ミリタリー

2023/06/21

自衛隊エリートの降下訓練を撮影!~降下訓練始め~【アームズフォトグラフ Photo Shoot Vol.2】

 

 

 「アームズフォトグラフ」は筆者が撮影した写真についてロケーションや設定、レタッチなど写真全般について色々語るコーナーだ。できる限り詳しく語っていこうと思っているので、ぜひとも写真を撮る際の参考にもしてもらえたら幸いだ。

 

第1回:「エアガン×車」編はこちら

 

 第2回目は「陸上自衛隊習志野駐屯地 降下訓練始め」で撮影した写真についてだ。毎年年明けに行なわれ、新年を飾るに相応しい迫力のイベントだ。そんな「降下訓練始め」は訓練展示が始まると陸と空どちらでも様々なことが起き、フォトグラファーにとっては忙しい撮影になる。今回はそんなイベントで撮影した写真について解説をしていこうと思う。

 

焦点距離 400mm / 絞り F10.0 / シャッタースピード 1/400 / ISO 400
降下訓練一番の見どころである空挺降下のシーンだ。空の深い青を出しながらも開いたパラシュートと兵士を被せたくなかったので直上より少しずれたタイミングを狙い撮影した。
レタッチではシャドウを少し上げて明るくし、空の青をより強調するため、青色の彩度を少し上げ明度を落とした

 

撮影情報

  • 被写体   : 空挺降下始め
  • ロケーション: 千葉・陸上自衛隊習志野駐屯地
  • カメラ   : フルサイズミラーレス一眼

(24-105/4・100-400/4.5-5.6)

 

 


 

空挺降下を撮る

AirBorne

 

 今回のイベント一番の見どころである空挺降下。多くの隊員や兵士が降下し、かつ隊員を載せる航空機も写したいとなると大忙しだ。そして今年度は空挺団だけではなくアメリカ陸軍の第82空挺師団、第11空挺師団、第1特殊部隊群第1大隊、イギリス軍からは第16空中強襲旅団、そしてオーストラリア軍から国防軍空挺学校と、各国空挺部隊のオンパレードだった。

 

焦点距離 200mm / 絞り F8.0 / シャッタースピード 1/320 / ISO 100
「C-2」から空挺降下するシーンを捉えた写真だ。近すぎず遠すぎずな距離感で航空機を右端に映し、右から左にかけて落下傘を捉えた。少し空の青を強調するために青系統の彩度と明度を調整している

 

 今回の写真のほとんどはシネマチックを意識したので、多くの写真が21:9比率+シネマスコープを上下に入れている。21:9といった比率で撮影できるカメラは「Sigma Fp / Fp L」のみなので、普通のカメラで撮影する時は上下をかなり意識して撮ることとなる。

 

焦点距離 34mm / 絞り F9.0 / シャッタースピード 1/320 / ISO 100
こちらは望遠ではなく広角で空挺降下を撮影してみた。迫力は少し薄れるが、空挺部隊の物量を映すにはやはり広角が一番だ。
​​​広角で撮影したので、画面下部から上部に行くに従い、白みがかった空の色から深い青へと変化していく。そのグラデーションを残したかったので今回は空を調整せずそのままの色を意識した

 

 この画面比率は大きくトリミングをするため、カメラの画素数をフルで生かせなかったり、撮影時意識することが多い、編集に少し手間がかかる等のデメリットがある。だが、写真を映画風に表現できたり、今回の空挺降下であれば上下の余白を狭めることで画面から空の割合を少なくし、被写体に注視させることができる。

 

焦点距離 400mm / 絞り F10.0 / シャッタースピード 1/400 / ISO 400
真上を通過する兵士を撮影した。一人だけではなく左下にもう一人いるのがポイントだ。
こちらも空の深い青さを出すために青系統の彩度と明度を調整

 

