実銃

2021/12/17

【実銃】キャリー志向のPPCカスタム「S&W Model 65 E.R.STROUP PPC Custom Grand Master」

 

 

 KフレームのPPCカスタムリボルバーがモデルガン化される。それもE.R.ストラウプの4インチモデルだ。アームズマガジンの400号を記念した限定モデルだという。それならば、このモデルをご存じでない若い読者の皆さんにストラウプカスタムの雄姿をご覧いただこう。これは80年代において、最高にカッコイイ実戦的リボルバーだったのだ。
 

STROUPカスタム

 

 6月の終わりに、編集部の松尾副編から以下のメールを受け取った。

 

 「アームズマガジンの400号記念(2021年10月号)企画として何か特別な製品を出せないかという相談を受けまして、PPC リボルバーのストラウプカスタムを提案したところ、タナカさんがモデルガンで製作してくださることになりました」コレには少々、面食らった。同じPPCリボルバーでも、デイビスとかロンパワーとかクラークとかのメジャー処ではなく、ストラウプをご指名とは。しかも、6インチではなく、まさかの4インチで作るのだという―――。

 

トップの様子。当然のように全面ツヤ消し仕上げで気を使っている。

 

 古い読者の方なら、旧Gun誌80年12月号のイチロー・ナガタ氏の記事をご記憶だろう。氏が、PPC競技を超えた実戦使用をコンセプトに特注したPPCリボルバーがストラウプカスタムだった。

 まあ懐かしい限り。41年も昔の話だ。当時は多くの読者があの銃に触発されたらしい。自分もその一人だった。しかしながら、若い読者の方々は、PPCと聞いてもたぶんピンとは来ないだろう。

 PPCとは、かつて全米で流行ったポリスの射撃訓練コースのことだ。Police Practical Combat、Practical Pistol Course、PolicePractical Course または PolicePistol Combat の略とされる。元々はFBIが1949年に考案したコースを軸に、50年代の後半にインディアナの大学がローエンフォースメント系のカリキュラムの一環として確立した。従来のブルズアイ一辺倒の訓練とは異なり、距離を変えシューティングポジションも変え、制限時間とリロードも含み、ウイークハンドも交えて最長50ヤードの距離から縦6インチ横4インチの楕円の10点リングを狙う。最初のPPCマッチは1959年、そのインディアナの大学で行なわれ、ほどなくNRAに公認されて全米へと広がっていった。
 競技の性格上、使用する銃はひたすら重く大きくなる傾向があった。リコイルを抑え込むべく極太のヘビィーバレルに分厚いリブと巨大な前後サイトを載せるといったようにだ。そうなると、Practical(プラクティカル:実用的)とは少々言い難くなってくる。デューティガンとして四六時中持ち歩くには当然しんどく、本末転倒感がやや滲み出ていた。
 ナガタ氏はこの点に着目し、もしも自分がポリスだったら、銃撃戦において犯人との距離があったり人質がいたらといったシチュエーションを想定し、パフォーマンスと携行性のバランスを重視したデザインを考えた。
すなわち、リブもバレルも細身にシェイプし、前後サイトも小振りにまとめて軽くコンパクトに仕上げ、どんな市販プライマーでも確実に発火できるようスプリングは強めのノーマルのままとし、デホーンドが主流だったハンマーは逆にワイドスパーで慣性重量も稼ぐといった具合にだ。そのアイデアを、当時シスコ界隈のベイエリアで鳴らしていたガンスミスのE.R.STROUPに持ち込んで完成したのがこの“グランドマスター”カスタムだった。

 で、だ。ナガタ氏のカスタムは6インチ銃身であり、てっきりそれ一挺のワンオフかと自分は思っていたのが、カリフォルニア在住時代の2006年に、カストロ・バレーのガンショップで一気に二挺の中古を発見。一挺は6インチで、もう一挺はまさかの4インチだったのだ。
 実に驚いた。無いはずのものがあり、しかも一挺は4インチ!

