2023/10/24
人気だったAKクローンを元にした中国初のブルパップライフル「ノリンコ 86S 自動小銃」【無可動実銃】
この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。
数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。
発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。
時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。
その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。
中国初のブルパップライフル
ノリンコ 86Sは中国製の56式をベースに開発されたブルパップライフルである。
新型ブルパップライフルの実験機として開発されたとも言われているが真相はハッキリしていない。ベースとなった56式は80年代のアメリカでは人気のあるAKクローンであり、品質や性能も安定していた。
ブルパップ版のノリンコ 86Sも低価格で良好な品質を持っていたが、発売後まもなくして、アサルト・ウェポン規制法により輸入制限の対象となってしまいアメリカ市場への輸出は早々に終了した。法執行機関向けの市場でも採用はなく、製造はどこかのタイミングで終了したようだ。
ノリンコ 86S 自動小銃
- 全長:657mm
- 口径:7.62mm×30
- 装弾数:20/30発
- 価格:¥330,000
ノリンコの本命は小口径弾に変更した新型ブルパップライフルであり、既存の56式を流用したノリンコ 86Sはあくまでも試作銃と割り切っていたのかもしれない。最終的にノリンコの輸出入部門「チャイナ・スポーツ」がアメリカに輸入したノリンコ 86Sは2,000挺程度といわれており、希少なブルパップライフルとなっている。
強烈なインパクトを与え、そして消えていった銃
ノリンコ 86Sは多くのブルパップライフルの長所を取り入れた銃であることは一目でわかるだろう。 全長が短くなったことでCQBでも邪魔にならず、機関部には大きな変更が加えられていないため、信頼性の高さはオリジナルの56式のままだ。
銃身長はそのままで弾薬は強力な7.62mm弾を発射する。本来ならばこのような魔改造に近いAKはソ連のメーカーが許すとは思えないが、56式はソ連崩壊時にAK-47の生産元が民営化されてからは「中国の独自開発である」と主張しているため独自の改良を自由に行なったのであろう。
各部の追加されたパーツはどこか見たことのあるモノが付けられているので怪しい感じがするが、ノリンコは有名な銃器のコピー品を製造しているだけあって作りがシッカリとしている。
AKの面影を感じさせない先進的なデザインに変身させながらも、機関部をそのままバックストック部に移しただけなので56式と共通の部品も多く、コストも抑えられている。ただし簡易的にブルパップ化させたことからトリガーは前方からワイヤーで引っ張るといった強引な方式が取られ、良好なトリガープルは期待できない。
またブルパップの課題である排莢口のレイアウトも56式のままなので、左手では扱いづらくなっている。
ブルパップ化にあたって適切な技術は用いられなかったが、既存の56式を改良し、実用に耐えられるブルパップライフルに仕上げたことは称賛に価する。長所は80年代のノリンコ製AKは品質が安定していて命中精度も良かったことだ。様々な西側銃器のパーツをコピーした箇所も充分に機能したようで、民間市場を意識した品質への気配りも見える。
56式を採用している第三国などであれば低価格のブルパップライフルとしてノリンコ 86Sが生き残る道があってもよかったような気がするが、現実にはノリンコのカタログからも消えてしまっている。異色のAKとしてインパクトを残したノリンコ 86Sは記憶に残るブルパップライフルであった。
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TEXT:IRON SIGHT
この記事は月刊アームズマガジン2023年11月号に掲載されたものです。
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