焦点距離 400mm / 絞り F9.0 / シャッタースピード 1/500 / ISO 100
エキストラクションロープでFRIESを行ない、前線へ展開する途中の隊員たち。これは空挺とは少し違った写真だが、隊員が空にいる一枚なので最後に載せた。
吊り下げしているヘリコプターを映さず、また被写体も左に寄せて撮影することで少し印象的な構図にした。レタッチでも空の色味をシアンに寄せることで独特な雰囲気を醸し出している

 


 

航空機を撮る

 

 本イベントの魅力は空挺降下だけではない。離島奪還を目的とした演習ということもあり、多種多様なヘリコプターの登場も忘れてはならない。

 

焦点距離 400mm / 絞り F6.3 / シャッタースピード 1/400 / ISO 100
​​​​​ギリースーツを身に纏う隊員を載せた「UH-1J」だ、陸上自衛隊のヘリコプターといったらこの機体か「CH-47J/JA チヌーク」が代表的だろう。
ヘリコプターはこのように空背景になってしまう場合が多く、動きが少ない写真にならないようにも回転翼を少しブラして撮るのはオススメだ

 

焦点距離 361mm / 絞り F7.1 / シャッタースピード 1/400 / ISO 100
陸上自衛隊だけでなく、世界で回転翼機の代表格である「CH-47J/JA チヌーク」だ。
前後に回転翼を設けている特徴的な姿をしているが、今回は機体の後ろからアップで撮影した。機体を思い切ってトリミングし、ちょうど斜めになっているタイミングで撮影することで迫力のある写真になった

 

 ヘリコプターをカッコよく撮るコツはシャッタースピードを落とすことだ。P-3CやUS-2といった同じくプロペラが回転する機体でも、固定翼でターボプロップエンジンとなるとシャッタースピードが多少早くても回転している写真になる。

 だが、ヘリコプターは回転数が遅めなので同じように撮ると「何だか迫力がないな…」といった写真になってしまう。しかし、落としすぎると次は機体がブレやすくなり失敗写真を量産してしまうので注意しよう。

 

焦点距離 400mm / 絞り F8.0 / シャッタースピード 1/400 / ISO 100
旋回を行ない再度進入を試みる「AH-1S コブラ」。
自分がいた場所はちょうどヘリコプターが奥へと旋回を始める場所で、後ろ姿は多く撮影できたが前のショットはかなり少ない。このコブラは会場奥から再度進入をしてきてくれたので運よく正面側が撮影できた。ちなみに距離はかなりあったので大きくトリミングを行なった​​

 

焦点距離 400mm / 絞り F5.6 / シャッタースピード 1/400 / ISO 100
今回の訓練参加機体で唯一のアメリカ海軍所属である「MH-60」。
被写体である機体を正面に捉え、枯草を巻き上げながら離陸する瞬間を捉えることで迫力のある写真になった。レタッチで少し彩度落としつつも米海軍独特のカラーリングも活かした。
欲を言うと正面からこの角度で撮影がしたかった…

 

 個人的にはシャッタースピードが1/250~1/400がオススメだ。適度に回転翼がブレてくれるうえ、機体はしっかりとピンがあってブレてない写真になる使い勝手のいい設定となる。最初のうちはこの辺りの設定で慣れ、後に1/125や1/60といった遅めのシャッタースピードに挑戦しよう。ちなみに打率はすこぶる下がる。

 

​​​​焦点距離 336mm / 絞り F6.3 / シャッタースピード 1/400 / ISO 100
ドアガンを掃射しながら飛来した「UH-1J」。マズルフラッシュを捉えられなかったのが悔いだ。
回転翼をブラすだけではなく、ドアガンの発砲煙や大胆に切り取ることで躍動感を演出した。
また、全体的な彩度を少し落とし、空の色も控えめにすることで映画のワンカットらしさも強く演出した

 

