2023/04/08
【実銃】警察向けコンプリートライフル「SUPERDUTY GA-15」の魅力【ガイズリー製】
GEISSELE AUTOMATICS
SUPERDUTY
GA-15
AR-15のカスタムトリガーやモジュラーレイルシステムで、その信頼性と高度なフィット&フィニッシュで知れ渡っているのが“ガイズリーオートマティックス”社だ。
そのガイズリーが2018年に自社生産のパーツを使用したAR-15アッパーをリリースし2019年になるとロアフレームも含むコンプリートライフル“SUPERDUTY”を発表する。
今回はガイズリー社が、あるLE(ローエンフォースメント)エージェンシーのために組み上げた“スーパー デューティGA-15 11.5インチバレル”を紹介する。
Geissele Automatics Super Duty GA-15
バレル長……………………… 11.5"
口径…………………………… 5.56×45mm
ロアレシーバー……………… Super Duty Lower Mil-Spec
アッパーレシーバー………… Super Duty M4 Upper
ボルトキャリアグループ ……REBCG(Reliability Enhanced Bolt Carrier Group)
ボルト………………………… Geissele Stressproof Bolt
レイル………………………… 10" SMR MK4 Federal
トリガー……………………… SSA-E
バレル………………………… 11.5"Barrel,CHF,ChromeLined,1-7Twist
ガスシステム………………… Carbine
ガスブロック………………… Super Compact Gas Block
チャージングハンドル……… Airborne Charging Handle
マズルデバイス……………… A2
ロアパーツキット…………… Ultra Duty Lower Parts Kit
バッファー…………………… Mil- Spec 6 Position, 7075-T6
バッファーアセンブリー…… Super 42 w/H3Buffer
GEISSELE AUTOMATICS
ガイズリー社が創業したのは2004年、メカニカルエンジニアであったBill Geissele(ビル・ガイズリー)氏が、自ら参加するナショナルマッチ ハイパワーライフル競技に使用していたM16のトリガーメカニズムの信頼性の低さに失望し、自分でデザインした2ステージトリガーシステムを作り上げたのが始まりだ。この2ステージトリガーというのは、まずトリガーの引き初めに適度なスプリングテンション(ファーストステージ)が2~3mmほどあり、ここからさらに引く(セカンドステージ)とハンマーが落ちるという、2段階トリガーのことである。
この“ハイスピード ナショナルマッチ(HSNM)”と名付けられたトリガーセットは、フルアジャスタブルの2ステージトリガーシステムで、ファーストステージ、セカンドステージのそれぞれの重さ、オーバートラベル、シアーエンゲージメントを自分のみにアジャストすることができる。
この“HSNM”はすぐに評判を呼び、USアーミーのマークスマンチームに採用されるなど、急速にポピュラーになっていく。翌年始まったUSアーミーの“セミオートマティック スナイパーライフル コンペティション(後にM110 SASSとして正式に採用される)ではプロトタイプのトリガーシステムに採用されるなど、“トリガーシステムならガイズリー”という定評が形成されていった。2006年になるとUSSOCOMから、M4とM16用に信頼できるトリガーシステムを作れないか、という依頼が舞い込んでくる。これに応えてガイズリー氏が開発したのが“スーパーセレクトファイア(SSF)”システムだ。このSSFはアジャスタブル機構を持たず、ファーストステージが約3ポンド(1.36kg)、セカンドステージが約1.75ポンド(794g)にセットされており、フルオート時にはシングルステージの6ポンド(2.72kg)になるという画期的かつ信頼性の高いシステムであった。このSSFは翌2007年にスペシャルオペレーションチームで採用され、ガイズリー社はUSミリタリーのコントラクター(正式契約会社)としても成長していく。
次にガイズリー社がリリースしたのが“SSA(スーパーセミオートマティック)”だ。このトリガーシステムは、ノンアジャスタブル2ステージのセミオートマティック専用で、ファーストステージが4.5ポンド(2kg)、セカンドステージが1.5ポンド(680g)に設定されている。この引き始めの方が重いというは意外かもしれないが、ストレス下のコンバットシチュエーションでは、このタイプのトリガープルの方に4つのアドバンテージがあるとされている。
● Safety(セイフティ):シングルステージに比べるとAD(アクシデンタル ディスチャージ:暴発)等に対する安全性が高い。
● Reliability(リライアビリティ):デザイン上に余裕があるため、信頼性が高い。
● Forgiveness(フォギブネス):オペレーターの失敗に対する寛容性が高い。トリガープルにおける細かなミスをしても完全な失敗にならない余裕がある。
● Performance(パフォーマンス):結果として、より高いパフォーマンスが期待できる。
こういった信頼性の高い2ステージトリガーに慣れてしまうと、精密射撃に有利とされるヘアトリガー(極軽いトリガープル)が窮屈に感じてしまうのも事実なのだ。
ガイズリー社は、その後も目的に沿った数種類のトリガーシステムを発表したのち、FN SCARやHK416用など、M4、ARプラットフォーム以外のトリガーセットもリリースしていく。そして2012年になると、画期的ともいえる装着方法を備えた優れたデザインを持つハンドガード“Super Modular Rail”(スーパーモジュラーレイル:SMR)登場させる。このSMR MKIは、当時すでに有名インストラクターであったTravis Haley(トラヴィス・ヘイリー)氏がBravo Company(ブラボーカンパニー:BCM)社とコラボした“Jack Carbine”(ジャックカービン)に採用されるなど、当初から人気を呼ぶシリーズとなって行く。
その後も新たなミリタリーコントラクトを獲得するなど順調な業績を残していったガイズリー社が、USASOC(USアーミースペシャルオペレーションズコマンド)と新たなコントラクトを交わしたというニュースが飛び交ったのは、2018年のことであった。この“URG-I”(アッパーレシーバーグループ インプルーヴド)というコントラクトは興味深いもので、なんと各社とコラボレーションしたM4プラットフォームのアッパーレシーバーのみの納入だったのだ。バレルは、Daniel Defense(ダニエルディフェンス)社製14.5インチ コールドハンマーフォージドのもの、レシーバーとボルトキャリアグループは、コルト社製のミルスペック、そしてガイズリー社製スーパーモジュラーレイル Mk16 13.5インチにエアボーン チャージングハンドルが装備された合作アッパーだったのだ。特筆すべきはそのガスポートの位置で、それまでM4といえばカービンレングス(チャンバーからポートまでの距離が約7インチ)というのが普通だったが、このアッパーではミッドレングス(約9インチ)を採用していたのだ。昨今では、14.5インチバレルにミッドレングスのガスシステムを採用するのは、リコイルがソフトになるうえ、各パーツの寿命も延びる傾向があることから、14インチ以上の銃身長であればミッドレングスを選ぶことが多くなっているが、ミリタリーがミッドレングスを採用したというので、かなりの話題になったのだ。
そして2019年。それまでにもプロトタイプはちらほらと出ていたが、いよいよガイズリー社がほぼすべてのパーツを自社製とした“スーパーデューティ”コンプリートモデルが発表されたのだ。
後編に続く
Photo&Text:Hiro Soga
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2020年8月号に掲載したものです。
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