2025/09/20
どこまでもエリートな9mmサブコンパクト「SHADOW SYSTEMS CR920 ELITE」
Gun Professionals Web 出張版
どこまでもエリートな9mmサブコンパクト
SHADOW SYSTEMS CR920 ELITE

Text&Photo by Toshi
これはGun Professionals 2024年5月号に掲載された記事を再編集したものです。
シャドウシステムの920は単なるグロックのクローンではない。グロックのメカ、デザインをベースに、細部まで徹底的に見直して改良を加えたハイエンドモデルなのだ。CR920はサブコンパクトモデルだが、G43Xより断然イイ!これはCovert Role、すなわち隠密任務に最適な一挺だといえる。


カスタムグロック
ここのところずっと気になっていたシャドウシステムズのCR920を手に入れた。グロック43Xをプラットホームとする9mmの小型ポリマーオートだ。ガンショー等で出会うたびにイカすなあと眺めており、ネットのレビューを読んでも皆が絶賛。チャンスがあればと常々狙っていたのだった。
シャドウシステムズの製品は、フルサイズ版を観た瞬間から自分はノックアウトだった。超刺激的なルックスと段違いな高級感。取り分けスライドの大胆かつ緻密に凝ったマシニングのインパクトが凄かった。
この雰囲気のまま小型版もできないかと思っていたら出たのだ。そして自分は結果的に、フルサイズよりもサブコンパクトのこっちにより惹かれるようになった。ポリマー9mmのサブコン市場は、昨今まだまだ大盛況だ。思えば初期の頃は、グロックで言えばG26(1995年)のように単にフルサイズを切り詰めただけで全然気が利かない物から始まり、その後G43(2015年)のように全体を小さく薄く縮めてコンシール性を高め、さらにG43XおよびG48(2019年)で今度は多弾数の追求と、徐々に核心へと迫っていった流れがある。そして近年では、小型化で犠牲となった撃ち心地を取り戻す動きが始まっていた。
そんな進化するサブコン市場の中にあって、頭一つ抜き出たのはやはり2017年のSIG P365だろう。アレは10連という多弾数と握りやすいグリップが素晴らしく、またFCU(ファイアコントロールユニット)方式によってグリップモジュールの自由な交換まで可能とした超優秀な銃だ。握り心地が素晴らしいということは、いよいよ本格的な撃ち易さの探求があのモデル辺りから始まった証拠に違いないワケで。
しかしだ。実は自分、P365はやや敬遠気味なのよね。理由は機能優先の幾分無味乾燥な冷徹過ぎるオシャレ感のないシンプルなデザインに、ひねくれ者の自分はイマイチ食指が動かないのだ(特別モデルの“ROSE”は結構シャレてるけど)。それと、個人的にできればグロックのプラットホームにこだわりたい気持ちもある。自分はグロックマニアでは全然ないが、アフターマーケットのパーツの選択肢が豊富なのはなにかと助かるからね。「G43は既に入手したのでちょっと毛色の違うものを試したい。グロック系ならPolymer 80のG43サイズのヤツか、でもアレは装弾数が少ないしなあ」と考えていたところに登場したのが、CR920だったのだ。
SHADOW SYSTEMS
“A subcompact that shoots like a full size.”(フルサイズのように撃てるサブコンパクト)、コレがCR920の売り文句なのだそうだ。まさに“撃ち易さ”がコンセプト。なかなか乙な事を言ってくれている。
果たして実力はどうなのか。その検証の前に、バックグラウンドを少々書こう。
製造元のシャドウシステムズは、テキサスのPlanoが所在地のメーカーだ。会社創立は2016年。元々はカスタムパーツ屋から出発し、その後フルプロダクションのグロッククローンを製造するに至った。
2019年のSHOT SHOWでG19サイズのMR918を第一弾として発表。上々の評判を得て、翌2020年にはアップグレード版であるMR920をリリース。その後G17サイズのDR920が続いた。ちなみにMRはMulti-Role(一般向け) そしてDRはDuty Role(職務向け)の意味。この二挺を軸に各種のバリエーションを展開していく。
