

 

ガンベルト(ホルスター)からの片手による抜き撃ちの究極奥義と言うべき撃ち方が、この「コック&ドロウ」だ。銃を抜いてからハンマーを起こすのではなく、ハンマーを起こして(コックして)から銃を抜く(ドロウする)早撃ちのテクニックだ。
手が銃に触れていない状態からスタート。

 

グリップを握ると同時にハンマーを起こす。

 

銃を抜き、ターゲットをポイントする。ターゲットをポイントするまで、人差し指はトリガーに触れてはならない。この注意が守れないと、自分の足を撃ってしまうことになる。最も速く正確な撃ち方だが、高いリスクが伴う最高難度の技なのだ。西部劇では『シルバラード』でスコット・グレンがコック&ドロウを練習するシーンがあり、参考になるだろう

 

 

銃の応用操作編

 

グリップを前にして銃を相手に渡すと見せかけてからの回転逆手だまし撃ち。この「カーリー・ビル スピン」とも「ロードエイジェント スピン」とも紹介されるトリックシュート(曲撃ち)は、実際の西部開拓時代に使われたテクニックだ。
グリップを前にして、親指をハンマーにかけた状態からスタート。

 

親指と人差し指を握りこみ、ハンマーを起こしながら勢いをつけて銃身を前方へ振り出す。

 

半回転させ銃をしっかり握り、薬指または小指でトリガーを引く。西部劇では『皆殺しのジャンゴ』や『トゥームストーン』などで出てくる

 

できると楽しいガンスピンしながら銃をホルスターへ収める技。理屈抜きにカッコイイ。これもSAAならではの技だ。写真はバックスピン(後ろ回し)からの例だ。
❶ホルスターの前方で後ろ回し。
❷銃を少し後退させると、銃身がホルスターの縁に当たる。
❸当たったら、銃を少し持ちあげるような軌道でホルスターへ収める。
コツは、銃身がホルスターに当たる位置を身体で覚えることだ。最初は例えば2回転させてから「クルクル、ストン」と言ったようにリズムを決めて練習するとよいだろう。『荒野の用心棒』のクリント・イーストウッドがお手本だ。なおガンプレイはガンセーフティに反する行為であるため、弾を抜いて行なうなどの安全上の配慮を絶対に忘れないこと

 

SAAで「バババン!」と一瞬で3連射する「バーストショット」。ファニングを応用した技だ。1発目を撃った後、トリガーを引いたまま、左手の親指で2発目を撃ち、そのまま続けて小指で3発目を撃つ。これを素早く2回繰り返せば一瞬で6連射だ。これが出てくる西部劇はちょっと思い浮かばないが、人気TVゲームの『METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER』のオセロットや人気マンガ『PEACE MAKER』で、このバーストショットが出てくる。ちなみに同じシングルアクションリボルバーでも、スミス&ウェッソンのモデルNo.3(アメリカン/ラッシャン/スコフィールドモデル)等では構造上の理由でファニングはできない(トリガーを引いたままにしてもハンマー操作だけで連射できないため)

 

銃を宙へ投げてキャッチする最高にカッコいいガンプレイの技がある。銃を後方から肩越しに投げて前方1回転でキャッチする技が「オーバー ザ ショルダースピン」(単にショルダースピンとも)だ。キャッチするのは右手でも左手でも良い。投げ技は“跳び箱と同じ”なので、最初から「思い切っていく!」のがコツ。マカロニウエスタンの貴公子、ジュリアーノ・ジェンマが『星空の用心棒』で、この技をやっている

 

背中越しに投げる技が「バックサイドトス」。回転方向は前方・後方の両方があるが、後方回転が簡単。キャッチは左手でも右手でも良い。ジュリアーノ・ジェンマが『怒りの荒野』のオープニングや『夕陽の用心棒』でやっている。『怒りの荒野』は、他にも多彩な早撃ち、曲撃ち、ガンプレイを見ることができるので、SAAファン必見の映画だ。この映画のおかげで私は人生が変わってしまった

 

私の場合、サバゲではSAAの二挺拳銃で戦うことが多い。よく「二挺拳銃では当たらない」などと言われロマン枠扱いとなるが、それはオートマチックピストル等での話。SAAなら指さし感覚での撃ち方を身に付ければ近距離なら実際に両手同時撃ちで2人を倒すことも可能だ

 

SAAの二挺拳銃での吊り方には大きく2通りある。左写真のように左右に吊って両手で抜くパターンと、1挺を左腰の前にグリップを前方に向けて吊るパターンだ。後者の吊り方は1挺が弾切れしたら、もう1挺へ持ち替える使い方をする場合に適している。写真のホルスターは私がアームズマガジン企画で発売した「ネオ・カウボーイ レザー」だ

 

