ミリタリー

2023/07/09

【総火演】圧巻の空中機動と機動師団主力による作戦展開 2023富士総合火力演習 後段演習レポート!【後編】【自衛隊】

 

防衛(まも)るのは「陸上」だけではない。

 

 陸上自衛隊が誇る火砲、戦車、誘導弾など各種装備が集結し、陸自の火力戦闘様相(実弾を用いた戦闘の様子)を展示する国内最大規模の実弾演習「富士総合火力演習(総火演)」が、今年も静岡県の東富士演習場で開催された。

 

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激しい機動の最中、いわゆる「スラローム射撃」を行なう10式戦車。優れた射撃統制装置(FCS)や砲安定装置(スタビライザー)などを備えたことにより実現した、10式の特徴の1つだ

 


 

後段演習

 

「演習シナリオは、統合による対艦戦闘及び地上部隊による敵の着上陸侵攻阻止、水陸両用・空挺作戦による撃破条件の作為から増援部隊による敵の撃破までを予定しております。
 シナリオ展示においては、海・空自衛隊と連携した情報活動、遠距離かつ早期からの打撃等、進化する戦い方を含めた現代戦の様相をご覧ください」

 

(陸上自衛隊 令和5年度富士総合火力演習 説明欄より抜粋)

 

 

 後段演習は現代の領域横断作戦を想定したシナリオに沿って実弾射撃の展示が行なわれた。この後編では、即応機動連隊を中心とする着上陸侵攻阻止、水陸機動団による空中機動、そして機動師団主力による敵上陸部隊撃破を目的とした火力戦闘の模様をお伝えする。

 

 

空中機動による要点の確保

 

 水陸機動団は上陸部隊による上陸の後、対戦車ヘリコプターによる支援の下、各種輸送ヘリおよびV-22により普通科部隊の空中機動を行ない海岸堡内の要点を確保する。

 ヘリからはファストロープとラペリング(リペリング)、両方の降下方法が実演され、展開速度の違いも実感できた。

 

先遣部隊となる情報小隊を載せ砂煙を立てながらホバリングをするCH-47JA チヌーク。後部ハッチを開け、ファストロープ降下を行なう準備をしている。ラペリング降下と比較すると、迅速に展開できるのが特徴だ

 

 

UH-1Jからラペリング降下する情報小隊の隊員たち。実際にライブ映像を見てもらうと展開速度の違いがわかりやすい

 

V-22オスプレイが垂直離着陸モードで着陸。空中機動部隊主力の普通科部隊を降着させる。コールサイン(呼出符号)は「ヴィーナス」で、従来のヘリコプターよりもスピード、航続距離の面で優れており、島嶼防衛に優れた能力を発揮する

 

機動師団の展開

 

 海岸堡の要点が確保された後、反撃のため機動師団が投入される。

 迅速な展開を支援するべく、先行した部隊が敵上陸部隊に対して火力を集中。さらにドローンや偵察オートによって敵情が収集される。さらに、機動師団主力の前進に先立ち、敵が敷設した対戦車地雷を処理し、戦車用通路の啓開を行なう

 

NEWS(ネットワーク電子戦システム)の車輌。敵部隊が発する電波を捉えて目標位置を標定したり、敵のレーダーや通信の妨害を実施して敵部隊の行動を妨げる(キルチェーンの分断)など、電磁波領域作戦においての活躍が期待されている新装備のひとつだ

 

第3偵察戦闘大隊所属の87式偵察機動車(87RCV)が主力部隊展開の先遣隊として威力偵察を行なう。16MCVと共同して25mm機関砲で不意急襲射撃を行ない、スカイレンジャーUAVも活用しつつ敵側の反応から敵の位置や規模を探る

 

87RCVとともに偵察を行なう偵察用オートバイ。上記の偵察車輌よりも小回りが利き、機動性や隠密性の点で優れることから適材適所で用いられる

 

ここで遂に74式戦車(74TK)が登場。長らく日本の主力戦車であり続け、まもなく引退することになるので、花道が用意されたのだろう。89式装甲戦闘車(89FV)を伴うこの増強戦車中隊は、障害処理を実施する施設科部隊を支援すべく、敵機甲車輌の撃破に努める

 

会場周辺の陣地から、特科火砲や各種誘導弾による火力支援が行なわれた。写真は新型の19式装輪自走155mm榴弾砲(19WSPH)
(写真:陸上自衛隊 令和5年度富士総合火力演習 ライブ配信より)

 

92式地雷原処理車(MBRS)から発射される92式地雷原処理用ロケット弾。ロケットによって爆索を展張して敵部隊が敷設した地雷を誘爆させて処理。機動師団主力の戦車用通路を開設する

 

機動師団主力による敵上陸部隊の撃破

 

70式地雷原爆破装置(70MC)が開設した人員用通路に進出した施設小隊が、集団装薬を使用して戦車用通路に拡幅。これによって、戦車を中心とした部隊主力の前進を容易にする

 

 

突撃支援射撃を受けながら90式戦車(90TK)と89FVで編成された戦車中隊が敵部隊撃破を図り突撃する

 

突撃支援射撃を行なう74式戦車。轟音を轟かせ、迫力のある射撃を見せてくれた

 

戦車中隊の突撃成功を受け、重心目標を攻撃するために10式戦車小隊を先頭に、普通科部隊を載せたFV小隊が前進する

 

 

最後に毎年恒例となる発煙弾が発射され、状況終了が告げられた

 

~状況終わり~

 

 今年の総火演ではUH-2やV-22による空中機動、20式5.56mm小銃や19式装輪自走155mm榴弾砲による射撃、ドローンによる偵察など新たな装備の活躍が見られた一方で、採用から50年近くを経て退役が迫っている74式戦車の迫力ある射撃が目を引いた。

 台湾・尖閣有事に備え抑止力強化を図るべく、南西諸島防衛に重点をシフトしてきた自衛隊。今年の総火演は、島嶼防衛における領域横断作戦を想定したシナリオに加え、即応機動連隊や機動師団といった新編の部隊による戦い方が実演されるなど、非常に見ごたえのある内容となった。

 

 

Photo:出雲

取材協力:防衛省陸上幕僚監部広報室

 

 


 月刊アームズマガジン2023年8月号でも総火演の取材レポートを掲載!

 本誌でしか見られない美麗かつ迫力満点の写真と詳細なレポートも特集しておりますのでぜひとも手に取ってお楽しみください!

 

 

 

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