2023/08/04
【実銃】かつてAKをライセンス生産していたハンガリーの銃器メーカー「FEG」
FEG
HD-18
HUNGARIAN DRAGUNOV
ハンガリーの銃器メーカーFEGが復活し、ドラグノフを市販する計画が進行中だ(2020年12月時)。ハンガリーはかつてソ連からドラグノフの製造ライセンスを取得し、製造図面を受け取っていた。だからこれは、単なるクローンではなく、正規図面に基づく本物のドラグノフであることを意味する。
ハンガリアン ドラグノフ18と呼ばれる新型は、現代に蘇った“冷戦期の実戦用スナイパーライフル”といえるだろう。
~ FEG ~
ハンガリーの銃器メーカーFEG。発音はハンガリー語でフィグに近い。FEGはFegyver- es Gepgyar(フェジヴェル・イッシュ・ゲープヤール)の略で“武器と機械工場”を意味する。創業は1891年なので、なんと130年の歴史があるメーカーだ。20世紀初めから第二次大戦が始まるまで、Rudolf Frommer(ルドルフ・フロンマー)の開発したピストルで成功を収めている。
フロンマーピストルについては、床井雅美さんが月刊ガンプロフェッショナルズ2020年11月号で詳しく解説されているので、そちらをご覧いただきたいが、ルドルフ・フロンマーの開発したロングリコイルシステムは、ハンガリーの銃器に見られる一つの特徴となっている。
ロングリコイルオペレーションシステムは、現在主流となっているショートリコイルとは異なり、リコイルでバレルが動く距離が長いことが特徴だ。フロンマーのロングリコイルオペレーションピストルは、初弾装填のためにスライドを引いた時はスライド部分しか後退しない。
しかし射撃時にはバレルとスライドが一緒に大きく後退し、後退しきったところで(正確にはそのちょっと手前だが)、バレルだけ先に前方に戻っていく。その時に排莢され、スライドが前進するときに次弾の装填が行なわれるという仕組みだ。ショートリコイルに比べ、バレルという重い物体が前後に大きく動くので後方へのエネルギーが分散され、リコイルが和らぐのだ。
ピストルだとわかりにくいかもしれないが、現代のハンガリーで生産されるブルパップライフルであるSEROインターナショナルのGM6 LYNXは、巨大な.50BMGを撃つライフルなのにそのバレルが射撃毎にガシャコンと大きく前後動する。そのため、立射でも連射できるのだ。
GM6 LYNXもハンガリーの銃が持つひとつの伝統を受け継いだといえよう。この銃の詳細については本誌2019年9月号をご覧頂きたい。
戦後のハンガリーはソビエトの衛星国となり、同国の銃器生産は、1960年にカラシニコフライフルのライセンスモデルであるAK-55から始まった。1963年にAKM-63に切り替わったが、内部構造は基本的にAKMと同じだ。しかし、AKM-63はハンドガードを排し、レシーバー後方にある通常のピストルグリップと同じものをフォアグリップとして前後逆に装着している。
このバリエーションで、ショートバレルとメタルチューブ状のフォールディングストックを装着したモデルがAMD-65だ。このAMD-65ベースに、ライフルグレネードの使用を考慮したAMP-69を開発したのもFEGで、これはストック内にショックアブソーバーを設けて、ライフルグレネード発射時のリコイルを緩和させている。
しかし、フォアグリップが破損しやすいことから、1978年にソ連のAKMと似たハンドガードを持ち、フォアグリップを排したAK-63が採用された。ハンガリー軍ではこれをAMMと呼称し、近年まで主力ライフルとして使用し続けた。
これらの軍用ライフルの他、FEGは様々なピストルも製造してきた。但し、戦前のような独自デザインではなく、FNハイパワーやワルサーPPのコピーばかりとなっている。それでも自国警察などが採用するなどしてFEGはハンガリーの銃器メーカーとして活動を続けた。その時代の製品は2017年8月号でご紹介している。
FEGは銃の生産のみならず、暖房機器メーカーとしても実績を積んでおり、むしろそちらの方が有名かもしれない。
共産党政権が崩壊し、民営化されたFEGだったが、2004年に銃器生産部門は破綻、銃器の生産から撤退してしまった。その後、2010年にはFEGの存続が危うくなり、MPFインダストリーグループによって買収されている。現在のFEGは中欧の大手空調メーカーとして知られる存在だ。
そんなFEGが現在、民間の銃器メーカーとして息を吹き返そうとしている。ハンガリー軍用ライフルの近代化に食い込もうというわけだ。しかし軍はCZのBREN2を採用、それもハンガリー政府が実質オーナーのCZハンガリーによって国内での生産というやり方をとった。このCZハンガリーでは現在AR15やAlpineからライセンスを取得してスナイパーライフルも製造を始めており、軍で使用する小火器は完全に国によって仕切られるというわけだ。
新生FEGは軍によって採用されるチャンスを完全に失った。生き残る道は、他国の軍や法執行機関に採用されるか、民間市場しかない。
そんなFEGは、冷戦時に取得したAKやドラグノフの製造ライセンスを活かすことに方向転換したのだ。ロシアによる2014年のクリミア侵攻により、西側諸国はロシアからの武器輸入を制限している。これをチャンスと捉え、ロシアに代わってアメリカ市場に食い込もうというわけだ。
しかしAKはすでにルーマニア製やセルビア製などの低価格を武器にしたコピー製品が市場に溢れており、これからの市場参入は難しいと判断した。しかし、ドラグノフに関しては、その製造ライセンスをかつてのソ連から受けた国は少なく、ハンガリーのFEGはそれを持っている。
現在市場で人気のあるドラグノフは、AKをベースにそれっぽい形にしたレプリカが多数出回っているが、ドラグノフはAKとは別のライフルだ。FEGはドラグノフを生産し、アメリカを中心とした民間マーケットに食い込もうとしている。
Photo&Text:Tomonari Sakurai
撮影協力:FEG Vedelmi Rendszerek Zrt. Mark SZIVOS、GIS Tactical : http://www.gistactical.com
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年2月号に掲載されたものです
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