エアガン

2025/10/07

オールドモデルガンアーカイブ:.22口径金属モデルガンの世界【Part.3】

 

 1970年代後半から1980年くらいにかけて、日本はマグナムブームに沸いていた。よく銃のことを知らない人でも、マグナムという言葉くらいは知っていた。スゴイとかデカいというような意味合いで、マグナム○○などというようなネーミングも流行った。そんな時、対極となる最小口径ともいうべき.22口径銃も、ガンファンの中では実は同時進行で(プチ)ブームが起きていたのだった。

 

※モデル名などは、基本的にはメーカー表記に準じていますが、メーカー自身の表記にも揺らぎがあるため、本稿ではその時に参考にした資料に従って表記し、あえて統一していません。
※拳銃型の金属製モデルガンは、1971年の第一次モデルガン法規制(改正銃刀法)以降に販売されためっきモデルであっても、経年変化等によって金色が取れると銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合は黄色や白、または金色の塗料を塗るなどの処置が必要です。

 

ハドソン
ルガー・ベアキャット(1979年)

 

ハドソン製ルガー・ベアキャット

 

 金属モデルガン初の.22口径リボルバー 

 

 ハドソン産業は、モデルガン創成期の1962年、最初の純国産モデルガンとなるモーゼル大型軍用拳銃を開発した。しかし国際ガンクラブの依頼を受けてのことだったので、自社ブランドではなく、ノーブランド商品として国際ガンクラブで販売された。
 1967年に自社ブランドで十四年式拳銃を発売するものの、その後手がけたのは他社も作っている人気モデルが多かった。おそらくハドソンがオリジナリティを出してきたのは、前号でもご紹介したルガー・スーパーブラックホーク44マグナムあたりから。最初の量産モデルだった。


 .22口径も売れるとなって、各社がオートマチックモデルを手がける中、ハドソンがチョイスしたのはスーパーブラックホークともつながるリボルバーのベアキャット。モデルガン初の.22口径リボルバーだ。
 実際のところ、ベアキャットは六研で真ちゅうカスタムとして発売するべく1976年に企画されていたモデルだった。しかし1977年の第2次モデルガン法規制もあって実現せず、ハドソンに量産モデルガンで作らないかと六人部登さんから提案があったという。
 ハドソンはこれを快諾。すぐに製作が始まるも、何らかのトラブルが発生し、途中で六人部さんが手を引いてしまった。


 そこでハドソンは、ユニークなカスタムモデルガンメーカーだったミコ・アームズの御子柴一郎(みこしば いちろう)さんに連絡を取り、ベアキャットの仕上げを依頼した。ここから新たな関係が生まれ、しばらくの間、御子柴さんの提案になるユニークなモデルガンを次々と作っていくことになるのだが、それはまた別な話。
 発売されたベアキャットは、初の.22口径リボルバーとして強い存在感を放ったが、これまたどのくらいのヒットとなったのかは良くわからない。しかし魅力溢れるモデルガンで、復活を期待したい1挺でもある。

 

コストの問題か、リボルバーにも関わらず、カートリッジはオートマチックのようなリムなしのストレート形状

 

銃口部にはラウンドタイプのクラウン。ライフリングはなく、ただの凹みで、奥に改造防止のスチールボールが埋め込まれている

 

フレーム後方から、シリンダーハンドのスプリングを入れてネジで閉めている

 

ハンマーの各位置の合成。ダウンポジションではファイアリングピンのスプリングによって少し押しもどされている

 

 DATA 

主材質:亜鉛合金
発火方式:シリンダー内前撃針
撃発機構:シングルアクションハンマー
カートリッジ:ソリッドタイプ
使用火薬:平玉紙火薬
全長:23.5cm
重量:530g
口径:.22
装弾数:6発
発売年:1979年
発売当時価格:5,500円(カートリッジ6発付き)

 

※経年変化等によってめっきの金色が取れると銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合は黄色や白色、または金色の塗料を塗るなどの処置が必要です。
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。

 

 

ハドソン
ノース・アメリカン・デリンジャー(1996年)

 

ハドソン製ノース・アメリカン・デリンジャー

 

 極小サイズの.22口径ミニリボルバー 

 

 .22口径の金属製モデルガンは、マルシンも1979年にオートマチックのコルト・ウッズマン・マッチターゲットを発売しているが、モデルガンの流れはプラスチック製に向かっていた。.22口径の銃もプラスチックで作られるようになり、MGCのウッズマン(1979年)、コクサイ(国際産業)のウッズマン(1980年)、ハドソンのハイスタンダード・デリンジャー(1981年)、ウエスタンアームズのAR-7(1982年)、さらにハドソンのNAAミニ・デリンジャー(1982年)などが続いた。そしてシューティングブームが起きてエアソフトガンが大人気になると、.22口径どころかプラスチックでもモデルガンの新作が極端に少なくなっていく。
 そしてモデルガンがマイナーとなって久しい1996年、突如といった感じでハドソンからノース・アメリカン(NAA)ミニ・デリンジャーの金属製モデルガンが発売された。それは、その前に発売され好評だったM1ガーランド(1988年)やM14(1990年)からつながるダミーカートリッジ仕様。1982年のプラスチック版の単純な金属化ではなく、完全な新規設計。24金のように見えるゴージャスなめっき、内部パーツの形状にまでこだわったリアル志向を特徴としていた。そのため、実銃同様、分解は推奨されていなかった。せっかくのダミーカートリッジ仕様でリアルメカなのに分解ができないというのはとても残念な部分だった。


 一方で、カワイイ外観と銃に見えない極小サイズのリボルバーはとても魅力的。しかもキッチリ作動する。発売の2カ月後には実物をそっくり模したという、ミニ・デリンジャーを収納できるベルト用のバックルも発売され、まちがいなく特定のファンの心をつかんだ。
 その後ハドソンは、1998年にMP5A5をHW樹脂製のモデルガンとして製作すると発表したものの実現にはいたらず、完全新規となるモデルガンを作ることはなかった。そして2000年代に入ると専門誌の広告も激減し、2009年年末をもってトイガン事業から撤退してしまう。つまり最後の完全新規モデルガンがミニ・デリンジャーだったことになる。ユニークなモデルガンを作り続けてきたハドソンらしい最後のチョイスだったのかもしれない。

 

シリンダーのチャンバーは実弾が入らないよう短くなっているので、ダミーカートリッジも短く、ほぼ実弾の薬莢長と同じ長さ。弾丸部には奇妙なセレーションが刻まれている

 

銃口部にはライフリングも再現されているものの、惜しいことに小さいので肉眼ではわかりにくい

 

ハンマースパー部の滑り止めセレーションは中央にリブのあるタイプ。モデルガン化した1996年時点の仕様に合わせたらしい

 

シリンダー内に弾丸部分がリアルに再現されているが、ダミーカートリッジとは関係なく、固定されている

 

 DATA 

主材質:亜鉛合金ほか
撃発機構:ハンマー、シングルアクション
発火機構:なし
カートリッジ:ダミータイプ
全長:101mm
重量:126g
口径:.22LR
装弾数:5発
発売年:1996年
発売当時価格:12,000円、NAAバックル付き
セット16,000円(各ダミーカートリッジ5発つき)、NAAバックル単品4,000円(すべて税別)

 

※経年変化等によってめっきの金色が取れると銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合は黄色や白色、または金色の塗料を塗るなどの処置が必要です。
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。

 

TEXT&PHOTO:くろがね ゆう

 

この記事は月刊アームズマガジン2025年11月号に掲載されたものです。

 

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