2023/06/25
【実銃】ポリスオフィサーが語る!! M4系ライフルが優秀な理由
COLT M16A2 COMMANDOと聞けば、我々オヤジ世代は、“コルト・コマンド”、“XM177”、“CAR-15”などの名前が頭によぎるが、正確に言うとこれらの名称は、1960年代にサブマシンガンとして開発されたM16ライフルのショートバレル(10インチと11.5インチが存在する)バージョンを指す。
今回は、これらミリタリーバージョンではなく、ローエンフォースメント(LE:ポリスやFBIなどの法執行機関)で、SWATなどエリートスクワッドで制式採用されている“コルト・コマンド”、“M4”そして比較用のシビリアン(民生用)“AR-15”に注目し、その魅力を解説する。
重要文化財級の“コルト・コマンド”
とあるシューティング日和の一日、筆者の住む米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊の地元警察 “ARCADIA PD”に所属するSWATチームの訓練風景を撮影させてもらえる光栄に浴することができた。このアーケディア市というのは、ロサンゼルス郊外に位置する富裕層が多い地域で、大きなショッピングモールや、ダービーで全米的に有名な競走馬のレース場が存在することもあって、PDでは本格的なSWATチームを所有している。
この訓練で驚いたのは、チームリーダーで、筆者の友人でもあるジェイソン・デイヴィスが、COLTのM16 A2 Commando(11.5インチバレル、フルオートセレクター付)モデルを使用、さらに同じスナイパーチームの2人は、M4 CARBINEと刻印されたLEモデルを使用していたことだ。ジェイソンのM16A2コマンドは、重要文化財の称号をささげたいほどのモデルである。
「ああ、これは私がファイアアームズ(銃火器)インストラクターに就任した際に、コルトから贈られたものだ。当時(1997年)起こった、ノースハリウッドの銀行強盗事件を受けて、パトロールライフルの運用が本格化していた頃だね。私はフルオート射撃の認定テストを受けて、スペシャルユニットのライフル運用に関するテストを始めた、はしりのインストラクターだと思う」
「当時のコルトはまだ意気盛んでね。LEオフィサーにも積極的にライフルやハンドガンをプロモートしていたので、このPDでもM4(14.5インチバレル)のLEモデルであるLE6920というセミオートオンリーモデルをパトロールライフルとして制式採用したという経緯がある。私のコマンドは、1980年〜90年代前半に製造されたフルオートセレクター付のフラットトップモデルで、まあいわば過渡期のモデルだね。アッパーもオリジナルで、あまりにうるさくてマズルフラッシュもすごいので、手に入れてすぐシュアファイアのマズルデバイスに交換して、サプレッサーを装着した。その状態で耐久性テストをすることにしたんだ。3,000発を撃ったところで、カーボンが堆積してサプレッサーが外れなくなってしまった。以来クリーニングなしでオイルだけ足して1万発以上撃っているが、今のところ問題ない」
「耐久性や信頼性に関してはまったく問題ないが、フルオート射撃に関してはいろんなことがわかってきた。まず、このコマンドの11.5インチバレルというのは、CQBや取り回しを優先させたいパイロットやミリタリーの車載ライフル、もしくは特殊部隊などの運用には最適だが、フルオート時の回転数が毎分1,000発に近いため、命中精度を上げようとすると、かなり訓練が必要になってくる。またマズルフラッシュや発射音も強烈なので、サプレッサーの装着が必須となってしまい、せっかくの銃身長が活かせなくなってしまう。それではM4の14.5インチバレルなら撃ちやすいかといえば、ガスポートの位置がカービンレングスということもあり、それほど大きな違いはない、というテスト結果が出てしまった。まあ、それ以前の問題で、LEオフィサーがフルオートウェポンを使う場面がどのくらいあるかという現実と、昨今の法執行における法律上の縛りが大きく影響しているからね。このPDではSWATチームといえども、M4のセミオートオンリーモデルを制式採用しているというわけさ」
M4系がPDにとって欠かせない理由
その後、ジェイソンは「我々ポリスオフィサーにとって、M4系パトロールライフルはなくてはならないものになりつつある」と語り、考えつく理由を述べてくれた。
- 撃ちやすさ
女性のオフィサーも大勢いるPDでは、軽量でリコイルの少ないM4は、訓練もしやすい割には、強力なファイアパワーを持っている。
- メンテナンスの容易さ
長年バトルの前線にいたM4は、そのメンテナンスの方法やインターバルが確立されており、制式銃として管理が容易である。
- 互換性の高さ
モジュラー性が高く、簡単なパーツ交換で、スナイピング、CQBなど使い分けることができる。しかも最新の付加機器(サイト、ナイトビジョン、ウェポンライトなど)を簡単に搭載できる機構を備えている。
- 弾薬のクオリティ向上
5.56mm口径の貫通力の高さを問題視する向きもあるが、最新の弾頭は少しでも固いものに当たるとバラバラになってしまうなど、性能が上がってコントロールしやすくなっている。
- 弾薬の調達が容易
米国内で広く流通している5.56mm弾は、非常時でも容易に手に入れることができる。
- 精度の高さ
法的な環境が厳しいオフィサーたちも、自信を持って使うことができる。
「といったように理由を挙げれば枚挙に暇がない。ポリスワークに最も適したライフルだということがわかるだろう」
しかしながら、かえすがえすもコルトの衰退は残念でならない。売れに売れている“M4/AR”プラットフォームを持ちながら、さらにはミリタリー納入という大きなバックアップを持ちながらも、会社を傾けてしまったのは経営陣のセンスのなさとしか言いようがない。
ただし、翻っていえば、同業他社の活躍には目を見張るものがある。コントロールのアンビ化はほぼ当然、超軽量化から信頼性重視のタフモデルまで、それこそよりどりみどりの様相を見せているのがARプラットフォームなのだ。
月刊アームズマガジン2023年4月号ではジェイソンの愛銃をはじめ、SWATなどエリートスクワッドで制式採用されているM4系の銃に注目したレポートを掲載している。もしよろしければそちらもご覧いただければ幸いだ。
TEXT&PHOTO:Hiro Soga
この記事は月刊アームズマガジン2023年4月号に掲載されたものです。
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