実銃

2023/08/11

【実銃】軍&法執行機関で活躍するハンドガン「GLOCK Gen5 MOS FS」【前編】

 

GLOCK Gen5
MOS FS
 

 

GLOCK G17 Gen5 MOS FS FERFRANS Fabrication Model(left)、GLOCK G19 Gen5 MOS FS(right)

 

 グロック社は2019年4月、USカスタム&ボーダープロテクション(CBP:アメリカ合衆国税関・国境警備局)が、サービスハンドガンとしてグロックの採用を決めたことを発表した。口径は9×19mmで、各部がモディファイされたG26、G19MOS、そしてニューモデルとなるG47の3機種だ。
 また、2019年8月にはUSシークレットサービスも、これまで20年以上使用してきたSIG P229 .357SIG口径から、CBPと同じG26、G19MOS、G47に変更することを発表した。現在、アメリカ法執行機関では新型グロックの採用が続いているのだ。

 

 


 

グロックの嵐

 

 2016年、FBIはそれまでの.40S&W口径ピストルから、9mm口径のFBI専用モデル“グロック19M”を採用とすることを発表した。私達はこのニュースに驚いたことを強く記憶している。

 あのFBIがここに来てなぜ9mm口径をチョイスしたのか、頭の中は??だらけになってしまった。FBIにはよく知られている事件がある。1986年に起こった“Miami Shootout”(マイアミシュートアウト:マイアミ銃撃戦)だ。

 

 当時FBIエージェントが使用していた9mmや.38スペシャルのストッピングパワー不足が原因で、ふたりの被疑者から反撃を受け、7人ものエージェントが死傷してしまった事件だ。これはFBIにとってトラウマ的な事案となり、以来FBIが採用してきたのは.45ACP、10mmAUTO、.40S&Wといったペネトレーション&ストッピングパワーに優れた口径ばかりとなった。

 

 

 その後FBI採用銃はいくつかの紆余曲折を経て、1998年にグロック22/23 .40S&W口径となり、これは2016年まで続いた。FBIではその後繰り返しあらゆるテストを行なった結果、SPEER社の9×19mm 147gr. G2ゴールドドットJHPなら、.40S&Wや.45ACPよりもいくつかの分野でより高い効果が期待できるという結論に達したのだ。

 

 ゼラチンやその他のテストターゲットへの貫通力/威力テストだけでなく、FBIのG19Mテストガンでは、12万発の連続発射テストにおいてもジャムはなく(消耗部品の交換や、途中のクリーニングは行なっている)、リコイルの軽さ、連射時の精度、弾薬の携帯性の高さ、軽さなど、いくつかの重要な要素を考慮して、9mm口径のグロック採用を決定したのだという。

 

キットに付属するカイデックスホルスター


 このG17M、G19MはFBIのために独自に開発されたとされているが、現行のGen5シリーズはこのMモデルと酷似している。双方に当てはまるGen4からの改良点を列挙してみよう。

 

  • マークスマンバレル
  • フィンガーグルーヴなしのフロントストラップ
  • インテグラル マグウェル
  • アンビ スライドストップ
  • nDLCフィニッシュ
  • スライド前端のリリーフカット
  • 2ピンデザイン(トリガーピンとトリガーハウジングピンの2本。Gen3とGen4は3ピンだった)
  • ニューデザインのマガジンフロアプレート

 

 外観からすると、それほどの変化はないように見えるが、アンビスライドストップを採用しているために、フレーム内部パーツの配置、スプリングの種類/位置/ばね強度などは、多くの部分でデザイン変更が行なわれている。それぞれの改良点をより詳しく述べると、

 

これはファブリケーション以前のG17のものだが、グロックマークスマンバレル(GMB)ライフリングが少し見える。ポリゴナルとコンベンショナルなライフリングが融合したもので、銃口部のクラウンもくっきり入っている

 

バレル

 

 Gen5のマークスマンバレルは新設計で、これまでのポリゴナルライフリングをより進化させた通常のライフリングに近い形状(凸部のコーナーが丸くなっている)を持っている。銃口のクラウンもしっかりと入れられ、グロック社では前モデルよりも精度が上がっているとしている。またバレルラグの形状、位置が変わっているので、前モデルおよび従来の社外品バレルとの互換性は無い。

