実銃

2024/07/27

レバーアクション銃の代表モデル「ウィンチェスターM1873」

 

レバーアクションライフルの基礎知識

 

 

レバーアクションの代表銃 ~Winchester Model 1873~

 

Winchester Model 1873 Rifle(ウベルティ:イタリア製レプリカ)
オリジナルの製造期間:1873〜1919年
全長:43インチ(約110cm)
銃身:24インチオクタゴンバレル(約61cm 八角形銃身)
重量:約3.7kg
主な口径:.44-40 Win
装弾数:13+1発
仕上げ:ケースハードンフィニッシュ

 

 日本で最も有名なレバーアクション銃は、何と言っても昔からトイガン化されているウインチェスターのモデル1873と1892、それと1866イエローボーイだろう。この3挺は、多くの西部劇に登場する。中でも特にモデル1873は“The Gun that Won TheWest”(西部を征服した銃)と呼ばれる名銃の中の名銃だ。今回は、このモデル1873をピックアップしてご紹介したい。


 アメリカ南北戦争後、ヘンリーライフルを製造するニューヘイブンアームズカンパニーはオリバー・ウインチェスターが所有権を得たことからウインチェスター・リピーティングアームズカンパニーとなった。ヘンリーライフルを改良し1866年にそれに代わって発売したのがウインチェスター モデル1866“イエローボーイ”だ。ヘンリーは銃身下のマガジンチューブに銃口側から弾を装填するが、イエローボーイはレシーバー右側面にローディングゲートを設け、そこから弾を装填することができた。ヘンリーもイエローボーイも、その外見上の特徴は金色の真鍮製(正確にはガンメタル:砲金製)のレシーバーだ。だがどちらの銃も小さいリムファイア弾を使うため、弾の威力はライフル銃としては非常に弱いものだった。


 そこでウインチェスターは初のセンターファイア式のライフル弾となる.44-40 Winchesterを開発し、それを撃つ銃としてモデル1873を1873年に発売した。弾が強力になったため、従来の真鍮製のレシーバーを廃止し、耐久性の高いスチール製(初期はアイアン=鋳鉄・鍛鉄製)へと切り替えた。その他にも各部に小改良を加えているが、基本的な構造はイエローボーイと同じだ。


 .44-40 Winはピストルサイズの弾であったため、リボルバーで撃つこともできた。コルトが1877年に名銃シングルアクションアーミー(SAA)の口径バリエーションモデルに.44-40を加えると、ライフルとハンドガンで弾が共通で使える便利さが民間市場で受け入れられて、SAAとモデル1873はともに大ヒット商品となった。なお.44-40のコルトSAAには“フロンティアシックスシューター”という特別な名前が与えられている。


 ウインチェスターはその後、1880年代の中頃から天才銃器デザイナーのジョン・M・ブローニングによる設計の銃を発売するようになった。彼の設計によるモデル1873の後継製品がモデル1892だ。1892はレシーバーがより堅牢な構造となったため、当時普及してきた無煙火薬にも対応した。後継製品の発売によりモデル1873、イエローボーイの製造は数年後に終了したが、現在ではウインチェスターからこれら3モデルともリバイバル再生産がなされている。なお、イタリア製のレプリカ含め、これらは無煙火薬の弾が撃てるよう強化されている。

 


 

Winchester Model 1866 “Yellow Boy” Rifle(ウベルティ:イタリア製レプリカ)
オリジナルの製造期間:1866〜1898年
口径:.44 Rimfire(.44 Henry)

 

 前装式だったヘンリーライフルを改良し、レシーバー右側面から弾を装填できるように改良したのがウインチェスター モデル1866だ。その真鍮製レシーバーの金色により「イエローボーイ」のニックネームで呼ばれた。

 写真のような銃身の長いライフル銃に加え、全長の短いカービン銃も作られた。カービンとは、現代では“ライフル銃の全長を短くしたものや、ピストル口径のライフル、あるいはショルダーストックを装着したピストル”を言うが、本来の意味は騎兵銃で、馬の鞍に付けるガンブーツ(ライフルスキャバード)から銃を抜き挿ししやすいように銃身を短くするなどして、馬上で使いやすくする工夫を施した銃のことだ。

 


 