焦点距離 256mm / 絞り F8.0 / シャッタースピード 1/400 / ISO 100
訓練展示を行なう場所は一般観客からかなり見下ろした場所で行なうため、こういった俯角構図も撮影できるのは本イベントの地味に嬉しいポイントだ。
2機が会場に進入し、1機目が隊員を降ろしているタイミングで2機目も準備を始めた瞬間だ。奥に別の機体を映すだけでも写真に物語性が生まれる

 


 

陸上部隊を撮る

 

 訓練展示も後半になってくると、離島に上陸し強襲をかける陸上部隊の姿も見え始め、総火演ほどではないがこれらも中々の見ごたえがある。

 

焦点距離 400mm / 絞り F6.3 / シャッタースピード 1/400 / ISO 100
伏せて射撃を行なう隊員たちの真横を移動する74式戦車。今や前線からは退いて退役まで秒読みな状態であり、この姿を見られるのもわずかであろう。
手前の普通科隊員も共に映したかったので戦車は画面左寄りにした。奥にワンポイントでちらっと見える軽装甲機動車は奥行きを演出してくれている。
レタッチはわずかにコントラストを落とし、シャープネスを上げた

 

焦点距離 400mm  /絞り F5.6  / シャッタースピード 1/640  / ISO100
「CH-47J/JA」から展開後、状況の変化により迫撃砲の撤収を行なう隊員たち。
戦車や機動戦闘車、水陸両用輸送車などに目線は持っていかれがちだが、こういった細かな展開・撤収も見逃してはならない。
動作が早かったのでシャッタースピードを若干速め、手前の部隊を注視させるため背景をぼかしたかったのでレンズの絞りを開放で撮影した

 

 地上部隊はヘリコプターよりも速度は遅いが、同じ設定のまま撮影するとブレる事故もあるので注意が必要だ。そして実はヘリコプターよりも地上部隊のほうが全体的に遠いので、大きく撮りたいなら超望遠レンズは忘れないようにしよう。

 

焦点距離 175mm / 絞り F16.0 / シャッタースピード 1/80 / ISO 100
迫撃砲を運用する部隊の隣を駆け抜けていく「AAV7」​​​​。こういう場面では疾走感や躍動感を出したかったので流し撮りをした。レタッチはほぼ弄らず撮って出しに近い

 

 地上部隊と言えばやはり流し撮りだ。航空機は動きが速いので割と雑に撮ってもそれなりに流し撮りが成功してしまう。しかし、陸上装備は航空機よりも速度が遅くしっかりシャッタースピードを落とし、縦移動しないように構え、レンズを被写体の移動速度に合わせないと、ただブレた写真を量産してしまうので注意だ。

 

​​​​焦点距離 400mm / 絞り F6.3 / シャッタースピード 1/600 / ISO 100
車体を斜めにし、砲身を前線に向かせながら向かう74式戦車。
流し撮りだけではなくシャッタースピードを早くして土や泥を巻き上げる瞬間を切り取るのもいい。
個人的にこのアングルは戦車を撮るうえで一番好きな構図だ

 

​​​​焦点距離 274mm / 絞り F6.3 / シャッタースピード 1/400 / ISO 100
演習の最後、離島に上陸した全兵力で攻勢をかける場面だ。
写真下部には普通科隊員、左下に戦車、右上に対戦車ヘリコプターと三分割構図をしっかりと使い、画全体に被写体や情報を詰め込むことで最終場面や一気攻勢らしさを表現した

 

 今回は趣向を変えて自衛隊イベントである「降下訓練始め」で撮影した写真について撮影時やレタッチ時に意識したポイントを解説していった。

 

 本イベントは動きが多いうえ、基本的にどこを切り取っても画になるので演習が始まると大忙しになる。上やら下やらでアクションは起き、シャッターチャンスを逃さないために航空機の動きの予想やらもあり、撮影時に細かく考えながらベストショットを狙うのは中々難しいイベントの一つだと筆者は思っている。

 そんなイベントに今後もし参加する機会があれば、ぜひとも参考にしてもらえたら幸いだ。

 

▼前回の記事はこちら▼

 

PHOTO&TEXT:出雲

 


 

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