実銃

2023/04/03

【実銃】Beretta M9A3の魅力を実射検証【M9A3】【後編】

 

Beretta M9A3

 

 

 米軍兵士からのフィードバックを元にM9 の問題点を払拭すべく、ベレッタが出した回答がM9A3 だ。ストライカーファイアのポリマーフレームを欲していた米軍は、これを検討することなく突き返したが、M9A3は高いポテンシャルを持つ92 の究極進化形というべき戦闘用拳銃になっている。

 

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M9A3

 

 

SPEC

  • 口径:9mm×19
  • 全長:220mm
  • 銃身長:127mm
  • 全高:137mm
  • 全幅:38mm
  • マガジン装弾数:17発
  • 重量:944g
  • メーカー希望小売価格:$1,100

 

実射


  SHOT SHOW のベレッタブースやカタログには、M9の写真が大きく誇らしげに掲げられるのが定番だったが、M17/18採用決定後はこれが姿を消して、なんとなく淋しげになってしまった。完全な入れ替えにはまだ何年もかかり、しばらく現役なのは事実だが退役する身ではM9を前に出しても今更としか思われない。

 

これまで1,000発くらい撃ったが、作動不良は全くなく快調なM9。92系は脆弱な部分もあるが扱いやすさ、安全性、撃ちやすさにおいてコンバットピストルとして完成度が高いモデルの1つだ

 

M9A3を撃つ。手に合うかにもよるがヴァーテックグリップの良さを改めて感じる。使用弾はフィオッキの115gr FMJ。銃口初速はM9が1,085fps(301ft-lbs)、M9A3が1,110fps(315ft-lbs)で延長された分わずかに速い

 

僅かに重くなったスライドで撃ちやすいとベレッタが言うブリガディア。しかしベレッタがカタログで謳うような違いは体感できず、殆どリコイルに差を感じない

 

 それでもM9A3は、既存の92が持つ弱点を改良し、近代化したM9として新鮮であり、92系ファン、特にタクティカルユーザーから好意的に受け入れられている。

 

 今回またラスベガスを訪問し、E.Morohoshiさんのコレクションの1つであったM9A3を自前のM9と比較し実射テストした。サプレッサーを装着してのテストも含め、結果は快調であった。

 

一般的な1/2×28のネジピッチは多くの汎用デバイスと互換性がある。実験的にH&Kを模した3ラグアダプターを装着した後、そこに専用のジェムテック社のラプターを装着

 

 

これはE.Morohoshiさんが日頃MP5系などに使用するサプレッサーなのでショートリコイルのピストルに必要なニールセンデバイスが組み込まれておらず、多分作動しないと予想しながらもどんなもんか試しに実験。たまにサイクルしたが、やはりスライドは十分に下がり切らずジャムを起こし毎回スライドを操作する事になった

 

 スロット増設でアクセサリー取り付け自由度が増したレイルを持つヴァーテックフレームの真っ直ぐ切り立ったバックストラップのグリップは、個人的にもかなり握りやすいと感じた。従来の92より好ましい。

 

 さらに90-Twoで取り入れたラップアラウンドグリップを樹脂からラバーに置き換えて手の大きなユーザーに対応させる柔軟性、セイフティの誤作動を予防し引きやすくなったスライド、ブリガディア/ヴァーテック系の狙いやすくダメージを受けても交換可能なサイト、昨今のサプレッサー人気に応じるスレッデッドバレル、M9A1の摩擦軽減処理のマガジンを発展させた17連マガジンなど、パッケージングも独特でアップグレードされたM9という雰囲気を味わえる。92系は様々なバリエーションを生み出してきたがM9A3はその良いとこ取りの集大成だと言える。

 

度々登場しているハイブリッド46に切り替える

 

これまでワルサーPPQやCZ P-10Cなど多くのモデルでテストしてきたようにM9A3でも完璧に作動する。サプレッサー内で若干加速させられるので初速は1,140fps(332ft-lbs)まで上昇した

 

 過去には新製品らしいものを出さなかった年も結構あったベレッタが、この3年の間で92系にやたら力を入れ再活性化に励んでいる。MHSの影響が1番だが、6年前からウイルソン コンバットとのコラボが始まり、同社チームの筆頭B・J・ノリス(B.J.Norris)がプロダクション部門で活躍、スティールチャレンジで部門優勝を果たすなど話題を提供するなど、この動きは何年も前から始まっていた。


 さらに海兵隊では幾多の戦地で実戦経験を持ち、トレーニングスクールを卒業しインストラクターとしても活動、競技界でもUSPSAでグランドマスター、IDPAでディスティングウイッシュドマスターの地位を得ているアーネスト・ラングドンは、M9採用当時から使用し信頼を置いてきたベレッタのカスタムに力を注いできた。

