2024/07/22
スペイン全軍で採用された最初のアサルトライフル「セトメ モデロC 自動小銃」【無可動実銃】
この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。
数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。
発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。
時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。
その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。
ナチス・ドイツの技術遺産
第二次世界大戦中、ドイツでは本格的な突撃銃(アサルトライフル)の開発が進んでいた。終戦までにStG44やStG45が完成し、それらは次世代の自動小銃として、のちに登場する銃器に多大な影響を与えた。
戦後、銃器メーカーは解体され銃器の開発に携わった人材は戦勝国に流出した。その中にStG45を開発したモーゼルのエンジニアも含まれていた。彼らはまずフランスのために働くことになった。フランスではStG45のローラーディレードブローバックアクションを進化させ、様々なインターミディエイトカートリッジを装填できるCEAMモデル50を開発している。
これは財政上の理由でこのプロジェクトを中断され、多くの技術者はスペインのセトメへと転職していく。ここでCEAMモデル50の開発を継続し、セトメ モデロAとモデロBが生まれた。この2機種はスペイン独自の7.62mm口径の弱装弾モデルであったが、より強力な7.62mm×51弾がNATOの標準弾になったことから改良が加えられた。これがセトメ モデロCであり、セトメライフルの完成形となっている。
- 全長:1,015mm
- 口径:7.62mm×51
- 装弾数:20発
- 価格:¥176,000
- 商品番号:【8768】
G3ライフルの兄貴分
セトメライフルは世界3大アサルトライフルに数えられるH&K G3の兄貴分にあたるライフルである。ドイツがFALの国産化をベルギーから拒否されたため、セトメに白羽の矢が立った訳だが、これはスペインにとっても好都合だったようだ。
大戦中は中立を保ちながらも枢軸国側への協力やファシズム体制の維持により連合国側からは冷遇され、軍備については国産化の必要性があった。当初はフルサイズカートリッジからインターミディエイトカートリッジへの移行を想定した設計であったが、世界情勢によりNATO陣営に合わせたフルサイズの7.62mm×51弾への変更は、スペイン単独よりドイツ側の協力があったほうがよかったのであろう。
冷戦の状況下でスペインが本格的に西側陣営に参入できた1960年代にセトメライフルの完成形モデロCが完成した。主な改良点は、リアサイトの変更、軽機関銃の要素を取り入れたバイポッド付きのスチール製ハンドガードからバイポッドをオミットした木製ハンドガードに変更。そして最も重要な改良は7.62mm×51弾を使えるようにチャンバー内に溝を設けたことだ。
スペイン全軍に採用されたのにも関わらずバリエーション展開はなく標準仕様のみ大量生産され、セトメシリーズ中で最も広く使用されたライフルとなった。1980年代には5.56mm×45弾がNATO標準弾となったことでセトメモデロLに置き換えられ、時代遅れになったもののスペイン国内では1990年代初頭まで全軍で使用されるほど信頼性が高く、スペインで最初のアサルトライフルとして成功作だったといえるだろう。
しかし最大の貢献は、失われかけたアイデアを途絶えさせることなく発展させ、G3というバトルライフルの最高傑作にバトンを繋げたことであろう。戦後の複雑な時代に本格的な戦闘経験もなくライフルを開発することは困難であったがスペインはそれをやってのけ、H&Kファミリーに代表される多くの銃器に影響を与えたのである。
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TEXT:IRON SIGHT
この記事は月刊アームズマガジン2024年8月号に掲載されたものです。
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