実銃

2023/04/22

【実銃】法執行機関ライフルSPR 300の驚愕の消音性と精度に迫る

 

B&T SPR 300
 Cal.300 AAC Blackout
Bolt Action Rifle

 


 目立たないながら異色の光芒を放っているのが、B&T AG社が数年前にリリースしたSpecial Purpose Rifle(SPR)300だ。このローエンフォースメント用として、限りなく静かな発射音と携帯性を追求して生み出されたボルトアクションスナイパーライフルにスポットを当ててみたい。

 

銃についてのレポートはこちら

 

実射


 今回の実射では、通常の精度テストの他に.300 AAC Blackout口径が根強い人気を持つ要因の一つでもある、スーパーソニック(超音速:ブレットスピードが音速を超える)弾とサブソニック(亜音速:ブレット重量を上げてそのスピードを下げることにより、サプレッサーの消音効果を高くしつつ、貫通力も向上させる)弾の両方を用意し、それぞれの違いを探ってみることにした。

 

これが75ヤード先にセットしたターゲット。ライフルで射撃するには近いが、ポリススナイパーの狙撃距離としては現実的だ


 ただし、申し訳ないことに昨今カリフォルニア州で施行された新レギュレーションによる弾薬購入時の手続きがらみで、ガンショップの店頭から種類によって手に入れられるアモが限られてしまい、今回はスーパーソニック弾がFIOCCHI社の150gr FMJ BT(1,950ftps)、サブソニック弾がSPR300のオーナーであるエレン・ダンスト氏のロードによる220gr TMJ(950ftps)という2種類しか用意することができなかったことをお詫びしておきたい。今や州外からのインターネット購入もできなくなってしまったので、基本的には自分が直接足を運べる範囲内でしか、弾薬購入ができなくなってしまっている。

 

今回、やっとこさ用意できたFIOCCHI 150gr FMJBT(右)と220grTMJ サブソニック(左)

 

 もちろん自分でリロードするのは合法なので、まめにリローダーのセットアップを変更して別口径を作っている人もいるが、私は9mmと5.56mm口径にセットアップしたリローダー2台を据え付けにしてしまっているので、これらをいちいち口径変更するのは少々荷が重いのだ。しかしながら、今後もカリフォルニア州に住み続けるのなら、仕事柄口径変更のしやすい機種を手に入れなければと考えているところだ。

 

 それでは気分を入れ替えて、楽しい実射に入ろう。今回のプライベートレンジは、最長距離が75ヤード(約68.6m)となってしまったので、各テストの距離は少々短めではあるが75ヤードとさせていただく。今回のB&T SPR300は全くの新品なのでまずはサイトインからスタートする。スコープはVORTEX(ヴォルテックス)のVIPER(ヴァイパー)PST 5-25×50mmだ。

 

エレンの安定した射撃ポジション。バイポッドは可動部分がスムーズ過ぎて、やや落ち着かない。もう少し抵抗が掛かるようにチューンすれば使いやすくなりそうだ


 また、サプレッサー装着時の音量計測には、参考までにスマートフォンのアプリである“Decibel X”を使用した。このようなアプリが正確に音量を計測できるとは思っていないが、本格的に測るとなれば、複数のサウンドメーターを用意して多方向からセットアップし、反射音を除いた音源を綿密に精査する必要がある。まあ目安だと思っていただければ幸いだ。

 

カリフォルニア州のパブリックレンジでは、めったに見かけないサプレッサー付ボルトアクションライフル。両隣のレンジから見物人が来た

 

 今回のテストでは、各アモについて;
1.75ヤードから5発の集弾性能
2.同じくサプレッサー装着時と取り外し時の着弾点の変化
3.サプレッサー装着時と取り外し時の音量の変化(動画あり)

 

今回目安として使用したスマートフォンの“Decibel X”アプリ。ちゃんとしたサウンドメーターを手に入れたいところだ

 

Decibel Xは、銃口の右側100cmの位置に置いて測定した。厳密に測定するなら、左右と斜め前方にサウンドメーターを設置する必要がある


 SPR300の撃ち心地はスウィートだ。リコイルは5.56mmよりややきつい程度。サプレッサーを装着していれば、マズルライズはほとんど感じられない。トリガープルはシングルステージで、重さは10回の平均が1.8ポンド(0.8165kg)であった。ボルトのアクションはスムーズだが、1度だけ装弾不良があり、アモがチェンバーに装填できなくなった。マガジンを一旦抜いて対処したが、ポリマーマガジンの食いつきの可能性がある。

 

 それぞれ精度テストの結果は写真を追っていただくとして、テストそのものは少々不本意な結果にとどまった。どうしても精度的に理解不可能な結果が出てしまうのだ。1インチ以下の集弾を見せたFIOCCHI 150grが、突如2インチ以上に散らばってしまうのだ。

 

 

 スコープはきちんと治具を使って固定してあるのでスコープリングの緩みが原因ではない。チェンバーもバレルも10発ごとにクリーニングしている。ここでFIOCCHIのアモをよ~く見てみると、ブレットのシーティング(薬莢への挿入)がボックスごとに微妙に上下しているのがわかった。

 

センター近くのやや散っている5発がFIOCCHI 150gr。左下の5発は220grリロードだ。こちらは1インチ以下にまとまっている。これはサプレッサー装着時

 

 「アモ不良の可能性があるな」とエレンがつぶやいている。ファクトリー弾とはいえ、ロットによってはこういうこともある。ハンドロードのほうが精度を出せるのは、すべてをほぼ均一に作業できるためなのだ。

 

150grのグループ。センター近くのグループがサプレッサー装着時、左下がサプレッサーなしのグループ。散り方がほぼ同じなので、これがこのアモの精度、という判断にもなる。どちらも3発はそれぞれがタッチしている。しかし、75ヤードでこれだけ着弾点が違う

 

 「よし、今度はいくつかの弾頭を揃えてたっぷりリロードしておくから、もう一度テストしよう。1インチ以内に集まっているターゲットもあるのだから、SPR300自体は1MOA以上の精度を持っているのは間違いない。スコープを付け替えて、各パーツももう一度チェックしておくから、リテストということにさせてくれ」

 

 と、オーナーのエレンが言うのだから、こちらに否はない。今度はARプラットフォームの.300 AAC Blackoutも用意してもらって、各種のテストもしてみたいと思う。
 

 

 しかし、サプレッサー使用時における、スーパーソニック弾とサブソニック弾の音量差には驚かされた。Decibel Xで計測した最高騒音値を表にしておく。すでに述べた通りスマートフォンアプリでの計測なので、数値はほとんど目安でしかないので了承されたい。

 

サプレッサーを外して撃つ。スーパーソニックでは168dB以上、サブソニックでも160dBを記録した

 

続きはこちら

 

Photo&Text:Hiro Soga

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2020年1月号に掲載されたものです。

 

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