特徴としては二つ。先ずインターチェンジャブルなバックストラップシステム(NPOA…Natural Point Of Aim System)を駆使して握りやすさをとことん追求している。コレはグロックのようなバックストラップ全体を覆うものではなく、下半分が部分的に外れる独自の形式だ。
そしてもう一点、秀逸なオプティックカットを採用している。パネルを必要としないマルチフットプリントオプティックカットというパテントのシステムを開発。スライドのカットをあらかじめ広く取り、そこに4個の穴を開けてある。オプティックサイトを載せて隙間が出る場合は、樹脂のスペーサーで埋めて対処する方式だ。スクリューの長さと軸の太さが業界一で堅牢とのこと。
大は小を兼ねる理論だが、コレが実現できたのにはちょっとした裏ワザがある。それは後述するとして、同社の製品にはグロックがやらないデザイン、そして様々なインプルーブをどんどん実行してしまう痛快さがある。カスタムメーカーの真髄というヤツ。単なるグロックもどきやグロッククローンでは決してなく、ハイエンドなカスタムグロックのノリ。全体として恐ろしく本気度が高いのだ。
そして今回の主役であるCR920は、2022年のSHOT SHOWでお目見えした。CRはCovert Roleの略だ。Covertには隠密、秘密の意味があり、つまりコンシール向けを示している。





全長163mm、全高121.5mm、スライド幅21.8mm、グリップ幅27mm、バレル長86mm、装弾数13+1発、重量515g、全長163mm、全高121.5mm、スライド幅21.8mm、グリップ幅27mm、バレル長86mm、装弾数13+1発、重量515g(数字は13連マグ装着時)。
CR920
というわけで、CR920だ。どこまでもクールでニヒルな外観は、フルサイズ版のMR920に生き写し。スライド両サイドの小窓カットもスライド上部のセレーションもそのままだ。自分のような、性能にプラスして“潤い”みたいなものを常に求めてしまうガンナッツには、この銃は第一印象からひたすら眩しく映る。
サイズ的にはSIGのP365にほぼ近い。が、グリップは前後にやや大きい。そのグリップに、フラッシュフィットのマガジンで10発、エクステンデッドなら13発がマガジンが収まる。13発なんて、一昔前のサブコンではありえなかった数字だろう。
マガジンは金属製だ。同社のフルサイズはグロックの樹脂マガジンを流用していたが、CR920では金属製に替えた。理由は無論、装弾数を稼ぐためだ。樹脂では分厚くなって限界があり、無理すればグリップが膨らんでコンシール性を損なう。賢明な判断と思う。なお製造元はてっきりイタリアのMecGarかと思ったらMade in U.S.Aの刻印が打ってある。シャドウシステムズの製品は100%アメリカ製を謳っているからマガジンも国内生産の模様。徹底している。
肝心のグリップの握り心地は、最高だ。フルサイズにあったインターチェンジャブルなバックストラップシステムはオミットしたが、サイズもアングルも絶妙。またハイ&ロングなビーバーテイルのおかげで深く握って手を伸ばせば自然とエイミングが決まる。加えてアグレッシブなテクスチャーがピッタリ吸い付いて滑らない。
このテクスチャーもフルサイズからの流れであり、グリップの前後左右はもちろん、トリガーフィンガーのレストポイントやらトリガーガードの前部、そしてエクステンデッドマガジンのフィンガーパッドにまで広がる念の入れようだ。
そしてさらに感心するのは、ビーバーテイルにしてもアグレッシブなテクスチャーにしても、やり過ぎてないのである。コンシールの邪魔にならないように、そして手に不快感が残らないように、ギリギリの線に留めている。実に絶妙なさじ加減なのだ。
スライドに目を移すと、前後にある斜めセレーションは面を一段落としたポケットに彫られている。この斜め形状は、引きの食い付きは強固に保ちつつ、ホルスターから抜く際のフリクションが起こらないようにする工夫だ。一段落としはスライドを薄く感じさせる効果もある。スライドトップ部のセレーションは単なる飾りではなく、前方横のセレーションでスライドを引く際の更なる助けになり、またスライドの小窓は軽量化の意味合いだ。バレルのブロンズ色を強調する効果もある。