 

G47
スライドには“DHSCBP”(Depar tment of Homeland Security Customs and Border Protection)の刻印が入っている。グロック社では、G47を一般市場へリリースしない、と表明している

 

グリップ

 

 まず大きな変更点は、フィンガーグルーヴの廃止とフレアードマグウェルだ。Gen2まではフィンガーグルーヴがなかったので、「これは退化だ! 」という人もいるが、指に合わないフィンガーグルーヴなど、ない方が良い。

 

 大きく広がったマグウェルも、使い心地はかなり良い。フロントストラップに入れられた半円の切り欠きは、マガジンのダブルフィードなどのトラブルが発生したとき、抜き難くなったマガジンを指で引っ張り出すためのものだ。このエッジは結構シャープなので、ない方が良いという人もいるようだ。CBPやシークレットサービスが採用したモデルには、この切り欠きはない。


 4面に入ったでこぼこテクスチャーは、見た目よりも荒く、強く握り締めると痛いくらいだ。ヤワな手袋などで握っていると、すぐに擦り切れてしまいそうだ。

 

グロック社によるUS カスタム&ボーダープロテクションに採用されたことを伝えるフライヤー。G47というモデルはこれまで存在していなかった

 

トリガーメカニズム

 

 グロック自慢のセイフアクションの要となるトリガーメカニズムは、いくつかの変更が行なわれている。まずトリガー面が、Gen4のグルーヴ入りからフラットフェイスになった。メカニズムそのものは2015年にリリースされたシングルスタックG43のフルサイズ版といって良さそうだ。

 

 Gen4までのトリガースプリングは、S字コイルで直接トリガーハウジングとトリガーバーをつないでいた。このメカニズムでは、トリガーが前に出ている(撃発準備)状態でスプリングが伸びたままになって、スプリングに負荷が掛かったままになってしまう。それだけ消耗も早く、トリガースプリングはグロックの数少ない弱点とされてきた。


 Gen5では、このスプリングが別体になっており、撃発レディの状態ではスプリングを押し込んだ状態になるので、より耐久性も高くスムーズな動きが期待できるとされている。

 

サファリランドホルスターに問題なく収まる

 

スライド

 

 スライドのフィニッシュは、グロック社が“nDLC”と呼んでいるものだ。手触りはややすべり易い。もしこれが一般的なDLC(ダイアモンド ライク コーティング)と同程度の耐久性を持っているなら、その皮膜はさびにくく傷つきにくいはずだ。これは今後使い込んでいけばわかるだろう。


 スライド内部メカニズムにも手が入れられている。まずファイアリングピンセイフティの形状が四角く、よりスムーズなものになった。これもトリガープルのスムーズ化に貢献しているだろう。またストライカー/ファイアリングピンもデザインチェンジを受け、あの槍先のような形状ではなく、より一般的な形になった。

 

サプレッサーを装着するとその容貌は一変する

 

サプレッサーを装着して実射する。リコイルはマイルドだ

 

 そして冒頭に書いた通り、今年4月には、USカスタム&ボーダープロテクションが、新たにグロックを採用することになったと発表があった。USカスタム&ボーダープロテクションは国土安全保障省の一部門でテロ対策や麻薬密輸への対応も行なう大規模組織だ。口径は9×19mmで、一部がモディファイされたG26、G19MOS、そしてニューモデルとなるG47の3機種を選択している。


 また、この8月にはUSシークレットサービスもこれまで20年以上採用してきたSIG P229 .357SIG口径から、CBPと同じG26、G19MOS、G47を採用する旨発表があった。


 一昨年は、SIG社のP320モデルがM17&M18としてUSミリタリーに採用されたことで話題を呼んだが、ここに来てLE機関を中心に新型グロック採用の嵐が吹き荒れている。
 

サプレッサーを装着してもジャムは一度もなかった。ただし着弾点は弾によって変化し、精度も落ちた

 

続きはこちら

 

Photo&Text:Hiro Soga

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2019年10月号に掲載されたものです

 

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