2023/08/06
【実銃】現代に蘇った冷戦期の実戦用スナイパーライフル「ハンガリアン ドラグノフ18」
FEG
HD-18
HUNGARIAN DRAGUNOV
ハンガリーの銃器メーカーFEGが復活し、ドラグノフを市販する計画が進行中だ(2020年12月時)。ハンガリーはかつてソ連からドラグノフの製造ライセンスを取得し、製造図面を受け取っていた。だからこれは、単なるクローンではなく、正規図面に基づく本物のドラグノフであることを意味する。
ハンガリアン ドラグノフ18と呼ばれる新型は、現代に蘇った“冷戦期の実戦用スナイパーライフル”といえるだろう。
FEG製ドラグノフ
現在射撃可能なプロトタイプが2挺完成しているのだが、1挺はアメリカへの輸出許可を得るために現地に送られている。ドラグノフはもともとセミオートモデルでありアメリカ市場で販売するのためのハードルはそれほど高くないはずだが、シビリアンモデルということでバッドプレートにラバーを入れるなどして、見た目にもややソフトにしている。
もっともアメリカ側がドラグノフをよく理解しておらず、AKと混同して解釈されている部分もあるらしい。
ドラグノフではボルトの正確な作動のために装備されたパーツも、AKのセミフル切り替えに関わるパーツに位置的にも似ていたことで、それを取り外さなければいけないという指示が来ているという。
またフラッシュハイダーも軍用のままだと輸入できないという指摘があり、形状変更を余儀なくされるそうだ。そんなわけで、完全に軍用と同じデザインとは行かなくなってしまうらしい。
今回撮影させていただいたのは、もう一挺のプロトタイプで射撃も可能なモデルだ。ところが2020年秋冬は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、射撃場の使用ができなかった。ハンガリーの感染者数はフランスなどに比べてそれほど多くはない。
2020年12月4日現在の新規感染者数は6,212人で累積は約25万人だ(日本は同日新規感染者が2,405人で、累積は約15万7千人)。しかし、ハンガリーの人口は約977万人であり(日本の人口は1億2千万人)、日本の1/12でしかないことから見ると、その感染者数は驚くほど多いと言わざるを得ない。
筆者が訪れた11月後半は午後8時から午前5時までの夜間外出制限が行なわれていた。飲食店は終日営業禁止だ。
そんなわけで射撃場も営業しておらず、実際の射撃は次回のお楽しみとなってしまった。ハンガリーではそれでも感染者が増える一方で、12月になると昼間も含めた外出禁止令を発するかもしれないという状況だ。
ハンガリアン ドラグノフ
FEGが世に送り出すドラグノフはその名をHD-18という。Hungarian Dragunov(ハンガリアン ドラグノフ)を略してHDで、18は開発のはじまった2018年から来ている。同時に2018年は、ハンガリーにドラグノフが正式に配備されて30周年という年でもあった。
「なんといってもエイティーンっていう言葉の響きが良いでしょ?」
とも言われた。確かにどんなに意味深い名称でも、聞こえが悪い、発音しにくいのでは馴染みにくいものだ。
このHD-18は基本的にはドラグノフのまま製品化される。装着するスコープもドラグノフのものと同じだ。現時点で違うのは、先に挙げた部分と、リアサイトやスコープの表記がロシア語ではなく英語になっていることだ。またFEGのロゴマークが入ること。それに加えて、ちょっとだけ近代化してM-LOKのスロットが入り、拡張性が増している。
これによってオリジナルのドラグノフの雰囲気を損なうことなく、現代の各種アクセサリーを装着可能となる。
FEGでのソビエト製銃器のライセンス生産は、AKやドラグノフだけでなく、1952年にモシンナガン モデル1944をM44として生産したことから始まっている。同じくモデル91/30もM48として生産された。モシナガンといえばソ連の主力ライフルであったが、その命中精度の高さから狙撃銃としても運用された。
そのモシナガンをベースにした民間用ハンティングライフルはFEGの製品として成功を収めている。
FEGはそういった長い歴史があり、現在でも市場価値がありそうなドラグノフを選んで生産に踏み切った。現代の技術で生産されるHD-18はオリジナルを超える品質になる可能性を持っている。なぜならFEGを訪問し、その社内のモチベーションが非常に高いと感じたからだ。
以前ロシアのIzumash(イズマッシュ)が民間向けにドラグノフの市販バージョンとしてTigr(タイガー)を製品化した。その性能はオリジナルのレベルを維持していたが、その質感はお粗末で、所有欲を掻き立てるものではなかった。それさえも現状、アメリカなど西側で入手不可能な状態だ。
FEGの新たな挑戦、HD-18の成功を見守りたい。
Photo&Text:Tomonari Sakurai
撮影協力:FEG Vedelmi Rendszerek Zrt. Mark SZIVOS、GIS Tactical : http://www.gistactical.com
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年2月号に掲載されたものです
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