2020/11/21
【陸上自衛隊】第1空挺団、アラスカの大空を舞う
陸上自衛隊第1空挺団、アラスカの大空を舞う!
日米共同訓練アークティック・オーロラ
C-17輸送機のカーゴハッチからの自由降下。一般的な空挺降下(スタティックライン式)と異なり、高高度から降下し任意のタイミングでパラシュートを開く。高度な技量が求められ、特殊部隊などが使用するテクニックだ
[写真提供:第1空挺団]
高高度より自由降下
陸上自衛隊の精鋭、第1空挺団が例年実施しているアラスカでの日米共同訓練アークティック・オーロラ(2017年)をレポートする記事の第2回目は降下訓練、そして近接戦闘訓練の模様を紹介しよう。第1回目の模様は以下をご覧いただきたい。
6月16日、第1空挺団はアメリカ空軍のC-17大型輸送機から初となる降下訓練を行った。高度約1万フィート(約3,000m)よりの自由降下となる。一般的な空挺降下は、高度200~350m程度よりスタティックライン式という方法で行われる。これは落下傘の展開コード(スタティックライン)を機内のフックに固定することで、航空機から飛び出すと同時に傘が開くものだ。第1空挺団が毎年年始に実施している「第1空挺団降下訓練始め」などでも空挺団主力の降下のため大々的に実施されており、ご存じの方も多いのではないだろうか。
一方で、フリーフォール式は航空機から飛び出したのち、ある程度はそのまま落下し、任意の高さで自らの意思で傘を開く方法である。主に夜間、隠密裏に少数で降下する特殊部隊や偵察部隊が用いる(この降下方法も降下訓練始めで見ることができる)。降下訓練始めでは、降下誘導小隊・偵察小隊がアメリカ軍特殊部隊員とともにこの方法で降下している。滞空性能、操作性に優れ、自ら操作することで小さな範囲の降下地点に降着することができる。
降下前、C-17機内の様子。自由降下はパラシュートや高度計(左腕の大きな時計型のもの)など専用の装備を使用する。C-17は超大型の戦略輸送機として知られているが、この写真からも内部の広さを伺い知ることができるだろう
[写真提供:第1空挺団]
上空の風速・風向を測定するバルーン。降下に必須の情報を収集する
[写真提供:第1空挺団]
■日米空挺部隊の絆
この年のアークティック・オーロラではC-17のほか、UH-60ヘリコプターからもフリーフォールによる降下訓練が実施され、空軍のTACP(戦術航空統制班のこと。前線での航空支援の管制を行う部隊)や戦闘救難員と一緒に降下して、連携を深めた。降下終了後には、アメリカ側から第1空挺団の隊員に降下証明書が授与されるとともに、互いの空挺徽章の交換が行われた。
中国やロシアといった大きな脅威と相対する日本にとってアメリカとの同盟関係は平和と安定の維持に欠かすことができない。それは国家レベルだけの話ではなく、こうした隊員間の信頼醸成もまた、大きく寄与しているのであろう。降下の成功を称え、ハグしあう日米の隊員たちを見て、日米の絆の強固さを改めて実感した。
アラスカでは空挺訓練のほか、陣地攻撃を想定した戦闘訓練や、室内戦闘の訓練も実施され、アメリカ軍とともに戦技の向上に努めた。写真はアメリカ軍の歩兵小隊戦闘コースと呼ばれる訓練施設の一つ
[写真提供:第1空挺団]
TEXT&PHOTO:笹川英夫
『陸上自衛隊 BATTLE RECORDS』
本記事で紹介したのは、陸上自衛隊の一面に過ぎない。現在好評発売中の『陸上自衛隊 BATTLE RECORDS』ではより詳しく陸上自衛隊を取材している。日本を取り巻く情勢は危機感を増し、陸上自衛隊も大きく変わろうとしている。陸上自衛隊はいかにして危機に立ち向かおうとしているのか? 水陸機動団、第1空挺団、中央即応連隊などの部隊、またスナイパーやレンジャー教育の現場など最新の陸上自衛隊の姿が一冊にまとめられている。ぜひ、お手に取ってご覧いただければ幸いだ。