 

背の高いサプレッサーハイトサイトではないのでサプレッサー本体に遮られて狙えないが、M9A3対応のベレッタ純正サイト($60)もありサプレッサーレディモデルに仕立てる事は容易だ。従来型M9/92FSだと固定式フロントサイトなのでそれができなかった

 

 自らが経営するLTTではカスタムガン、カスタムパーツや加工サービスを実地してキャリーオプティックモデルをデザインするなど意欲的に92系を改良し続けている。今回LTTパーツを導入してキャリーオプティック化したM9を撃ったが、かなり印象的でベレッタがここまで撃ちやすくなるのかと驚かされた。

 

 このカスタムベレッタ人気の後押しもあって、USPSA等の競技でも92系参加者が増えている。そこにベレッタが投じた92Xシリーズ、特に92Xパフォーマンスはポテンシャルが高く、ベレッタが再評価されることに貢献している。

 

これまでの92系バリエーションの長所を取り入れながら数々の弱点を改良してミリタリサイドアームとしてさらに完成度が高まったM9A3。時代が変化し米軍の求めるところではなかったが、これから先も確かな実用性を持つコンバットピストルとしてベレッタファンに支えられるだろう


 ハンマー方式の金属フレームの多くが製造中止になってきたが、92シリーズはまさにダイハード(しぶとい)なコンバットピストルだ。米軍からは退役するが、ファンは多く存在し、消えゆくどころか今後も多分野で新境地を開拓できるポテンシャルを見せた。


 92系の完成形と呼べるM9A3は、今後の92系の指標となり、ベレッタの発展はこれからも続いていくだろう。

 

 


 

 

 

 

 この数年カスタムベレッタが盛り上がっている。タラン・バトラーの会社TTIのガンスミスであり、元海兵隊のアレックス(Alex Chu)はベレッタに入れ込みLTTのパーツでカスタマイズしたこのM9を携行、競技に用いている。

 

 トリジコンRMR/SRO用のオプティックプレートを装着したLTTのスライドとNP3仕上げのトリガーパーツキット、11.5ポンドのリコイルスプリング、シリコンカーバイド処理したVZ G10グリップ、TTIベースパッドはCZ75用、グロック19のスプリングで22発装填可能。

 

 軍隊時代からM9を撃ってきた経験から操作性、高い信頼性(作動不良を殆ど経験した事がないそうだ)、撃ちやすさなど総合バランスに優れるベレッタを愛好し、このM9でUSPSAキャリーオプティクス部門でマスターに昇格している。
 グロックでは軽すぎ、CZではやや重すぎる…中間にあるベレッタの重量が理想的だという事だ。

 

トリジコンSROを装着したM9。トリガーは大変良好でDAは2.7kg、SAは1.6kgだが数値以上に軽く感じるスムーズさに驚いた。ダットサイトとの相性の良さもあってベレッタのイメージがすっかり変わった

 


 

Photo by James Kunze
Photo by James Kunze

 

 以前のリポートでも登場した全米女性トップシューターの1人であるジェシカ・フック(Jessica Hook)が今年チームベレッタのメンバーとなった。ジェシカは2018年のPCC(ピストルキャリバーカービン)ナショナルズで女性3位、翌年に2位に入賞したマスターシューター。3ガンでは2016年のArea6 Multigunタクティカル部門で女性1位という実績だ。

 

Photo by James Kunze

 

Photo by James Kunze

 

Photo by James Kunze

 

 ジェシカはマグウェルを外してプロダクション部門、または装着してリミテッド部門で早速92Xパフォーマンスを使用。キャリーオプティック部門ではAPXを使う。イタリアのトニシステムのアルミ製3Dオーバーサイズグリップ、マグウェル、ベースパッドを装着している。
 


 

タラン・バトラーのレンジでM9を撃つのは映画『リーサル・ウェポン』シリーズでリッグス刑事を演じたメル・ギブソン。ベレッタ92Fは80年代半ばからハリウッド映画を盛り上げてきた

 

『リーサル・ウェポン2』以降の全作、『ダイ・ハード2』、『デモリションマン』の撮影で実際に使用されたベレッタ92F。左利きのブルース・ウィリス用に右側に入れ替えたマガジンキャッチとスライドキャッチレバーが延長されている

 

キャンプペンドルトンでM9を撃つ海兵隊員。M17/18に更新中だが完全な入れ替えには何年もかかる見込みでM9はしばらくは現役を務める
U.S. Martine Corps photo by Cpl. Tia Carr

 

Photo&Text:Gun Professionals  LA支局/アームズマガジンウェブ編集部

 

この記事はガンプロフェッショナルズ2021年2月号に掲載されたものです。

 

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