実銃

2023/06/11

【実銃】全米の法執行機関が認める拳銃「STACCATO-P」、その卓越した射撃性能とは【後編】

 

STACCATO ☆ P

The Best Shooting Duty Gun

 

 

 レースガンとしてのイメージが強いSTIの2011だが、新製品であるSTACCATO☆Pモデルは、2019年から2020年にかけて全米で250以上のローエンフォースメントエージェンシーから正式に認定されるなど、デューティガンとして華麗なる大変身を遂げた。あのUSマーシャルSOGやLAPDのSWATといったエリートチームでの採用が決まり、その影響もあって全米のエージェンシーが認定に踏み切ったともいわれている。これはその社名をSTACCATOと変えて、新しい陣容で開発&マーケティングを進めたSTIが勝ち取った快挙だ。

 

デューティアモにおける実射

 

 今回のテストガンは、例によって友人のジェイソン・デイヴィスから借りたSTACCATO-Pモデルだ。彼もPD(ポリスデパートメント)のインストラクターとして、このPモデルをテスト中なのだ。

 

「まだ2千発ほどしか撃っていないが、撃ち易く、精度も抜群だ。あとは信頼性だね。まだ一度も掃除していないから、このまま使ってみてくれ。ウチのPDのデューティガンはコルト1911だから、訓練上の問題も全くないし、制式認定は間違いないね。もうすぐC2モデルも来るから、比べてみたいね」

と、テストファイアさせてくれることになった。

 

ハンマーが落ちる瞬間!

 

 ハンドルしてみると、旧2011に比べグリップの握り易さが大幅に向上している。特にグリップセイフティ周りの処理は優れており、セイフティを握り込んだ状態で手に当たる部分がすべてなめらかに仕上げてあり、サムセイフティの根元が親指の付け根に当たることがまるでないのだ。

 

 ハンドルしてみると、旧2011に比べグリップの握り易さが大幅に向上している。特にグリップセイフティ周りの処理は優れており、セイフティを握り込んだ状態で手に当たる部分がすべてなめらかに仕上げてあり、サムセイフティの根元が親指の付け根に当たることがまるでないのだ。

 

これでほぼフルリコイルだ

 

 オリジナルを削り込んでハイグリップ仕様にし、粗いスティップリングを入れたカスタムのような感もある。そしてすぐに感じるのが、タイトなフィッティングの割には、なめらかなスライドプルだ。一昔前のカスタム1911並みなのだ。

 

 サムセイフティやグリップセイフティ、スライドリリースなど各操作系は節度がきちっとあってオンオフが心地よいほどだ。ただ、マガジンリリースだけは意識して押し込む必要があり、これはたぶんデューティユーズを考えて、簡単に抜けないようにアジャストしたのだろうが、ここはまあ、簡単に自分で改良はできそうだ。

 

Speer 147gr G2。右上の1発をフライヤーとすれば、25ヤードで1.2インチにまとまっている

 

Federal 147gr HST。上の1発をフライヤーとして1.15インチに集弾している。これも25ヤードだ。箱出し後、2,000発ノークリーニングで撃った後でもここまでグループしてしまう

 

 今回使用したアモは、STACCATOに敬意を表して、デューティアモとして広く使われているSPEER社の147gr G2と、Federal社の147gr HSTを用意した。

 

左がSpeer 147gr G2。ブレット先端にはシリコンのような柔らかいものが充填されている。ジャケットに入ったスリットが恐ろしげだ。右がFederal 147gr HST。こちらもジャケットに深く入れられたスリットが不気味

 

 まずは期待の精度テストだ。これまたSTACCATOに敬意を表して、いつもより遠い25ヤードから5発を撃ってみる。この日は風が強く、ターゲットが微妙に揺れていたが、Speer 147grで4発のグループが1.2インチ、Federl147grでは1.15インチを達成した。もしRDS(レッドダットサイト)を使うことができたら、さらにタイトなグループが期待できそうだ。

 

左の10インチスティールにダブルタップ。面白いように当たる

 

右の10インチに2発!


 それにしてもこの撃ち心地の良さはどうだろう。トリガープルは、ゲージで測ると10回平均が3.8ポンド(約1.7㎏)と、シングルアクションキャリーガンとしては理想的だ。このトリガープルの説明は難しいが、昔よく言われた“細いガラス棒を折るような…”とは全く違い、ハンマーが落ちる瞬間を感じやすいというか、節度のある好感が持てるものだった。


 きついはずの147grのデューティアモを撃っているにもかかわらず、そのリコイルはマイルドで、スライドの前後動が体感できるほどだ。結果として、ダブルタップの着弾をまとめやすいのだ。

 

左は20ヤード、右が15ヤードといったところか。難しいが面白い

 

 今回モデルになってくれたMr. Ikeda は、日ごろUSPSA やスティールチャレンジも撃っている競技シューターでもあるので、大体15ヤードは離れている2枚の10インチプレートにそれぞれダブルタップで撃ってもらった。10インチにダブルタップというのは、意外と難しいのだ。


「いやー、撃ち易いですね。このトリガープルはもはや反則です。フルロードのデューティアモでこれなら、普通の115gr のレンジアモならどうなっちゃうんでしょうね。なんだか自分が上手くなった気がします」

 

 

 

この時はグリップを握る手を少し緩めた。するとこのくらい跳ね上がる


 同感である。
 二人で300発ほどを消化し、我慢できずにその場で通常分解をしてみた。ジェイソンの2,000発と合わせると、通常の2011なら掃除が必要な時期のはずだ。我々の感覚では競技銃の場合、1,000発を超えたら通常分解して掃除をしたいところだが、ファクトリーアモ、それもきつめのジャケッテッド弾ばかりを撃っているからか、内部の汚れはそれほどでもない。チェンバーやボアもきれいなもので、まだまだ撃ち続けられそうだ。

 バレルに一度スネイク(ボアブラシ付きの布製チューブ)を通しただけで内部はきれいになってしまった。

 

もちろんワンハンドも試す。「やっぱりシングルアクションは当たりますねー。このトリガープルはストライカー方式のガンと比べられないです」とはIkedaさん


 この通常分解の簡単さも特筆ものだろう。フルレングスのDawson製リコイルスプリングガイドにはシーソー式のストッパーが組み込んであり、ストロークした状態でプラグにロックできてしまう。つまり、スライドを引きながら指先でこのロックをかけてしまえば、スプリングテンションがかかっていない状態で簡単にスライドリリースを抜くことができ、通常分解はお茶の子さいさいなのだ。ツールなしでフルサイズスプリングガイドが抜けるというのは、我々オールドタイマーにとっては驚きなのだ。

 

気合を入れてグリップすると、フェルトリコイルも小さくなる。左手の握りしめ具合が違う


 STACCATO-P、このガンは売れるだろう。訓練されたプロフェッショナルの手に渡れば、最高のツールになる。弱点はストライカーのポリマーフレームガンと比べたら、よりメインテナンスが必要という点であろう。気になるのはC2、それも個人的好みを言うとDUOモデルにRDSを載せて撃ち込んでみたい。本当はコンプ付きのXCモデルが一番欲しいのだが、かのモデルは何と4,300ドルもする。それも銃規制の厳しいカリフォルニア在住の一般人である私には、ほとんど手の出ない存在でもあるのだ。罪作りなSTACCATOである。
 

 

Photo&Text:Hiro Soga

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年2月号 P.156-160をもとに再編集したものです。

 

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