SAAとあわせて愛用するライフルはウインチェスターのレバーアクションが大定番だ

 

 

カスタマイズ編/ 遊び場編

 

愛銃を自分なりにドレスアップするのもSAAの楽しみ方のひとつだ。最もお手軽な個性の出し方はグリップ交換だ。モデルガンやタナカのペガサスSAAなら、たくさんの種類のグリップを入手できる。上の写真は私がアームズマガジン企画で発売したタナカSAA用のチェッカードの木製グリップだ。右の写真は実銃用のスタッグ(鹿角製)グリップを少し加工して取り付けたものだ

 

実銃のコルトSAAのフレームは「ケースハードン」と呼ばれる焼き入れ処理が施されており、美しいまだら模様を発色している。これをトイガンで再現するのもSAAの楽しみ方のひとつ。写真は私が企画してハートフォードとアームズマガジンのコラボモデルで発売した「コルト フロンティアシックスシューター .44-40」モデルガン。ヘビーウエイト樹脂へのブルーイングでフレームをケースハードン調に仕上げる方法はハートフォードが公式Webサイトで詳しく紹介している

 

この2挺は私が作ったSAAカスタムの一例だ。これは大人気アクション映画『エクスペンダブルズ』シリーズのシルベスター・スタローンの愛銃を再現したものだ(写真のベースはタナカのペガサスSAA。ハートフォードのモデルガンでも作った)。ガスポートとエジェクター付きのショートバレルにファニングしやすくしたカスタムハンマーが特徴だ。右上写真は『夕陽のガンマン』でリー・ヴァン・クリーフが愛用するバントラインカービン。劇中のプロップどおりS&W製(モデルNo.3用)の着脱式木製ストックを取り付けている(ベースはランパントクラシックのモデルガン)。こちらは現在アームズマガジン企画にてタナカのペガサス2をベースに商品化が進行中。高額商品になるため、欲しい方は“より多くのドル”をご用意して待っていていただきたい

 

これは彫刻入りカスタムのタナカのペガサスSAA初期型(かつて六研から彫刻入りの「ルネッサンスモデル」が少数限定で発売されていた)を私がさらにカスタマイズしてファストドロウ競技のツーハンド用にしたもの。垂直に突き立ったスパー(指掛け)のハンマーに、フロントサイトレスのバレル、右側半分をトリムしたトリガーガード、前方を面取りしたシリンダーを搭載。こういう彫刻入りの銃を競技やサバゲで実際に使っていると「確かにいい銃だ。だが、そのエングレーブは何の戦術的優位性(タクティカルアドバンテージ)もない。実用と観賞用は違う」とよく言われてしまうが、私に言わせれば「戦闘意欲が向上するっ!!」

 

SAAを使った遊び方の筆頭に「ファストドロウ」がある。ガンベルト(ホルスター)からの抜き撃ちのスピードを競う競技だ。モデルガンとエアガンの両方を使う。写真は昨年のファストドロウ全国大会(WFDA-JAPAN主催)でツーハンドカスタムのハートフォードSAAモデルガンを撃つ私だ。ファストドロウについては次回で詳しくご紹介したい

 

SAAを使った遊び方に「カウボーイ アクションシューティング」がある。SAA(ハンドガン)とあわせてウインチェスターなどのライフルとショットガンを使った、いわゆる3ガンマッチのウエスタン版だ。日本では今のところ東京近郊でJ-CAST主催の定例会にてエアガンを使って少人数で楽しんでいる状況だが(多くの機材や銃が必要なため、なかなか普及しない事情がある)、アメリカではファストドロウ以上の人気がある。こちらも近いうちに詳しくご紹介したい(J-CAST HP

 

SAAを使った射撃競技で最高にエキサイティングなのが「カウボーイ マウンテッド シューティング」(乗馬射撃)だ。日本でこれができる唯一の乗馬クラブが2020年末にクローズしてしまったので、今は日本ではできないが、私はこの競技に12年ほど挑戦、2014年度に年間チャンピオン(日本一)を獲得した。またどこかでやりたいなぁ

 

今、日本で一番盛り上がっているウエスタンイベントは西部劇サバゲの「西部劇ごっこ」だろう。毎年11月頃に開催、ここ数年の参加人数は約100名だ。ウエスタンの銃と西部劇風の服装で、ゲーム中にモデルガン発火OKのゆる〜いサバゲイベントだ。この写真はイベント名物の「開会式バンバン」の様子。初心者ウェルカムで敷居はかなり低いので、ご興味ある方はぜひご参加いただきたい。今年は11月16日(日)に千葉県のサバゲフィールド「ナンバー9」の「リドリー」フィールドで開催予定だ(https://twipla.jp/events/682719

 

 

TEXT:トルネード吉田

 

この記事は月刊アームズマガジン2025年9月号に掲載されたものです。

 

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