2024/01/07
【実銃】米陸軍に採用されたサブマシンガンを手掛けたB&Tのカービン「SPC9 SD G」【前編】
B&T
SPC9 SD G
AR15とMP5が持つそれぞれの利点をうまくミックスしたハイブリッドデザインのセミオートマチックピストルキャリバーカービン、それがB&T SPC9だ。アメリカ軍に採用され、成功しつつあるAPC9とは異なるマーケットに向けて2020年にリリースされた。そのサプレッサー仕様で、グロックマガジンを使用するSPC9 SD Gをご紹介したい。
B&T
B&T SPC9 SD G
- 口径 9×19mm
- 全長 692mm/775mm(629mm/709mm)
- 全幅 50mm
- 重量 33連空マガジン+Aimpoint Micro T1装着時2,950g(2,700g)
- バレル長 115mm(230mm)
- マガジン装弾数 10, 15, 17, 19, 24, 31, 33発 グロックマガジンを使用
(カッコ内はSD仕様ではないスタンダードのSPC9 Gのスペック)
スイスにBrugger & Thomet(ブルッガー&トーメ)が設立されたのは、1991年だ。この社名はふたりの創業者の名前からきている。
同社は優れた新型サウンドサプレッサーを製造供給するメーカーだったが、やがてスイスの民間市場向けにH&K MP5を組立供給するビジネスを開始した。当初はトルコのMKEからパーツ供給を受けてMP5を組み立てていたが、その後にドイツのH&Kとの関係を構築し、スイスにおけるH&K代理店としての業務を展開するようになった。
またH&Kにサウンドサプレッサーを供給し始め、その後に規格化されたピカティニーレイルをいち早く装備したハンドガード等も開発、これがH&K以外のメーカーとの業務提携にも発展していく。やがて同社のサウンドサプレッサーは、ヨーロッパの銃器メーカーのほとんどに供給されるようになった。
そんなブルッガー&トーメは、2004年に銃器メーカーへ転身した。オーストリアのシュタイヤーから小型サブマシンガンTMPの製造販売権を買い取り、これに改良を加えたMP9がブルッガー&トーメの最初の銃器だ。
その後は自社開発の銃器を展開し始める。バトルライフル、アサルトライフル、そしてサブマシンガンまでをカバーしたAPC(Advanced Police Carbine)システム、スナイパーライフルのSPR(Special Purpose Rifle)、グレネードランチャーGL06などだ。そして2011年には社名をB&Tに改めた。
B&Tに関して、近年最大のニュースは2019年にアメリカ陸軍がサブマシンガンAPC9K-PROをSCW(Sub Compact Weapons)として導入したことだろう。
アメリカ軍にサブマシンガンが採用されるのは久しくなかったことであり、これはB&Tにとって、大きな意味を持つことだ。当然これから長い間、B&TのサブマシンガンはAPC-9が中心になると思っていた。
ところが2020年、B&Tは新たにSPC9(Special Purpose Carbine 9mm)をリリースした。APC9が成功しつつある中で、新しいモデルを製品化したわけだそんなSPC9を撮影できるという情報が、筆者のもとに飛び込んできた。それもサウンドサプレッサー装着仕様のSDだという。これは興味深い。
B&Tのビジネスは警察をメインに展開されている。
軍よりは一般警察、そして警察所属の対テロ部隊や特殊部隊向けの製品が多い。もちろん軍用市場を無視しているわけではないが、警察の方が時流に合わせた装備を導入することが多い。この半世紀、世界中の警察はその装備としてMP5を採用してきた。
9mm弾薬を使用するサブマシンガンから、5.56mm弾の小型アサルトライフルへ警察の装備が移行する流れではあるが、威力が限定的なサブマシンガンの需要は依然としてある。長く使い続けたMP5を新型に更新する時期に来ている現在、ポストMP5需要に向けて積極的に製品展開しているのがB&Tだ。当然SPC9はそのあたりを狙って開発されたものだろう。
すでにAPC9がある中、新型を登場させたということはAPC9とは違うアドバンテージがある事だろう。これはワクワクする。
Photo&Text:Tomonari SAKURAI
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年11月号に掲載されたものです
※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございますので、ご遠慮いただきますようお願い申し上げます。