そして、上部のオプティックカットもフルサイズからの継承だ。サブコン規格で小振りとなり、ネジは2本に減ったが引き続きパテント。パネル抜きで、トリジコンのRMRccを除いたほぼすべてのマイクロレッドダットが搭載できる。
でだ。このシステムを実現できた裏ワザは何かと言えば、エキストラクタープランジャーに秘密がある。普通のグロックでは、エキストラクタープランジャーはスライドの後端まで長く伸びている。コレを半分に縮めて、オプティックサイトを留めるドリル穴が深く入るスペースを確保したのだ。パネル抜きだからオプティックサイトを低く設定でき、アイアンサイトを生かすことが可能になった。やってくれた。スクリューの長さと軸の太さも踏襲。取説には適合機種のチャートと詳しい手引きが載り、ロックタイトまでサービスで付いてくるから嬉しい。自分はHolosunの407K(6-MOA) を入手。樹脂製の小さなインサートを前方へ噛ませてあっさり付いた。
お次はバレルをチェック。シャドウシステムズのトレードマークとも言えるTiN Spiral-Fluted Match-Grade Barrelだ。長さは3.41インチでグロック43Xと完全に一緒。ちなみにSIGのP365は微妙に長くて3.42インチある。MR918時代から続くこのスパイラルフルートは、今だから書くけど、自分は少々あざとさを感じていた。カッコつけと思っていた。が、コレも見掛け倒しではなく、バレルを軽量化し、冷却を早め、さらにデブリの逃げ道にもなると知って反省しているところだ。自分がバカでした。
トリガーを引いてみよう。フラットフェイスなトリガーには当然指セイフティが付く。手元のG43に比べて指触りが良く、滑らかに引ける。トリガープルは2.2kg。コンシール用として無難な範囲だ。ちょっと惜しいのは、指セイフティが前後にややぐら付く事か。定位置に保つバネとの間に隙間が空いている模様。特に支障があるワケではないが、何となく落ち着かないんだよね。
続けて各部を見ていくと、
・前後サイトが上等
フロントはNIGHT FISIONのトリチウムでシャドウシステムズのロゴが入る。リアは後面に反射除けの細かいセレーションが入ったblacked-outタイプだ。どちらも適度な高さを取ってある。
・スライドキャッチの感触も上々
極めて低めで内側への曲げも充分。そして、下側のフレームをわずかに盛り上げてシールドとしてある。衣服に引っ掛かりにくく、同時に使い勝手も良い。グロックはこの部分、かなり中途半端なんだよね。
・ダストカバーにはレール
サブコン規格の狭くて短い規格ながら、コレはやっぱり重宝する。以前は適合するウエポンライトが少なかったが、現在はSUREFIREのXSC等、徐々に増えつつある。
・ホルスターはG43Xと共用
有難いことに、ホルスターはG43X或いはG48のものが流用可能だ。カイデックスのホルスターに入れて腰に差すと、見事に体へ馴染む。撃ち易さを担保する十分なサイズを保ちつつ、携帯時には難なく隠れるよう随所を削って突き詰めた結果だ。文字通り忠実な“SHADOW=影”と言った感じ。面白いのは、手元にあるBLACKHAWK製のM&Pシールドのカイデックス製ホルスターにうまく収まるんだよね。シルエットが同じってことか。
と言った具合だ。
隅々まで計算し、念入りで気の利いた銃。繰り返すが、本気度が違い過ぎる。ただし、だ。これだけ贅沢な仕上がりとなると、当然お値段がねえ。ご覧の最上級エリートモデルで定価940ドル。ストリート価格は若干下がるとはいえ、一般的なグロッククローンの倍だ。また予備の13連マガジンだけでも30ドルもする。まあ、凝りに凝った銃だからそれ相応と言えばそれまでですが。
自分は例によってARMSLIST経由で中古を買った。程度極上のフルセットでなんと500ドルぽっきり。無我夢中で飛び付きました。欲を言うなら、付属のソフトキャリングケースが黒で地味。確かフラットダークアース色のオプションもあったはずで、出来ればそっちが欲しかったかも(そんなのどうでもいいだろうって…笑)。
ともあれ、優れたエルゴノミクスデザインでまとめられた軽く小さく薄いボディ、各部のアグレッシブなテクスチャーと限りなくクールなスライドのマシニング加工、そして13+1発の頼もしい装弾数…競合ひしめくサブコン市場において、このCR920は明らかに目立つ存在と思う。
グロック嫌いの貴方でも、絶対にコレは欲しくなったでしょ?








