2020/09/23
南シナ海とインド洋を海上自衛隊長期訓練航海!! ~護衛艦「いずも」&「かが」~
“空母化”目前で注目の護衛艦「いずも」&「かが」
南シナ海とインド洋を長期訓練航海
護衛艦「いずも」とインド海軍フリゲイト「サヒャドリ」
■中国海軍を牽制!?
海上自衛隊が2017年以来、南シナ海からインド洋への訓練航海を毎年実施していることをご存知だろうか?
1ヵ月以上にわたる航海のなかで、東南~南アジア各国海軍との共同訓練を通して、海上自衛隊の戦術技量向上と連携強化を図ることが目的であると発表されている。その一方で、海洋支配への野望を隠さない中国海軍への牽制という意味があることは間違いないだろう。いわゆる日本版「航行の自由」作戦である。
また、この訓練航海は海上自衛隊の最新鋭艦であり、“空母化”で注目を集める「いずも」型ヘリコプター搭載護衛艦が参加していることが注目される。2017年と2019年に「いずも」、2018年は「かが」が参加している(今年は9月7日より「かが」と汎用護衛艦1隻が派遣されている)。
護衛艦「かが」。「いずも」型はヘリ搭載護衛艦として建造されたが、F-35B戦闘機を運用するSTOVL空母に生まれ変わろうとしている
■フランス空母「シャルル・ド・ゴール」との共同訓練
航海は、ベトナムやマレーシア、フィリピン、シンガポールなどの港を回り、インド洋ではインド海軍との共同訓練も実施している。また、昨年2019年には同じ時期にインド洋方面への派遣訓練を行なっていたフランス海軍の空母「シャルル・ド・ゴール」を中心とする艦隊(TF-473)との訓練を行なった。これは、オーストラリア海軍、アメリカ海軍も参加する、国際色豊かなイベントとなった。
インド洋に派遣されたフランス空母「シャルル・ド・ゴール」。全長は「いずも」型とほぼ変わらないが、ラファールM戦闘機を艦載している
■立入検査隊
海上自衛隊の護衛艦には一隻ごと「立入検査隊」が置かれている。これは不審船舶などに移乗しての立入検査を実施するための、いわゆるボーディング・チームである。現代において、大量破壊兵器の拡散やテロリズムの蔓延を海上において阻止するMIO(海上阻止行動)は、各国海軍の主要や役割の1つであり、海上自衛隊も同様である。各国ボーディング・チームとの共同訓練もまた、訓練航海のなかで実施されている。
海上自衛隊は西太平洋で有数の戦力を持った組織であり、アジア各国との共同訓練を通して、地域の安定と平和に貢献しているのである。
「かが」立入検査隊とインド海軍ボーディング・チームによる共同訓練。インド海軍の補助艦艇に乗り込んで船内を制圧した
「かが」の僚艦として訓練航海に参加した護衛艦「いなづま」の立入検査隊。立入検査隊は濃紺のツナギに黒いアーマーが特徴だ
『海上自衛隊 BATTLE RECORDS』
本記事で一部紹介した、立入検査隊、特殊部隊SBU、水陸両用作戦――海上自衛隊の活動が一冊となり、9月29日(土)に発売される。ミリタリーフォトグラファー、菊池雅之氏による膨大な海上自衛隊取材の記録が一冊の本になった。近年の国際派遣や共同訓練などを中心に、戦後から現代までの歴史や、将来に向けた新型艦計画まで、読み応え充分な一冊となっている。ぜひ、お手に取ってご覧いただければ幸いだ。
PHOTO:菊池雅之
TEXT:アームズマガジンウェブ編集部
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