2020/12/11
【陸上自衛隊】伊豆の山を踏破せよ! レンジャー課程最終想定
レンジャー課程の最後の試練
4日間の長距離潜入訓練
目次
第9想定:「伊豆作戦」「富士作戦」
最終(第9)想定は複雑かつ長時間におよぶシナリオが用意された。伊豆半島を舞台に、海から水路潜入し、山地を踏破して敵の主要幹線路(MSR)となっている橋を爆破する。その後、半島の最南端まで離脱し、味方ヘリと合流。東富士演習場に移動して、敵部隊を伏撃するというものだ。
この最終想定は第34普通科連隊のレンジャー課程では定番の内容で、前半部分が「伊豆作戦」、後半部分は「富士作戦」と呼ばれている。 所要時間は約4日間におよぶ。もちろん、ぐっすり眠るような時間はない。合間に1 〜2時間程度の休息を得られる程度だ。また今回、運悪く激しい雨にも襲われた。西日本に大きな被害をもたらせた記録的豪雨の影響が、レンジャー学生たちに牙を向いたのだ。辛い訓練であることは言うまでもない。だが、ここまでの11週間におよぶ過酷な課程のゴールは目の前。学生たちは気力を振り絞り、山野を踏破し、任務完遂を目指した。
長い想定では、途中で戦闘隊長を交替する。全9想定のなかで全員が戦闘隊長を経験するためだ。交替の都度、状況を一時中止し、物品を掌握させるため荷物を全部展開させてチェックをする
休憩時間。計画で目的地までの時間が定められているので、移動が順調であれば休憩にも余裕が生まれるが、遅れが出たなら休憩時間が減ることになる
帰還式
20名の学生たちが最終想定を終えて、第34普通科連隊のホームである板妻駐屯地に帰還した。その姿は4日間におよんだ過酷な訓練のため、泥と汗にまみれ、激しい雨によりびしょ濡れとなっていた。その足取りからは疲労感が滲み出ていたが、力強く踏み出される一歩一歩に、レンジャー課程をやり遂げた達成感を見ることができた。
連隊長の前に学生たちが整列し、学生長が状況終了を報告する。すでに体力の限界を迎えているだろうが、姿勢表情とも精悍そのものである。
「よくやった! この豪雨のなか、頑張ったな。偉いぞ!」
一人一人、前に歩み出た学生に、連隊長が青いロープで飾られた銀のレンジャー徽章を首掛ける。まるで父親のような温かみのある山之内連隊長の言葉に、厳しい表情を貫いていた学生たちも思わず涙ぐんだ。
「どんなに厳しい状況でも信じる仲間となら乗り越えられる。レンジャーとは家族なんだ!——と、しみじみ感じることができました」(副学生長 山本3曹)
すべての課程を終えた学生たちを同僚や家族が囲む。その表情はどれも、大きな課題を成し遂げた誇りと自信に満ちていた。
TEXT:笹川英夫
PHOTO:陸上自衛隊第34普通科連隊広報班/笹川英夫
特別協力:陸上自衛隊第34普通科連隊広報班
この記事は月刊アームズマガジン2019年2月号 P.98~107より抜粋・再編集したものです。