Winchester Model 1892 Carbine(キアッパ:イタリア製レプリカ)
オリジナルの製造期間:1892〜1941年
主な口径:.44-40 Win

 

 ジョン・M・ブローニングが設計したモデル1873の後継製品。この写真はカービンモデルだ。モデル1892は、実は1886年に発売されていた.45-70等のフルサイズの強力なライフル弾を撃てるモデル1886を、.44-40 Win等のピストルサイズの弾用にコンパクト化したものだ。

 構造はモデル1873から一新。トグルリンクを廃止。モデル1892は、実際にはアメリカ西部開拓時代(米政府がフロンティア消滅を宣言した1890年までとされる)の銃ではないが、往年のハリウッド西部劇やマカロニウエスタン(イタリア製西部劇)でプロップとして多く使われた。昔の映画やテレビは、まだ今ほど時代考証が正確ではなかったのだ。

 

 

レバーアクションの特徴と構造

 

  1発撃つごとにレバーを開閉するだけで軽快に連射できるウインチェスターやマーリンのレバーアクション。そのメカニズムはヘンリーライフルによっていったん完成した。その仕組みを、モデル1873を例に見てみよう。

 

モデル1873のレシーバー。基本的な構造はヘンリーライフルから変わっていない。そのスチールの色合いは、写真のような美しいまだら模様をしているが、これはケースハードンとよばれる金属の表面硬貨の焼き入れ処理により発色する。モデル1873のレシーバーの標準の仕上げには、黒染めと写真のケースハードンの二種類があった。このような仕上げの美しさもレバーアクション銃の魅力のひとつだ

 

ウインチェスターのレバーアクション銃には、数種類のモデルがあるが、何が最も違うのかと言えば、それは口径(弾のサイズ、および黒色火薬/無煙火薬)だ。写真の実物ダミーカートは左から、9mmパラベラム、.357マグナム、.223 レミントン(M4カービンの弾)、.30-30 Win(ウインチェスター94やマーリン336の弾)、.45-70(西部開拓時代の米陸軍のライフル弾、およびウインチェスター1886やマーリン1895 SBLの弾)、.44-40 Win(ウインチェスター1873、1892、コルトSAAの弾)だ

 

基本的にレバーアクション銃は、銃身下のチューブがマガジンとなっており、現代の多くのショットガンのように弾が縦方向に並んで装填されていく。同じ銃であっても装弾数は当然ながら銃身の長さ(正確にはチューブの長さ)によって変わってくる。つまりモデル1873でもライフルとカービンでは装弾数が違うのだ

 

レシーバーの右側面の中央にはローディングゲートがある。ここから1発ずつカートを押しこんでマガジンへ次々と装填していく。レシーバーの下に見える金色の部分が、カートを薬室入口までエレベーターのように押し上げるキャリアブロックだ

 

排莢口はレシーバーの真上にある。レバーを勢いよく起こすと空カートが真上に弾き出される。排莢口の後ろのレシーバー上面にあるのはダストカバーで、前方へスライドする。M4カービン同様、排莢口は開いたままだが、撃たない時に異物が入らないようにカバーを手動で閉じて、レバーを起こすと連動して一緒に開く

 

モデル1873はレシーバー両側面のサイドプレートを外すと、内部の構造を見ることができる。ブリーチボルトはトグルリンクという尺取虫形の2本のアームによってロックされる。このトグルリンクの基本構造はルガーP08と同じだ

 

発射後、レバーを起こすとトグルリンクが曲がり始め、それによってブリーチボルトのロックが外れ後退を始める。するとブリーチボルト後方から伸びたファイアリングピンがハンマーを起こし始める

 

レバーを起こしきる直前にブリーチボルトの後退は完了し、続けてキャリアーブロックが上昇を開始する。この時、薬室から引き出された発射済の空カートは、ブリーチブロックの上昇によって上方向へ飛ばされる。レバーを閉じるとブリーチが前進し、キャリアーにある次弾を薬室へ押し込む。ハンマーはコックされたままとなるので、レバーを完全に閉じた後にそのままトリガーを引けば、次弾が発射される

 

 

TEXT:トルネード吉田/アームズマガジンウェブ編集部

 

この記事は月刊アームズマガジン2024年8月号に掲載されたものです。

 

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