2024/10/21
いかにもイタリアンデザインな短機関銃「ベレッタM12S」【無可動実銃】
この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。
数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。
発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。
時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。
その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。
有名なあのシーンはなぜ生まれたのか
ベレッタM12を一躍有名にしたのは、ベトナム戦争におけるテト攻勢時にアメリカ大使館での戦闘でアメリカ海兵隊員が使っていたシーンであろう。
これは当時、アメリカ海兵隊では9mm口径の短機関銃は採用されておらず、1960年代から1980年代にかけて大使館に勤務した海兵隊員は国務省が支給する銃器で警備する必要があったからである。国務省は戦争中でも大使館の警備がM16やM60の重装備をしていると世間に対して危機感を煽ると考え、小銃より威力の劣る短機関銃を選択したようだ。
自国製やアメリカ軍にも多くの短機関銃は存在していたにもかかわらず、なぜベレッタM12が選ばれたのかについては不明である。しかし、当時存在した短機関銃の中では正確な射撃が可能な数少ないモデルであったとは推測できる。しかし対テロ戦用として高性能な短機関銃が有効であることが実証されるのはこの後である。それ以前に発生したアメリカ大使館襲撃時にベレッタM12が採用されていた事実については、彼らに先見の明があったと評価できるのではないだろうか。
- 全長:422mm / 657mm(ストック伸長時)
- 口径:9mm×19
- 装弾数:20発/ 30発/ 40発
- 価格:¥506,000
- 商品番号:【8864】
ロングセラーの秘訣
ベレッタがM12をリリースした時、旧式のM1938の存在に苦しんだ。イタリア軍警察であるカラビニエリではM12を採用したが、イタリア軍はM1938を置き換えることなく保持し続け、新型のM12は少量しか購入しなかった。
代わりに海外においてM12は好評で、ラテンアメリカや中東諸国は洗練されたイタリアの新型SMGを求めた。特にイスラム圏の中東ではイスラエル製のUZIは選択肢になく、M12はアラブ諸国では一種のステータスシンボルとなり、サウジアラビアのファイサル国王は軍や警察用の数千挺とは別に、家族や友人用に金メッキが施された豪華なM12を25挺も購入したほどだ。またテロリズムなどベレッタが意図しない使われ方をした例もあるようだが、こちらは他国のライセンス品や、イランやリビアが購入したものが政権交代後にテロリスト側に渡ったものである。
この銃の評価が高かった理由は、シンプルな造りで故障が少ない優れた設計からくる高い信頼性であった。誰でも使えるようにレイアウトされているが、複数の安全装置が備わり、正しく操作しなければ発射すらできない安全な構造であったからでもある。誕生当初から完成度の高い短機関銃であったが、MP5が台頭してきた1978年にはセレクターとサイト類に改良を加えたM12Sが登場している。この程度の小改造で充分な近代化を成しえたM12は2008年まで生産され続けた。
2018年以降、M12を現代の技術で再設計した後継機種PMXへの更新が始まっているが、これまで生産された大量のM12が不必要になるのは、まだまだ先の話である。冷戦時代の短機関銃の多くが運用を終了している中、M12は今なお現役であり続けている数少ない短機関銃である。
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TEXT:IRON SIGHT
この記事は月刊アームズマガジン2024年11月号に掲載されたものです。
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