ミリタリー

2023/07/07

【総火演】リアルな離島防衛を描いた実弾演習 2023富士総合火力演習 後段演習レポート!【前編】【自衛隊】

 

防衛まもるのは「陸上」だけではない。

 

 陸上自衛隊が誇る火砲、戦車、誘導弾など各種装備が集結し、陸自の火力戦闘様相(実弾を用いた戦闘の様子)を展示する国内最大規模の実弾演習「富士総合火力演習(総火演)」が、今年も静岡県の東富士演習場で開催された。

 

 前段演習レポートはこちら

 

 

 一般公開は昨今の情勢を鑑み、ここ数年はライブ配信のみとなっているが、本誌取材班は5月27日(土)の総火演本番を取材できたので、その模様を写真でお伝えする。
 今年度は新編されたばかりの16式機動戦闘車を装備する第3偵察戦闘大隊や第15即応機動連隊などに加え、間もなくの退役も噂されるベテラン74式戦車を装備する第10戦車大隊などが参加。後段演習は現代の領域横断作戦下(従来の陸海空領域と、宇宙、サイバー、電磁波など新領域の能力を組み合わせて作戦時の優勢確保に努めていること)の島嶼侵攻対処を想定したシナリオに沿って展開され、陸海空自衛隊の統合運用要素をさらに強調。また、各種ドローンやAIの活用なども盛り込まれるなど、日本を取り巻く安全保障環境の緊迫化、複雑化に対応すべく、よりリアルな状況を想定していることが実感された。

 


 

後段演習

 

「演習シナリオは、統合による対艦戦闘及び地上部隊による敵の着上陸侵攻阻止、水陸両用・空挺作戦による撃破条件の作為から増援部隊による敵の撃破までを予定しております。
 シナリオ展示においては、海・空自衛隊と連携した情報活動、遠距離かつ早期からの打撃等、進化する戦い方を含めた現代戦の様相をご覧ください」

 

(陸上自衛隊 令和5年度富士総合火力演習 説明欄より抜粋)

 

 

 後段演習は現代の領域横断作戦を想定したシナリオに沿って実弾射撃の展示が行なわれた。まず陸・海・空の統合運用により島嶼に接近する艦船に対し対艦戦闘が、続いて即応機動連隊を基幹(中心)とした各種戦力による着上陸阻止などが行なわれた。

 

あらゆる手段による情報収集

 

 監視衛星、レーダーサイト、各種航空機により日本周辺海域を航行する敵船団、およびび航空機の活動を警戒監視。会場では航空機や偵察部隊による展示が見られた。

 

海上自衛隊の哨戒機 P-1が展開する敵艦船の情報収集を行なう

 

即応機動連隊主力の展開に先立ち、情報小隊の偵察オートが空中機動により先行し偵察を開始。彼らを運んできたのは、新たに導入された多用途ヘリコプターUH-2だ

 

UH-2は2022年から配備が始まり、今回初めて総火演に姿を現した。一見従来のUH-1Jと似ているが、エンジンは双発でローターは4枚となり、アヴィオニクスも飛行性能も進化を遂げている。UH-2について詳しくはこちらの記事を参照いただきたい

 

即応機動連隊の展開

 

 哨戒機や各種ドローン、偵察部隊によって情報を集め、敵の規模や位置を確認したところで、次は即応機動連隊の展開が始まる。    

 道路だけでなく鉄道、航空、船舶と、民間も含むあらゆる輸送手段を用いて島嶼部に対して迅速に展開。着上陸阻止の準備を行なう。

 

即応機動連隊主力の普通科部隊は、現地の植生に溶け込めるよう入念にカモフラージュされた96式装輪装甲車(96WAPC)で展開。​多くの車輌が偽装されており、アナウンスでは所属部隊が明かされることはなかった

 

こちらの16式機動戦闘車(16MCV)は車体正面の偽装の隙間から、かろうじて第15即応機動連隊所属車であることが見て取れた。16MCVは高い路上機動性と74式戦車と同等の火力を有するため、即応機動連隊や偵察戦闘大隊の切り札的な装備となっている

 

即応機動連隊の防空を担うべく、機動師団から先遣された11式短距離地対空誘導弾(短SAM)が随伴する

 

徹底的に偽装が施された96式装輪装甲車(WAPC)。後部ランプドアから普通科隊員が展開

 

陸上自衛隊に配備が進むUAVスカイレンジャーによる偵察活動も常時行なわれていた

 

敵上陸用舟艇を想定した標的に対し、主砲の52口径105mmライフル砲を射撃する16式機動戦闘車。射撃の衝撃で偽装の葉が飛散しているのがわかる

 

上陸用舟艇に対して射撃を行なう中距離多目的誘導弾(中多:ちゅうた)。高機動車に搭載された自己完結型のシステムで、本演習では数回射撃を実施していた

 

前方に進出し、海自護衛艦の艦砲射撃やF-2戦闘機の対地攻撃を誘導していた火力誘導班。マルチカムのチェストリグを着用しミステリーランチ製と思われるバックパックを背負っているのが目を引いた

 

水陸両用作戦の開始

 

 敵部隊の上陸が確認されたため、即応機動連隊は敵の進行を阻止すべく防御戦闘に移行。

 そして機動師団主力による反撃のための要点を確保するべく第1空挺団による空挺作戦を実施。そして水陸機動団を中心とする水陸両用作戦が開始された。

 

海岸に展開した対空火器に対する艦砲射撃。会場ではそれを想定した映像が流された
(写真:海上自衛隊)

 

艦砲により敵対空火器等を叩いた後、航空自衛隊 F-2戦闘機2機が敵指揮所に対し攻撃を行なう。会場上空に飛来したものの層雲があり一瞬しか目視できなかった。今回は地上の火力誘導班の誘導に従い、Mk82訓練弾を実際に投下して目標に弾着させた

 

中央の広場を海岸に見立て、車体前方の波切板を展開して上陸時の動きを実演する水陸機動団戦闘上陸大隊のAAV7。上陸前に煙幕を展開し、部隊を煙覆(えんぷく)して敵の照準を妨げるところまで再現されていた

 

空中機動により水陸機動団の普通科部隊が降着する前に、敵上陸部隊に対し20mm機関砲で制圧射撃を行なう対戦車ヘリコプターAH-1S

 

Photo:出雲

取材協力:防衛省陸上幕僚監部広報室

 

 


 月刊アームズマガジン2023年8月号でも総火演の取材レポートを掲載!

 本誌でしか見られない美麗かつ迫力満点の写真と詳細なレポートも特集しておりますのでぜひとも手に取ってお楽しみください!

 

 

 

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