2023/08/19
【実銃】Glock 42とほぼ同時期に発売された「Colt XSP」両者を徹底比較【グロック42 Part3】
パンデミックで人気沸騰! .380口径のベイビーグロック
GLOCK 42
.380ACPのサブコンパクトであるG42、そしてちょっと大きいだけで9mmパラが撃てるG43。それならG42に存在意義はほとんどないと思うかもしれない。しかしG42にはG43とは違う良さがある。だから大人気で品薄だ。コルトのサブコンパクトである.380マスタングXSPと比べながら、その魅力の一端をお伝えしたい。
グロックは常々、腰が重い会社で有名だ。儲かりまくってそれこそ開発資金の留保は潤沢にあるはずなのに、ひどくマイペース。ところが、裏では当然、計算してやってるに違いない。流れを追うのではなく、流れを引き寄せることを考えている。
もっとも、このサイズに落ち着いたのは、あくまでもグロックらしさを失いたくないメーカーの思惑もあったのは確かだろう。コレ以上はカタチを崩したくない、グロックテイストを損なうのは避けたいと。
やっぱりさすがだ、脱帽だ。ただしグロックのこの着眼点は、現実生活の中で護身銃を実際に撃たなきゃならないシチュエーションが昔に比べて増えていることの裏返しかもと考えると、殺伐としてくる。
形式的な範疇にとどまらず、撃ち心地とヒット率をリアルに重視せざるを得ない時代の到来。その証なのだとすれば少々考え込んでしまう。
まあどっちにしても、一昔前ならこんな激しい銃はご家族の初心者には絶対渡せなかったけどね。グロックという銃は、シンプル構造ゆえに訓練自体は簡単かもだが、それ以前に、どれだけ銃に慣れているか、経験を積んでいるかが問われる銃だと思う。絶対に素人向きとは言えないだろう。
やっぱり例の指セイフティの件が引っ掛かる。自分は、この指セイフティに込められたガストン・グロックの鉄砲哲学に対しては未だに懐疑的だ。弾をチャンバーへ装填したら最後、単なる発砲マシーンと化すのだから怖いったらない。
確かに、マニュアルセイフティにこだわるのは古い考え方かもしれない。マニュアルセイフティこそがヒューマンエラーの元凶で、やはりシンプルがベストなのかもしれない。取り分け初心者にはその傾向が強いのかもしれないが、まだ割り切れていない。せめてグリップセイフティがあれば最善最良の助けだろうけど、まさか今更グロックがそれをやるわけは無かろうしね。
ともあれ、銃を携帯する行為は、イージーに考えるべきではない。ギリギリの覚悟を持つ必要があると自分は思う。覚悟を決められない自分は、未だにキャリーできないでいるのだが、有力な候補に、このG42は入りそうだ。あとは自分自身を信じ切れるかどうかがカギですね。
以上、それでは実射のその前に、本文とは別に、写真ではコルトのマスタングXSPとの比較を展開した。ほぼ同時期(XSPは2013年)に発売された両機種。片や伝統のグロックの小型化、そして他方は伝統の金属マスタングのポリマー化だ。二挺を比べれば、両社のポリマー銃および.380護身銃に対する考え方の違いが如実に判る。
ストライカー対ハンマー、指セイフティ対マニュアルセイフティ、基本的なサイズ設定…すべてが違う。
コレは以前も述べたが、グロックの誕生が凄かったのは、ポリマーフレームもさることながらストライカーという非主流の撃発方式を前面に押し出したことにある。コルトもその辺は分かっているだろうが、技術力の無さと伝統頼みの悪癖から、XSPのような金属マスタングの単なる低コストの樹脂化モデル(一応フロントサイトのダブテイル化とサムセイフティのアンビ化は加えたが)でお茶を濁し続けた。
おまけにXSPは、発売価格がG42の480ドルより150ドル以上高かった(649ドル)。高めに売って早めに元を取ろうとする態度が見え見えだ。G42はヘタなアクセサリーレイルなども付けず、媚びない姿勢も潔かった。
XSPの利点を挙げるとすれば、マガジンが総金属製だから小型にでき、結果全体を小さく造れたことか。この点、マガジンの素材までポリマーにこだわるグロックは限界がある。が、前述のようにG42は、操作性と撃ちやすさに注視し、むやみな小型化競争からは距離を置くスタンスだった。方向性がまるで違う。ハッキリ言って、両者の間にはどうにも超えられない深い深~い溝がある。
二挺を観れば、コルトがCZに買われちゃうのも分かる気がするよね。
Photo&Text:Gun Professionals サウスカロライナ支局
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年7月号に掲載されたものです
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