2025/04/14
20世紀を彩った推しモデルガン Part 3
20世紀を彩った推しモデルガン-1980年代&1990
年代-
これまでに発売されたすべてのモデルガンの中から、推しモデルガンを選ぶ、というのは超ムズカシー! 60年以上の歴史があるわけで、技術的にも大きく進化しているから、単純に同じ基準で選ぶことができない。そこで、モデルガンの歴史を10年ずつに分け、それぞれの量産モデルガンの中から、自分なりの推しモデルガンを選ぶことにした。あなたの選択と同じものがあるか、チェックするような気持ちで読んでいただければ幸いだ。
※モデル名などは、基本的にはメーカー表記に準じていますが、メーカー自身の表記にも揺らぎがあるため、本稿ではその時に参考にした資料に従って表記し、あえて統一していません。
1980年代(1980~1989年)
推しモデルガン
ベスト・ショートリコイル・ブローバック
「マルシン製ワルサーP.38」(1980)
ベスト金属ライフル
「ハドソン製M1ガーランド」(1988)
2回におよぶ法規制でモデルガンは大きく様変わりした。モデルガンの主流はプラスチックとなり、1979年に登場した革命的玩具火薬「MGキャップ(キャップ火薬)」が広く普及したことで、簡単でクリーンで、安全な発火が当たり前になった。
これで新たな時代が始まるかと思われたのだが、1980年代は前半と後半でモデルガンの流れは大きく変わってしまう。
前半は、マルシンが1979年に発売した閉鎖系ブローバックの、プラグ・ファイヤー・カートリッジ(PFC)ブローバック・システムが発展、改良されて大ヒットした。ガス抜けが向上し、撃発音も大きくなり、さらに快調になった。加えて擬似的なショート・リコイルの再現も大きな評判となり、ニューモデルが次々と登場し、どれも大ヒットになった。もはや閉鎖系ブローバックシステムと疑似ショートリコイルでないと売れないような雰囲気。


他社もこぞって似たような機構と仕様を採用した。開放系のデトネーター方式で業界をリードしていたMGCでさえ、1982年後半には自社開発の閉鎖系CPブローバック方式を採用している。
ところが、この頃からエアソフトガンが大人向けにリアル化、パワーアップして、注目を集めるようになっていく。折から、アメリカで流行していた撃ち合いゴッコのサバイバルゲームが雑誌で紹介されると、エアソフトガンでそれが再現できるというので、一気に人気を得ていく。
MGCは弾の飛ばないモデルガンでも射撃が楽しめるシューター・ワン・システムを開発して対抗。競技射撃のブームを巻き起こしたものの、より多くの人たちの注目を集めたサバイバルゲームには使えなかったことから、人気を挽回するまでにはいたらなかった。
トイガンの主役は、モデルガンからエアソフトガンへと完全に入れ替わってしまう。モデルガンという名称を生み出し、長年にわたって業界をリードしてきたMGCさえも、1985年には自社開発のエアソフトガン、M93Rを発売するほどだった。当然のように1980年代後半はモデルガンの新製品は激減してしまう。


このような時代の流れの中、推しモデルガンを選ぶとすると、1980年代初めのモデルガンの流れを大きく変えたモデルと、新たなモデルガンの流れを作ったモデルを挙げたい。
1つがマルシンのプラスチック製ワルサーP.38ショートリコイル・ブローバック。改良型のPFC方式で、しかもショートリコイルを再現。1980年に発売され、その後のブローバックモデルガンの主流となる仕様を作り出した。


もう1つはハドソンの、金属製非発火式レプリカモデルガンの長物、M1ガーランド。TVドラマ『コンバット!』(1962〜1967)の時代から、多くの人が憧れていた銃。それを厳しい法規制の中で、リアルに再現した。このモデルが発売されたときの驚きと喜びは今も忘れられない。その後のレプリカモデルの流れを作ったと言えるかもしれない。
もちろんほかにも優れたモデルガンはたくさんあるのだが、あえて絞るとこの2機種になるかなあと。


1990年代(1990~1999年)
推しモデルガン
ベスト・モンスター・ハンドガン
「ハドソン製デザート・イーグル44マグナム・ピストル」(1994)
ベスト・ニューモデル・ハンドガン
「タナカ製グロックG17」(1995)
1980年代後半から新規設計のモデルガンは激減する。1990年代に入ってもそれは変わらなかった。傾向としては、発火機構を持たないレプリカモデルや、仕上げのメッキに24金を使うなどした豪華仕様のモデルが増えて来たこと。
遊びという点では、火薬を使う面白さがモデルガンにはあったが、1980年代末から1990年代初めにかけてガスブローバックガン(GBB)が登場すると、ブローバック作動する面白さもエアソフトガンで手軽に味わえるようになってしまう。その結果、モデルガンは飾ったり、実銃同様の操作を楽しんだり、分解して構造を眺めたり、機構を研究したりするという方向へ行かざるを得なかったのかもしれない。


そんなわけで、実銃の最新モデルはエアソフトガン(GBB)で、クラシックな銃やマイナーな銃はモデルガンでというような流れもできていったような気がする。
もちろん1990年代初めの、マルシン VS MGCのモデルガンによるベレッタ92バトルはとても興味深かった。マルシンが市販モデルのM92FSで、MGCがミリタリーのM9。どちらも閉鎖系のブローバックで、センターファイア、ショートリコイル。ほぼ互角の仕上がりで共に大ヒットした。


そしてフルオート(連射)対決もあった。KSCのM93R、マルシンのドルフィン、そしてタナカのグロックG18。どれも素晴らしく、作動も快調だった。こういう対決はモデルガン全盛期だったらなかったかもしれない。とにかく、これらによってモデルガンのレベルがさらにアップしたのは間違いない。
またこの時代の特徴は、MGCなど老舗メーカーが姿を消してしまったのに対して、ハートフォード、ショウエイ(実は老舗だったが名を出していなかった)、クラフト・アップル・ワークス(CAW)、ランパント・クラシックス、ザ・リアルマッコイズなど、新興メーカーの台頭だろう。その製品はいずれも注目を浴びたが、量産モデルでは、ショウエイのFG42やMP44、CAWの1851ネービーやスコーフィールドなどが強く印象に残った。
そんな中からベストモデルガンをチョイスするとなると、また2つ挙げたい。
1つはハドソン製デザートイーグル。.44マグナム口径で、全長27cmのモンスター級ビッグサイズ。これがしっかりブローバック作動した。HW樹脂製のセンターファイアで、エジェクターは実銃と同様のプランジャー式を再現。それらだけでもスゴかったが、エアソフトガン全盛期に、あえてモデルガンで勝負したハドソンには頭が下がった。これは欠かせないだろう。


そしてもう1つ、タナカのグロック17も挙げておきたい。閉鎖系ブローバックのセンターファイア、ショートリコイル仕様。1991年にMGCがGBBを発売してから大きな注目を集めていたグロックだったが、なかなかモデルガンでは発売されなかった。それをタナカはやった。モデルガンファン待望の発売だった。しかも実銃に準じたリアルメカで快調作動。P226も良かったが、さらにグロックは良かった。現在の目から見ても完成度が高い。まさに名銃。


というところで紙数が尽きた。ゴメンナサイ! 2000年以降の推しモデルガンについては、次の機会にチョイスしてみたい。
TEXT&PHOTO:くろがね ゆう
この記事は月刊アームズマガジン2025年3月号に掲載されたものです。
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