実銃

2024/04/13

【実銃】ハイエンド1911カスタムの双璧をなすナイトホークの新たなカスタム「Nighthawk Agent 2 Commander」【前編】

 

 Nighthawk  

 Agent 2 Commander 

 

 

 ウイルソンコンバットとナイトホークカスタムが、現在のハイエンド1911カスタムの双璧だ。その一方の雄であるナイトホークカスタムが、新しいカスタムビルダーであるエージェンシーアームズと手を組んでリリースした製品がエージェント2コマンダー。

 現代のコンバットピストルが持つ力強い魅力がこの銃には詰まっている。
 

 


 

ハンガリーのガンコレクター・ヴェンツェ氏

 

 ハンガリーに久しぶりに入国できた6月。新型コロナウイルス感染症の影響で1年以上会っていない友人のヴェンツェ氏に連絡をした。すると、新しい銃を2挺手に入れたから一緒に撃とうという嬉しいお誘いが…。願ってもない提案だ。早速彼を訪問することにした。

 

 ヴェンツェ氏はハンガリーのガンコレクターだ。この国はフランスと同様、一般市民が通常所持できる銃の数に制限がある。センターファイアで12挺が上限だ。それを超える数の銃を持つには、それなりの条件を揃えることが必要になってくる。その一つが保管場所だ。

 

NIGHTHAWK CUSTOM AGENT 2
口径 9mm/.45ACP
全長 199.4mm
全高 147.6mm
全幅 32.77mm
スライド幅 23.37mm
照準線長 146.3mm
重量 1,094g
バレル長 4.25インチ
仕上げスモークセラコート
装弾数 10発
アメリカ国内価格 $4,499

 

 ヴェンツェ氏は自宅に銃を収納保管する特別な部屋を持っている。その部屋の壁は国が定める基準を満たす強度が必要で、なんと分厚いコンクリートに金属の板が挟み込まれているというものだ。この壁をぶち抜くことはかなり難しいだろう。そこまでして彼は銃をコレクションしている。その数は100挺以上。

 コレクターとしてはそれほど多い数ではないかも知れないが、厳しいガンコントロールの元、それを合法的に乗り越えて趣味の世界を満喫しているのだ。

 

スライド前端部にはエージェンシーコッキングセレーションが刻まれ、ダストカバー部にはReconレイルを装備、ダストカバー側面も可能な限り肉抜きされている

 

 さて、そんなヴェンツェ氏が新たに購入したという2挺のうち、ナイトホークカスタムのAgent 2コマンダーを今回採り上げたい。ちなみにもう一挺はSTI製TTI Combat Master John Wick 3だ。こちらはAkita氏が過去に詳しくご紹介しているし、2021年8月号ではその発展型であるTTIオリジナルのSight Block等をご紹介したばかりだ。

 

 おそらくTTIコンバットマスターに関しては、世界一詳しい記事がGun Proで展開されているはずだ。但し、実射ではナイトホークの個性をお伝えできるように、ジョン・ウィック3モデルと比べた実射フィーリングをお伝えできればと思う。

 

マニュアルセイフティレバーとスライドストップレバーは控えに延長され、操作性を高めている

 

トリガー形状はストレートだが、下部がやや前にカーブしたエンハンスドトゥデザインだ。マガジンキャッチもエクステンデッドで形状がちょっと独特だ

 

 

Wilson CombatとNighthawk Custom

 

 1970年代から90年代に掛けて、素晴らしい1911カスタムを作り上げるマスターガンスミスの名が日本でも知れ渡っていた。Jim Boland、Steve Nastoff、Jim Hoagなどだ。その中のひとりにBill Wilsonがいる。

 

 時計職人であった彼は1974年、アーカンソー州ベリービルでSportsman's Headquartersというガンショップを立ち上げ、1977年より1911やリボルバーのカスタムガン供給を始めた。IPSCが始まった翌年だ。これがWilson Combat(ウイルソンコンバット)に発展、その後に自社製パーツだけで組み上げた1911カスタムを作り上げていく。

 

トリガー形状はストレートだが、下部がやや前にカーブしたエンハンスドトゥデザインだ。マガジンキャッチもエクステンデッドで形状がちょっと独特だ


 かつてのマスターガンスミス達は、顧客のオーダーを受けて自身でワンオフのカスタムガンを作って1挺ずつ販売していた。そのため彼らの作品は数が少ない。しかし、ウイルソンコンバットは数多くの熟練ガンスミスを自社で擁し、彼らがチームとなって数多くの製品を供給する体制を作り上げていった。


 そんなウイルソンコンバットで働いていた4人のガンスミスが、自分たちの信じる最高の1911カスタムを作り上げることを目指して2004年に独立した。Nighthawk Custom(ナイトホークカスタム)の創業だ。その中心となったのが、Mark Stoneで、ナイトホークカスタムは、一人のガンスミスが最初から最後まで責任をもって1挺を仕上げる体制をとっている。

