2023/09/06
【実銃】ジョン・ウィックの拳銃「TTI 2011 COMBAT MASTER」の魅力を解説!!
ジョン・ウィックの拳銃
2019年10月に日本公開された映画『ジョン・ウィック:パラベラム』。劇中の「ニューヨーク・コンチネンタル」のシーンにおいて、ジョン・ウィックに使い倒されたのが“TTI 2011 コンバットマスター”であり、限定モデルは瞬く間に売り切れるほどの人気であった。今回は現在、オークションでは8,000ドルを超える価格で流通しているモデルを紹介したい。
そのリアルなガンアクションで何かと話題の映画『ジョン・ウィック』シリーズ。筆者も毎回、公開を心待ちにしているシリーズである。友人でもあるタラン・バトラー率いるTTI(タラン・タクティカル・イノベーションズ)のカスタムガンがどしどし登場し、キアヌ・リーブス氏演ずるジョン・ウィックがタラン仕込みの血湧き肉躍る本格的なガンアクションを、これでもかと見せつけてくれる。
私にとっての憧れのハンドガンであるが、未だに手に入れられない。問題は、カリフォルニア州のガンコントロールとその価格で、合法的にこれらのガンを所有するには、カリフォルニア合法の2011のフレームを持つハンドガンを入手し(これだけでも2,000~3,000ドル)、TTIに持ち込んでフルカスタマイズしてもらう(さらに2,000ドル以上…)という方法しかない。到底、手が出ない額なのは言うまでもない。
そんなある日、友人のポリスオフィサーから「コンバットマスターが定価で売りに出ていたので、手に入れた。見てみたいかい?」という驚愕のオファーが入ってきたのだ。その知らせに当然のごとく拝み倒して撮影をさせてもらうことにした。というわけで、今回はこの銃をレポートする。
TTI 2011 COMBAT MASTER
- 全長:9.06インチ
- 高さ:5.55インチ
- 重量:36.8oz(約1,043g)
- キャリバー:9mm×19
- フレーム:カーボンスチール2011タクティカルレールフレーム
- グリップ:2011DVC フルレングス
- バレル:5.4インチ・マッチグレイド・ブルバレル・ブロンズDLCフィニッシュ
- リコイルシステム:Dawson Toolless ガイドロッド
- トリガー:STIロングカーブ・トリガー2.0~2.5lb トリガープル
この銃を撮影用に借りてきて、まず驚いてしまったのは、どこにも手抜きがないそのカスタマイズ度である。スライドとフレーム間のガタは一切ない。バレル/スライドのフィッティングも完璧だ。完璧すぎて心配になってしまうほどだ。以前、某セミカスタム1911を手に入れた際「最低でも1,500発はブレイクイン(慣らし作動)をさせてください。初めは各部のフィットがタイトなので、ジャムが起きることがあります」という注意書きがあった。確かにそれはフィッティングなどというものではなく、スライドを引くだけで「ふんっ!」と気合を入れる必要があるほどタイトだったのだ。
それに比べて、このTTI 2011は、スライドを引くとバレルとスライドのロックアップが解除される際の抵抗がほんの少し感じられた後、意外な軽さとスムーズさでスライドを後退させることができる。まだ1発も撃ってない状態でこれなので、従来のカスタムとは隔世の感がある。とにかくスムーズな上に、そのトリガープルは圧巻で、重さそのものは2ポンドほどと軽すぎるくらいだが、その節度は素晴らしく抜群のコントロールが可能なのだ。
見れば見るほど分かるが、オペレーターの手が触れる場所は、スライドの前後セレーション以外はすべてのエッジがことごとくスムーズなのだ。これこそカスタムガンだろう。以前タランが言っていた。
「手に入れた状態で100%ファンクショナル(機能的)でなければ、優れたガンとはいえない。トリガーやマガジンのチューン(2011ファクトリーモデルはマガジンのチューンが必要不可欠だった)、グリップ周りのチェッカーやスティップリングが必要なガンは、完成品でなく素材でしかない。そんなガンを売っているメーカーは詐欺みたいなもんだ」
痛烈ではあるが、同感である。
実射
何はともあれコレクターズアイテムである。万全を期して、慎重かつ繊細に実射をすることになった。
まずは精度テストだ。用意したアモは、レンジアモ(いわゆる練習用)であるSpeer 124グレインとポリスのデューティアモとして採用されているFederal 147グレインHSTの2種類である。今回の距離は、TTIに敬意を表して25ヤード(約23m)から5発とした。いつものように5発のうち一番遠い1発を人的フライヤーとしてカウントせず、残り4発のグルーピングを計測した。結果としては、Speer 124グレインが1.5インチ(約38mm)、Federal 47グレインの方は1.25インチ(約32mm)と健闘した。さすがである。25ヤードヘッドショットが楽勝なのだ。
スタンディングから両手保持での射撃は、もうスウィートというしかない。スチールフレームに5.4インチブルバレル、ほとんどフルダストカバーという仕様はシャープな9mmのリコイルをウルトラマイルドにしてくれる。実射テストをしてくれた私の息子は、ストライカー方式のハンドガンしか撃ったことのなかったため、シングルアクションの撃ちやすさに驚いていた。それほどに撃ちやすい銃なのだ。個人的な好みを言わせてもらえれば、バレル長は4.5インチほどにしてもらいたいところではある。ホルスターからドロウして撃つことを考えると、ややフロントヘビー感があるからだ。
今回久しぶりにシングルアクション/スチールフレームのハンドガンを撃ったわけだが、この撃ちやすさには目からウロコだった。やはり4.5インチバレルにグリップをもう少し短くして15連マガジンのキャリーガン。思わず夢想してしまったが、2011プラットフォームをカリフォルニアでということになると、やはり最低でも4,000ドルコースとなってしまう。RDS(レッドドットサイト)とスライドの加工で1,000ドルはかかるので、都合5,000ドル。無理だな、こりゃ。
Text & Photos:Hiro Soga
※この記事は月刊アームズマガジン2020年10月号に掲載されたものです。
『ジョン・ウィック』シリーズ最新作を観る前の方にオススメ!!
月刊ガンプロフェッショナルズ 2023年10月号
キアヌ・リーブス演じる伝説の殺し屋ジョン・ウィックの最終決戦が描かれる第4作目『ジョン・ウィック:コンセクエンス』が、いよいよ9月22日に日本でも公開される。この映画でジョンは様々な銃を使いながら戦いを進めていくが、今月号のガンプロフェッショナルズではメインとなる3機種について、デザインを手がけたタラン・バトラーのインタビューを交えながら詳しくご紹介している。登場銃について知ることができるので、上映前にぜひご一読いただきたい。
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