2025/05/16
絶版モデルガンに見る第二次世界大戦マイナー&じゃないほう拳銃 Part3
絶版モデルガンに見る第二次世界大戦マイナー&じゃないほう拳銃
かつてトイガンの花形だったモデルガンは、メジャーな人気の銃を中心に、マイナーでレアな銃も作られた。今回はすでに絶版となってしまったモデルガンの中から、第二次世界大戦で使われた各国のマイナーな拳銃、主流じゃないほうの拳銃をピックアップしてみた。
イギリス軍
中田商店「エンフィールドNo.2 Mk.I」

(Photo by Keisuke.K)
エンフィールドはイギリス軍のメインの拳銃でありながら、モデルガン全盛期の日本での知名度は低く、人気も低かった。しかし中田商店には、もともと第二次世界大戦時の軍用銃にこだわって商品化するという目標があり、マイナーな銃であっても積極的にモデルガン化していた。
原型製作は六人部さん。外観は資料書籍の写真を参考にし、メカニズムは土浦の自衛隊武器学校にあったトップブレイク・リボルバーのアイバー・ジョンソンを取材して参考にし、サイズは手元にあった実銃のグリップから割り出していったという。
そして、同系のキャリーサイズリボルバー、ウェブリーもバリエーションとして発売されることになった。銃身長や、フレームがバーズヘッドといった大きな違いのほかにも、細部で違いがあったが、モデルガンとしてはスクエアバットのエンフィールドをベースに、多くのパーツを共用としたセミカスタムのような仕様。
エンフィールドの広告は多数のラインアップの中の1挺という扱いだったが、ウェブリーはモノクロながらフレンチM1935Aとの抱き合わせで大きめに広告された。中田商店としてはウェブリーの方に期待していたようだ。
しかし、中折れ式の自動エジェクトメカニズムの面白さが伝わると徐々に人気が出てきて、ウェブリーよりエンフィールドの方がよく売れたらしい。それでも、ほかの銃に比べれば少なく、マイナーな域は出なかったようだ。

(Photo by Keisuke.K)

(Photo by Keisuke.K)

※表面を白・黄・金色などに着色し、銃口を閉塞していれば所持可。 |
フランス軍
TRC「フレンチM1935A」

(Photo by Keisuke.K)
第二次世界大戦で、フランスは1940年にドイツの侵攻を受け早々に降伏してしまったため、フランス軍というイメージが希薄だ。むしろ映画などの影響で、フランスといえばレジスタンスというイメージのほうが強い。
当然、制式軍用拳銃もあまり知られておらず、モデルガンが発売されると聞いて初めて知ったという人も多かった。
作ったメーカーはTRC。中田商店が1969年にモデルガンの製造から手を引いため、月刊Gun誌のライターでもあった根本 忠さんが率いる中田商店卸部が独立して、新たにモデルガンの製造販売を手がける会社として立ち上げた。TRCは「東京・レプリカ・コーポレーション」の略だ。
原型製作は六人部 登さんで、モデルガン化は中田商店ですでに進んでいたらしい。中田商店の名前で近日発売の広告も打たれている。それを引き継ぎ、1971年の第一次モデルガン法規制直前に発売した。
とてもマイナーな拳銃だが、銃砲史から見ると重要な位置付けになるモデルだった。スイスが1937年にM1935Aのライセンス生産権を取得すると、9mm口径にしてアレンジを加え、あの有名なSIG SP47/8(後のP210)を完成させたからだ。
しかし当時の多くの人にとっては、フランス軍もマイナーだし、その制式拳銃もマイナーで、知る者のみ知るという存在だった。


※表面を白・黄・金色などに着色し、銃口を閉塞していれば所持可。 |
ソビエト軍
中田商店「トカレフTT33」

(Photo by Keisuke.K)
中田のトカレフが発売された1967年当時、日本とソビエト連邦の関係は最悪だった。1960年に日本が日米安全保障条約を改定したことでソ連が態度を硬化、北方領土の返還も撤回してしまい、国交断絶状態となっていた。
当然ながらソ連という国自体の好感度も低く、ソ連軍はもちろん、その装備である軍用拳銃も、興味を持つ人は一部の研究者などを除いてほとんどいなかった。
しかし中田商店は、当初の「第二次世界大戦時の世界各国の軍用銃を作る」という目標を達成するため、どんな不人気銃でもモデルガン化する覚悟はできていたようだ。派手な広告展開は行わずに、粛々と、トカレフ(1967)、エンフィールド(1968)、フレンチ(1971)とモデルガン化を進めていった。
トカレフ拳銃といえば、当時はかなりのガンファンでも、せいぜいコルト1911オートの劣化コピーくらいの認識しかなかった。何しろセーフティと呼べるものが1つもないのだ。どうにかハーフコックがあるくらい。
実際には、部品点数が少なく安価で作ることができ、工具なしでグリップも含め主要部分の分解ができ、メカ部(ハンマーアッセンブリー)がブロックで簡単に取り外せるなど優れた点も多々あった。モデルガンもよく再現されていた。しかし惜しいことに、それらを認識、理解、実感できたのは買った人だけで、なかなか多くの人たちには伝わらなかった。


※表面を白・黄・金色などに着色し、銃口を閉塞していれば所持可。 |
※モデル名などは、基本的にはメーカー表記に準じていますが、メーカー自身の表記にも揺らぎがあるため、本稿ではその時に参考にした資料に従って表記し、あえて統一していません。
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。
TEXT:くろがね ゆう/アームズマガジンウェブ編集部
この記事は月刊アームズマガジン2025年4月号に掲載されたものです。
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