 

往年のPPCリボルバー“グランドマスター”だ。イチロー・ナガタ氏が考案し、E.R.STROUPが製作したカスタム品だ。ベースはモデル65-2(81年製)。ナガタ氏の銃は定番の6インチだったが、コイツはまさかの4インチである。

 

マズルは一段落とし。クラウンを保護するための処理だ。凸部の底は掃除しやすいようエッジを出していない。ライフリングは6条右回りだ。

 

ウイング付きのフロントサイト。シェイプはアリストクラット似だが、取り回しの便を考え極力小振りに作ってある。内側は完全にツヤを消し、ウイングの外側のみツヤを残すという細かい芸当。

 

リアサイトはイライアソンだ。コンパクトで定評があり、しかもボーマーよりオシャレ。ブレー
ドのエッジはていねいに丸められ、さらにノッチも前側を僅かに広げる加工が施されている。

 

 どっちを選ぶか、自分は相当に迷った。お値段は各900ドルで、両方はとても無理。一番人気は6インチなれど、4インチには物珍しさとともにあがない難い魅力が漂っていた。一言で言ってしまえば、それはもう「『西部警察パートⅡ』のPPCパイソン4インチ」である。 
 舘ひろし演じる鳩村刑事が、AGH製の黒ショルダーに収めていたパイソンのPPCカスタム…あのスラブバレルの4インチが異常にカッコ良かった。放映当時(82年)は「4インチのPPC ?しかもパイソンベース?」と、あまりの荒唐無稽を感じつつもクール過ぎて仕方がなく、世間でも人気が炸裂。
 自分としては、「パイソンではないにしても、短いPPCカスタムも実在したんだ!」という感動にスッポリと包まれて、4インチの購入を決めたのであった。

 

ノーマルのモデル65は手元にないので、.38Splのモデル64(74年製)と並べる。PPCカスタムにマグナムは必要ないが、長いシリンダーは見た目的に断然カッコ良い。

 

 なお、それら二挺は、日本人がショップに持ち込んだことがほどなく判明。ただしその人物はセカンドオーナーで、元々は日本人ガンスミスから受け継いだものとの事だった。残念ながら情報はそこでストップ。二挺も持っていたなんて、オリジナルのオーナーは相当な好きものだったのだろう。ああ、もっと頑張って真相を探るべきだったか。
 いずれにしても、センスは抜群に良く、かなり魅力的なカスタムには違いないから、恐らくストラウプ氏も気に入ってラインナップに加えていたのではなかろうか。自分自身は、ストラウプ氏との面識はない。が、確か90年代の中頃に、シスコのガンショーで偶然ストラウプ氏のご家族がショップの備品(ストラウプ氏の遺品)を売っていたのを目撃したことはある。また一時期、氏がカスタムした38Splワッドカッターを撃つミッドレンジの1911を所持したこともあった。金に困って売り払ったのが大後悔。今じゃマガジンだけで100ドル突破の代物だ。

 

 さて、ココで話を戻して、松尾副編も世代的にストラウプ・カスタムには惹かれたクチであり、6インチのカッコ良さは重々分かった上で、より実戦的という意味で4インチのコンセプトに注目したのだと言う。

 「作りたかったのは、KフレームのPPCカスタムです。かつてモデルガンが主流だった時代、パイソンやらNフレームの物は出ましたが、肝心のKフレームPPCカスタムは量産品では作られませんでした。ただ、今さらマッチ専用の本格的PPCカスタムを作っても時代に合わないので、マッチにも使えつつ、実用性も併せ持ち、見栄えもするこのストラウプカスタムを提案したのです」
 なるほどだ。元々ナガタ氏はストリートで使えるキャリー志向の実用的PPCカスタムを目指していた。その4インチである。さらに一歩、踏み込んだものと言えるだろう。そうやって今一度眺めれば、輝きが増してくる。

 黒が主流だったリブサイトをわざわざステンレスで特注したこだわりとオシャレ感。しかも、普通ならサイトラディウスを稼ぐべくリブの後端は思いっきり伸ばすはずが、それも控えてある。

 

