2023/06/02
【実銃】特殊部隊用コンバットライフルとしてトライアルに挑んだXCR【前編】
Robinson Armament
XCR
ロビンソンアーマメントのXtreme Combat Rifle(XCR)は、SCARプログラムでFNハースタルの後塵を拝した。しかし、その性能が劣っていたわけではない。この銃を実際に手にしてみて、その完成度の高さに驚いた。バトルプルーフが加えられれば、その名の通り、究極のコンバットライフルになるだろう。
特殊部隊用コンバットライフル
USSOCOM(アメリカ特殊作戦コマンド)が2004年に特殊作戦用新型ライフルとして要求したスペックを満たすべく、ベルギーのFNハースタルが開発した製品がSCAR(Special Operations Forces Combat Assault Rifle)だ。
このトライアルを制したFNハースタルは、2009年にSCARの納入を開始し、この銃は一躍コンバットライフルのトップに君臨するようになった。実際にSCARの性能に偽りはなく、間違いなく当時考えられる最高峰のものだったといえる。
操作性は素晴らしいし(気になる点は少なからずあるが)、実際に撃ってみれば、フルオートでの発射サイクルが抑えられているおかげで非常にコントロールしやすい。完璧とはいえないが、よく考えられた傑作といえるものだ。
この時、FN SCARのライバルとなったのが2005年に登場したロビンソン アーマメントのXCRだった。XCRが敗北したのはブランクファイアの時に付けるアタッチメントの提出が遅れたことによる部品調達の遅れが原因だ。またロビンソン アーマメントの規模があまりにも小さく、迅速な量産体制がとれず、価格面でもFNハースタルに太刀打ちできなかったという要素もある。
実際にユタ州ソルトレイクシティにある同社の2004年時点での従業員は、20名に満たないという小規模事業者であった。
FNハースタルのSCARだが、その後、5.56mmのSCAR-Lは調達中止となり、7.62mmのSCAR-Hが継続使用されているが、その数は限定的なまま、現在に至っている。
ロビンソン アーマメントXCRは当時のトライアルに敗れたものの性能的に欠陥があったわけではない。同社では現在もXCRを供給、改良開発も継続され、次世代のコンバットライフルの座を狙い続けているのだ。
XCR
今回、そのXCRに出会った。実際に手にするとコンパクトな印象がある。これは細身なアッパーレシーバーのせいだろう。ストックもアルミ製で、とてもシャープな印象がある。ロアレシーバーがAR15に近いスタイルであるため、全体の印象はAR15にかなり寄っている。このあたりはAR15を使い慣れたユーザーが戸惑うことなく使用できるようにという狙いがあるのだろう。
ハンドガードから飛び出たアジャスターから、これがガスピストン方式であることがわかる。金属製だから細身にできたストックはレシーバー右側面へのフォールディングタイプだ。これによりコンパクトに持ち運びができる。
折りたたむ際にはストックの根本をつかんでちょっと持ち上げてやればよい。ボタンロック式だとそれを押すのに無駄に力が必要だったりするが、これだとストックを握ってやることで力が入りやすい。たたんだ状態のストックは少しテンションがかけられているだけなので、わずかな力でロックを外して伸ばすことができる。
グリップを握る手の指の背を使ってちょっと押し上げてやればロックが解除され、ストックを本来の位置に伸ばせるのだ。
FN FALのようなチャージングハンドルが左側に付く。これは左側のみで右側に移動することはできない。これは一つの割り切りだ。ボルトとチャージングハンドルは一体ではなく別パーツなので射撃時にハンドルが連動して動くことはない。いわゆるノンレシプロケイトタイプだ。SCARは連動して動いてしまう。これが動くと、射撃中に不用意に触って指を痛める事があったり、射撃時に作動不良を起こすきっかけになる。
マグリリースボタンやボルトリリースボタンはアンビ。セレクターは60°で切り替えができる。AR15の90°に比べて素早く切り替えが可能だ。この部分は意見が分かれる部分だが、45°より角度があることで誤作動を防ぎ、確実な操作を可能としている。
マルチキャリバーを謳っているだけあってボルト1つでバレルの交換も可能だ。
テイクダウンレバーがアッパーレシーバーの左側、ストックの前にあり、それを前に押してやればAR-15のように上に開くことができる。何ともシンプルだ。使用しているときに誤ってここを引っかけてテイクダウンしてしまうこともあるのではないか?とちょっと思った。
絶対にないとは言い切れないが、その位置や、形状からレシーバーが開いてしまうほどの力が加わることは故意にやらない限りあり得ないと設計者は考えたのだろう。
アッパーレシーバーを開けて、チャージングハンドルをゆっくり引くとリコイルスプリングとボルトキャリアーが現れる。それを抜き出すと長いガスピストンが現れる。それはまるでAKを分解しているようだ。そうなのだ。このXCRの最大のシステム的な特徴は、このロングガスピストンを使用したガスオペレーションを採用している所にある。
外観上スリムでシンプルなAR15のスタイルを持ちながら、信頼性の高いAKのシステムを持つ。世界を二分する現代のアサルトライフルの、良いとこ取りをしたのがこのXCRなのだ。
Photo&Report:Tomonari SAKURAI
撮影協力:Armurerie FMR Unique
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年4月号に掲載されたものです。
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