 

マズル部は大きくテーパー加工されたクラウンが付く。この加工によってマズルから飛び出したブレットの弾道が安定するらしい

 

 “one gun, one gunsmith” この言葉が、同社の哲学であり、ポリシーだ。

 顧客はナイトホークの用意した製品ラインナップの中から、希望するモデルを選び出し、細かい仕様をオーダーしていく。そして担当となったひとりのガンスミスがパーツをハンドフィットさせていき、組上げた製品を自ら試射し、最終的にそのガンスミスのイニシャルをグリップパネルの下に打刻する。ガンスミスは自身の作り上げた銃に対してすべての責任を持つ。同社の製品はもちろん生涯保証だ。

 

ビーバーテイルグリップセイフティはメモリーパッド付き。おそらくナイトホークカスタムのカーボンタイプをベースにしたものだろう


 現在のナイトホークカスタムは85人の社員を擁する企業に成長した。

 シングルスタックの1911が基本だが、ダブルスタックにアップグレードすることもできる。2011フレームの名称は謳っていないが、デザイン的には2011フレームだ。但し、フレームはスチールでグリップ部はアルミの削り出しとなっており、ポリマーではない。

 

 2016年、ナイトホークカスタムはドイツのKorth(コルス)と提携、ハイエンドリボルバーの分野にも進出した。またレミントン870カスタムも製品化し、タクティカルショットガン市場に向けて供給している。

 

マニュアルセイフティは左側だけのシングルサイドタイプだ。このあたりは好みがわかれるところだ

 

 2021年6月29日、ナイトホークカスタムはイタリアのラグジュアリーセミオートショットガンCosmi(コスミ)のアメリカにおける独占販売権を獲得したことを公表した。コスミはアドリア海に面したアンコーナで19世紀末に操業したショットガンメーカーだ。同社のセミオートショットガンは中折れ式で、ストック内にマガジンを有する独特のデザインを持つ。作動方式はロングリコイルオペレーションだ。

 

チェンバー部分にフルート加工が施されている。もちろん軽量化のためだ

 

 製品のカテゴリーを少しずつ広げているが、もちろんナイトホークカスタムの主力は1911だ。
 2017年のNRAショーで発表された製品がAgent 1で、これはコマンダーサイズの9mmモデルだった。なんとAgency Arms(エージェンシーアームズ)とのコラボレーションだ。エージェンシーアームズは2015年にカリフォルニア州ヴェンチュラで創業したカスタムビルダーで、グロックやSIG P320、FN 509、S&W M&Pなどをベースにした製品を展開している。

 

フレームと一体加工されたマグウェルが装備されている

 

 エージェンシーセレーションと呼ばれる独特なスライドセレーションを施したナイトホークカスタムは大いに注目を集めたが、これは限定50挺というレアな製品であった。
 そして半年後、SHOT SHOW 2018でAgent 2が発表された。今度は限定ではない。5インチバレルのフルサイズと4.25インチバレルのコマンダーサイズの2機種がある。


 Agent 2のスライド前後にはもちろんエージェンシーコッキングセレーションが刻まれ、Agent 1にはなかったライトニングカットが左右に加工されている。そしてフレームのダストカバー部にはRecon Rail(レコンレイル)が装備されているが、その部分も可能な限りの軽量化が施され、スライドのデザインとマッチしている。これによって、従来のナイトホークカスタムとはかなり違った雰囲気に仕上がっているのだ。

 

 

フロントストラップ部とメインスプリングハウジング、そしてグリップセイフティのメモリーパット部には独特なホリゾンタルテクスチャーカット加工がある。これが意外と手に馴染む

 

 Agent 2には、.45口径と9mmが用意されており、ヴェンツェの選んだのはコマンダーモデルの9mm。以前にも書いたように、ヨーロッパで射撃するには9mmの方が断然便利だ。9mm弾なら入手しやすい。

 

 筆者の住むフランスでも、.45口径は店頭在庫になく、注文して入荷待ちしないと手に入らない場合が多い。ハンドロードしようとしても弾頭の在庫がない。弾頭があったら今度は空のケースがないなど、かなり苦労する。9mmならその心配はない。

 

 

フロントサイトとリアサイトはHeinie製だ。フロントは赤のファイバーオプティックが組み込まれ、リアは必要な時に何かにひっかけてスライドを引くことができるリッジタイプとなっている


 これはハンガリーでも同じこと。また.45口径と同じバレルの外径を持ちながら実際には9mmとなっており、ブルバレルのように見えてマズル側から見た迫力がアップする。これは筆者の好みでもある。
 

Photo&Text:Tomonari Sakurai

Special Thanks:GIS Technologies L.t.d.

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年10月号に掲載されたものです

 

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