2021/12/20
【実銃】サブマシンガンの傑作「MP5A3」の魅力
色褪せない魅力を秘めたSMG
旧世紀来の古参銃器ファンなら、傑作サブマシンガンとして名高いH&K MP5に対してある種の憧れ、あるいは郷愁のような感情を抱く方は多いのではないだろうか。1966年の登場以降、活躍し続けたこの銃は今もその魅力は薄れない。最近では東京マルイから次世代電動ガンMP5A5が発売され、ふたたび脚光を浴びている。今回はそんなMP5の魅力を実銃のレポートからご紹介しよう。
サブマシンガンの傑作
H&Kの傑作SMG(サブマシンガン=短機関銃)として知られるMP5も、登場したばかりの頃はさほど注目されず、知る人ぞ知る銃、といった立ち位置だった。それが一転するきっかけとなったのが、1980年にロンドンで発生した駐英イラン大使館占拠事件だ。英国陸軍特殊部隊SASが大使館へ突入するさまは現地テレビ局によって世界中に生中継され、同時に彼らが携えていたMP5もその存在を知らしめたのである。
それまでのSMGの概念を覆すほどの高性能は今もなお色褪せず、アップデートを経て各国で使用されている。今回射撃するのはピカティニーレールやサプレッサーを装備してモダナイズされたものではなく、オリジナルに近い“まっさらな”MP5A3だ。
H&K MP5A3
- 口径:9mm×19
- 全長:550mm/700mm(ストック伸長時)
- バレル長:225mm
- 重量:約3,300g
- 装弾数:10/15/20/30発
ハンドガード左上に設けられたチャージングハンドルは、ストックを肩付けしたままでも操作しやすい。MP5にはボルトキャッチがないため、最終弾を撃ってもボルトがホールドされない。そこで、撃ち切って弾倉を交換する場合、チャージングハンドルをいっぱいまで引いて上へ回すとボルトが後退位置で固定される。この状態でマガジンを装填し、上からハンドルを叩くと固定が解かれてボルトが勢いよく戻り、マガジンから初弾をすくい上げてチャンバーへ装填され閉鎖する。やや乱暴な動きで、映画などでもよく見られることからアクション映画特有の演出と思われがちだが、これは正式の操作法で、閉鎖を確実なものとするために必要なのである。チャンバーにはスリットが設けられ、空薬莢がチャンバー内に張り付いて作動不良を起こすのを防いでいる。このため、排出された薬莢にはスリット状の跡が刻まれる。
ローラーディレイドブローバックの作動システムも特徴的だ。これはMP5のベースにもなったアサルトライフル、G3で採用された構造で、ボルトに設けられたローラーによってディレイド(遅延)ブローバックを実現し、反動を抑えている。構造は複雑になるが軽量化できる利点があり、当時のSMGとしてはボルト閉鎖位置から撃発サイクルが始まるクローズドボルト方式を採用したこともあって高い命中精度と信頼性を実現している。
それまでのSMGが「近距離で拳銃弾をばら撒く銃」なのに対し、MP5では「近距離で正確に当てられるSMG」となったのである。この特性は、人質への誤射を避け目標のみを排除する、という対テロ特殊部隊の要求にも合致し、各国の軍および法執行機関での採用につながった。次回はMP5A3の実射のレポートを公開し、その魅力をお伝えしようと思う。
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Text & Photos:櫻井朋成(Tomonari Sakurai)
この記事は月刊アームズマガジン2021年12月号 P.76~83より抜粋・再編集したものです。