2024/01/09
【実銃】米軍で使用されるサブマシンガン「B&T APC9」と「B&T SPC9 SD G」を撃ち比べ【後編】
B&T
SPC9 SD G
AR15とMP5が持つそれぞれの利点をうまくミックスしたハイブリッドデザインのセミオートマチックピストルキャリバーカービン、それがB&T SPC9だ。アメリカ軍に採用され、成功しつつあるAPC9とは異なるマーケットに向けて2020年にリリースされた。そのサプレッサー仕様で、グロックマガジンを使用するSPC9 SD Gをご紹介したい。
今回このSPC9 SD Gと併せてAPC9も一緒に射撃し、サイレンサーを普通に付けての射撃と比べた。設計時期の違いから、その進化ぶりが確認できるだろう。
最初にこれまでに何度も射撃したAPC9を改めて撃ち、その射撃感覚を復習する。APC9のアッパーレシーバーはコストを抑えた設計から、断面でいうと凸の字のようでストレートで飾り気のないもの。構えてしまえばそこは見えなくなるし、そのスタイルは射撃性能には無関係なのだが、ちょっと箱っぽい。
APC9
- 口径 9×19mm
- 全長 378mm/597mm
- 全幅 61mm
- 重量 2,800g(30連空マガジン装着時)
- バレル長 175mm
- マガジン装弾数 10、15、20、25、30発
(写真はサプレッサー装着時だがスペックは非装着状態のもの)
ロアレシーバーはAR15のそれに近く、まったく違和感なく構えることができる。コンパクトに携帯できるように大がかりなバッファはないためストックはフォールディング式だ。コッキングハンドルはボルトのすぐ上にありシューターに近い位置にある。但し、最新のAPC9 PROはコッキングハンドルの位置が少し前に移動し、SPC9と同様になっている。
APC9に脱着式のサプレッサーを付けてストックを伸ばすとSPC9 SD Gとほぼ同じ全長になる。
一方、SPC9はずっと洗練されたデザインに仕上がっている。ストックはAR15系のバッファチューブスタイルで構えやすく、6ポジションのテレスコピックなので、身体に長さを合わせて射撃することが可能だ。
慣れたAR15のチャージングハンドルでの操作は容易。ただし、銃を構えた状態ではMP5のように前方のハンドガードの上部にある方が遙かに扱いやすい。トリガーのフィーリングはやや重めだが、キレがあってサービスガンとしては上級なモノ。
そして肝心のリコイルだ。油圧バッファがしっかり働いて、リコイルがないというほどではないが、セミオートで比較した場合、APC9とは比べものにならないほど撃ちやすい。
残念ながらサブソニック弾が手に入らなかったので通常弾薬で射撃をした。密閉された室内射撃場ではサプレッサーがあるといっても通常弾はかなり大きな銃声になる。射撃時にはイヤマフがあった方が安心だ。
イヤマフをしての射撃ではその消音効果を感じるが、イヤマフを外すとかなり大きな音量だ。映画のように“シュコココ”とはいかない。屋外で撃ってもはっきりと銃声だと判るほどだ。
以前にサブソニック弾を使用してMP5SDを射撃したが、それはかなり“シュコココ”に近かった。したがってSPC9 SDもサブソニック弾を使えば同じレベルになるだろう。とにかくリコイルが確実に抑えられているのが何よりも新鮮だ。そのためストックはフォールディングすることはできないのだが。
APC9とは別の方向に進化したSPC9。その性能もさることながら、なんと言ってもスタイリッシュになったのが一番だ。一目見て「これは撃ってみたい」と思える。そして実際に射撃をして更に真価がよく判った。いずれにしてもこれはAR15とMP5をかけ合わせたハイブリッドモデル、それをさらに発展させている。
アクセサリー分野でも幅広くOEMを展開するB&Tだけあって、あらゆる銃を知り尽くしているからできた銃だ。
SPC9は現在のところ9mmバージョンのみ。しかしAPCのように幅広い口径に対応したモデルへの発展もありうるのではないか? そんな風に期待してしまうのがこのSPC9なのだ。
さて、今回実射で使用した射撃場では動画に力を入れている。興味があればぜひご覧いただければと思う。但し…、すべてフランス語だ。
Photo&Text:Tomonari SAKURAI
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年11月号に掲載されたものです
※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございますので、ご遠慮いただきますようお願い申し上げます。