実銃

2022/03/24

【実銃】特捜刑事マイアミ・バイスで登場した拳銃「BREN TEN」

 

幻のコンバットオート

 

 かのコンバットマスター、ジェフ・クーパーによってデザインされ、“理想のコンバットオート”としてDornausドーナウスDixonディクソンから1984年にリリースされたのがBREN TENブレンテンだ。ファクトリーの経営不振で姿を消してしまったが、そのデザインコンセプトは画期的で歴史に名を残している。

 今回はその実銃を解説したレポートを公開しよう。

 


 

 

BREN TEN 10mm AUTO

  • 使用弾:10mm×25
  • 全長:222mm
  • バレル長:127mm
  • 重量:1,077g
  • 装弾数:10発

 

 1980年代にリリースされた印象的なガンといえば、やはり“BREN TENブレンテン”が真っ先に上がってくるのではなかろうか。

 その理由はいくつかあるが、まず筆者にとっては、1984年にリリースされたTVシリーズ『MIAMI VICE(特捜刑事マイアミ・バイス)』で主人公のドン・ジョンソン演ずるジェームズ・ソニー・クロケット刑事がオールシルバーのブレンテンを使い倒していた、というのが大きなポイントである。日本でも放送されたのでご存じの方も多いと思うが、この番組はスタイリッシュな刑事ドラマというだけでなく、劇中に流れる音楽は錚々たるアーティストの作だったし、ガンアクションも派手かつリアリスティック、さらには意外な人物(グレン・フライ、マイルス・デイヴィス、フィル・コリンズ、ウィリー・ネルソン、ジュリア・ロバーツ等)がゲスト出演するなど、画期的な人気シリーズだったのだ。

 

理想のコンバットオート

 

 そこで登場するソニーの銃、ブレンテンは当時のセミオートピストルとしては最大の威力を誇る新口径10mmAUTOを採用した、まったく新機軸のセミオートだった。 10mmAUTOは、このブレンテンのためにスウェーデンのNormaが開発した.40(10.17mm)口径弾で、200グレインの弾頭を1,200fpsで飛ばすという、.45ACP口径の1.5倍以上、.357マグナムと同等以上の威力を持たされている。この新弾薬を10発装填できるマガジンを備えているというのも大きなポイントであった。他にもさまざまなコンセプトを盛り込み、当時としては紛れもなく理想のコンバットセミオートであった。

 

スライドはフレームに包み込まれるデザインで、CZ 75のデザインを踏襲したといわれる

 

ファイアコントロールは大型でよく考えられている。ハンマーはこれでフルコック位置だ。滑らかなダブルアクションプルを実現するために、軽めのハンマースプリングが使われているので、初期モデルでは打撃力不足が言われたこともある。この個体ではまったく問題ない

 

サムセーフティはこちら側に入れ替えることもできる。トリガープルは、ダブルが5ポンド、シングルが2.5ポンドほどとスムーズ。マガジンリリースの前には、下から貫通しているトリガーストップが見える

 

スライドを外した様子。トリガーのシステムは、基本的にCZ 75のコピーである。トリガーアクティベートのファイアリングピンブロックは存在しない

 

ステンレスフレームに、カーボンスチールのスライド。1980年代には、ステンレス同士のパーツは摩耗や摩擦をコントロールすることが難しかった

 

 さて外観からもそのデザインが優れていることがお分かりいただけるが、実際のところ実射してみなければその実力は分からない。次回はこのブレンテンの実射レポートを公開しよう。

 

続きはこちら

 

TEXT & PHOTO:Hiro Soga

 

この記事は月刊アームズマガジン2022年3月号 P.82~89をもとに再編集したものです。

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