CR920実射編
では撃とう。
弾はフェデラルのAmerican Eagle(115gr FMJ)と、同じフェデラルのパーソナルディフェンス弾であるHydra-Shok (124gr JHP)を用意。
握り心地を優先し、マガジンはエクステンデッドの13連で行く。なお10連のマグも、ボトムプレートを付属のフィンガーレスト付きに替えたらずいぶん落ち着くけどね。とりあえず今回はこっちで。
先ずは弾込め。最終弾が相当にきつく、不可能なくらい硬い。が、無理して込める。マグキャッチの感触は非常にポジティブだ。
スライドを引いて初弾をチェンバーへ。スライドはタイトフィットでありながら引きは滑らか。弾の流れもスムーズだ。
準備完了。おもむろに構えると、G43で顕著だった頭でっかち感が不思議とない。グリップがちょっと太くなっただけでこうも違うのか。G43ではマグ交換時に銃を落としそうになったくらい重量バランスが悪かった。うん、ますます気に入ったぞCR920。
そして発射!

ビュイッとCR920が跳ねる。小型銃だから、無論フルサイズよりリコイルは強い。が、キンキン来る衝撃は無く至って快適。小さいけれど落ち着いた手応えだ。撃ち易さ重視のコンセプトは伊達ではなさそう。まあ、さすがに500発とか撃ち続けたいレベルの感触じゃないけどね。それはこのサイズの当たり前であり、あくまでもサブコンの割には快適という意味ではあるが。
トリガーはフラットフェイスにやっぱり限るね。ラウンドフェイスに比べて指触りがサッパリしてて、プルも軽く感じられる。グロックなんか邪魔なグルーブまで付いてるもんなあ。
あと、キリッと引き締まったサイトビューにも満足だ。サイトの狙いやすさというのは、必ずしもサイト自体の良さだけによるものではなく、銃のバランスとグリッピングも含めた総合点で違ってくるのを、今回つくづく感じた次第。
一つ文句を書くと、個人的に、グリップのバックストラップ下部がもう少しストレートだったらと感じる部分はままある。フルサイズのようにインターチェンジャブルだったらつぶしが効いたかも。グロックもそうだけど、どうしてココが膨らむのか理解できない。自分の手が悪いのだろうか。
70発ほどを撃って実射は終了。ジャムは一発も無かった。ハイ&ロングなビーバーテイルのおかげでスライドバイトも無し。極めてコントローラブルで、自分が経験した9mmサブコンの中では抜群の撃ち易さ。コレはお勧めです。
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すべてがリッチで理知的で、少々オーバーエンジニアの感すら漂うこのCR920。でも、その構成要素が一つでも欠けたら、きっと惜しいし寂しい。総て揃ってこそのCR920に違いない。
思えば自分、ポリマーのサブコンは結構遍歴を繰り返した。買っては売りを繰り返してきた。XDSやらM&Pのシールドも既に手元にはない。この際お気に入りのG43も売って、CR920に集中するか。ああでも、G43はスライドがJagerWerksのカスタムだから手放すのはちょっと惜しいけどね。
シャドウシステムズは2023年、ショートコンプ付きのCR920Pという新作を発表した。以前から、フルサイズに長めのコンプを付けたモデルはあったが、CR920への搭載は初めて。コレがまた大層メカメカしく、コンプが短いから極々自然でカッコいい。無論、コンプが付けばリコイルは緩くなる道理。レビューでは既に絶賛の嵐となっている。どうやらシャドウシステムズの快進撃は、当分続きそうだ。
TOSHI
Gun Pro Web 10月号 CONTENTS ▶ ヘッケラー&コッホG95 |
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Text&Photo by Toshi
この記事は月刊アームズマガジン2025年10月号に掲載されたものです。
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