4インチのスラブバレル。適度な重量残しつつ、ぎりぎりスリムにカット。素材は多分、当時主流のダグラス製。だとすれば、ツイストは1:14インチで、これに148grのLWC弾を組み合わせるのが定石だった。薄めのリブサイトはステンレスの特注品。普通ならアリストクラットの3ポジションやらボーマーのフロントアジャスタブルやらウイチタのクーリングホール付きで済ますところ。大層なこだわりである。

 

機関部。サムピースはノーマルのままだ。

 

グルーブを落としたスリムトリガーは磨き過ぎていないところが実用っぽいし、ワイドスパーのハンマーは絶対的に頼もしい。

 

ハンマーはワイド。ボリューム満点でコッキングも余裕。重量があるから不発防止にも一役買っている。シールド部に見える穴はプライマーの確認用だ。ダテではなく、しっかり見える。真似したくなるアイデアだ。

 

カウンターボアードが残るシリンダー。繰り返すが、モデル65だから.357も撃てる。スター部の細かいバリの処理も抜かりなし。

 

ストラウプのカスタムはココが結構決め手。シリンダーロッドのロッキングがS&Wと同じ方式なのだ。よくあるヨークのディテントボール留めに比べてシリンダーの開閉がスムーズ。素晴らしい。

 

 また、ストラウプのロッキングシステムはS&Wと同じだから非常に使い心地が良く、圧巻なのは右サイドのリコイルシールド部に空いたプライマー確認用の小穴だ。ナガタ氏の銃にコレはなかった。ストラウプのオリジナルかどうかは不明だが、「この手があったか」のクレバーなアイデア。
 いやはやシブい。競技用のツール然とした凄みに普段使いの軽快さが加わった、言わば公道レーサーのノリ。ベースはモデル65だから、イザとなったらマグナムだって撃てる。上品且つ華やかでありながら、戦闘能力は非常に高い。
 後にも先にも、4インチのPPCカスタムはコレ一挺しか自分は見たことがない。6インチを逃したのはもちろん惜しいが、コイツを選んで正解だったと思う。

 


 

 さらっと撃った。
 購入時点で適度に使い込んだ跡があったから、コイツは単なるお飾り銃ではなく、実際にPPCでも撃っていたのだろう。しかしそうなると、バレルの消耗がやや心配。弾着があらぬ方向へ飛ぶフライヤーは、今のところ出てないけどね。
 弾はマグナムは避け、38Spl+PのレミントンSJHP(125グレイン)を用意。できれば鉛弾を撃ちたかったが、弾不足の影響でやむなくジャケット弾となった。フロントサイトの幅広ブレイドを10点リングへ静かに乗せ、先ずはDAで発射!

 

ストラウプ発射! 4インチながら、ゆったり構えてじっくり狙える重量感。やっぱりコイツは紛れもなくPPCカスタムだ。

 

わ~、トリガーがイイ~。力強くて滑らか。絶品のドライブだ。

 

トリガーはスリム。グルーブをそぎ落とし、さらりと磨いてある。プルはノーマルっぽい圧の強さを残しつつも至って滑らか。

 

 4インチであっても、これだけ重量があれば(フル装填で1.3kg超え)落ち着いてじっくり狙えるし、リコイルも+Pが+Pに感じない。コッキングしてSAも試す。こちらも切れが爽快だ。ほんの一息の力で、ストンとハンマーが落ちる。自分はPPC時代、ほぼノーマルのモデル686で撃ち通していたけど、こんなスイートなガンで戦いたかったとしみじみ思いますです。
 50発弱で実射はあっさり終了。フライヤーは一発も出なかった。まだまだいけそう? イヤ、もう滅多には撃ちたくない。大事大事の温存コースです。

 

10ヤード両手DA3発の結果。二発がワンホールで、一発がやや下へずれた。銃も自分も、まだまだ一応現役かな。

 



 しかしながらだ。例えば日本から来た旅行者でも、飛び入りで銃を借りて参加可能なほど緩くてオープンだったPPCマッチは、とても魅力があり温かみもあった。筆者にとってはまさに青春の1ページ。
 そんな時代を思い起こさせてくれるモデルガンが、マジで完成する。この11月末より受注開始だ。基本的にはご覧の4インチを再現し、リコイルシールドの穴までちゃんと開く。大昔のPPCモデルガンは強度不足でバレルが折れるトラブルが多発したことを踏まえて、十分な強度も確保。ハンマーはコストの関係上、既存のセミワイドタイプが付き、そしてグリップは今ご覧のNill Grip風の樹脂製が装着される。期間限定の受注生産で、受注した分は100%製造とのことだ。

 

グリップはタナカ特製のターゲットタイプを装着。Nill Grip風で素材はベークライトだ。左サイドの大きなフィンガーレストと滑り止めのシボ加工が特徴的。アームズマガジン400号記念のモデルガンにはコレが標準装備となる。

 

内部メカの様子。パーツ一個一個がていねいに磨かれている。美しい風景。データは、全長233mm、全高152mm、シリンダー長42.5mm、シリンダー径36.7mm、グリップ幅41mm、バレル長90.5mm、バレル幅20mm、リブサイト幅15.5mm、装弾数6発、重量1258gといったところ。

 

 ああ嬉しい。モデルガン化でPPCカスタムが往年の光を取り戻す…までにはいかないにしても、当時を知る同好の間では懐かしさがこみ上げる逸品となろうし、若い鉄砲ファンにはきっと新鮮に映る違いない。

 筆者がPPCに明け暮れた日々から30余年。まさかこんな日が来るなんて、夢にも思いませんでした。

 

ラストは、モデル68と。CHPがS&Wに特注したリボルバーだ。登場は77年。一瞬、モデル66の6インチに見えるが、38Spl専用のためシリンダーが短く、その分フォーシングコーンが長い。タナカさんから、共栄通商とのコラボでガスガンが11月に発売。こちらも期待大だ。

 

TEXT:TOSHI

 

※この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2022年1月号 P.41~48より抜粋・再編集したものです。


 

 今回のレポートにもありました、Toshi氏が所持するストラウプPPCカスタム4インチをモチーフとしたタナカさん製造のモデルガン「モデル65 ストライプPPCカスタム」はただ今絶賛受注受付中です!

 2022年1月26日(水)までの期間限定&完全受注生産品となりますので、ぜひこの機会にお手元にお迎えください!

 

タナカ×アームズマガジン
モデル65 ストラウプPPCカスタム モデルガン

 

※画像は製品サンプルです。商品とは一部異なる場合があります。

 

DATA

  • 製造:タナカ

  • 全長:約245mm

  • 重量:約700g(カートリッジ含む)

  • 装弾数:6発

  • 材質: 本体(ABS+メッキ)+一部ステンレス削り出し専用パーツ(バレルリブ・ロッキングボルトケース)+ベークライトニールタイプグリップ

  • 表面仕上げ:ステンレス調メッキ

  • フレーム:Kフレームラウンドバット

  • 付属品:新型.38スペシャル W-capカートリッジ

  • 価格:¥60,500(完全受注生産品)

  • お問い合わせ:ホビージャパン

 

▼製品レビューはこちら

【最速レビュー】タナカ×アームズ「モデル65 ストラウプ PPCカスタム」製品サンプル到着!

 

【受注生産限定】タナカ×アームズ モデル65 ストラウプPPCカスタム 本日受注開始!!

 

ご購入方法

本製品はアームズマガジン限定の完全受注生産品となっております。

限定品のため、一般店舗では購入できません。

ご注文方法は以下の3つからお選びください。

 

  1. (1)ポストホビーWEB SHOPでのお申込み
  2.  
  3. (2)ームズマガジン2022年1月号(11月27日発売) および月刊ガンプロフェッショナルズ1月号(11月27日発売)に掲載の「ご注文用紙」によるお申込み
  4. (3)
  5. ポストホビー厚木店でのお申込み
  • お申込み期間:2021年11月27日(土)~2022年1月26日(水)
    ※ご注文用紙でのお申込みは1月14日(金)消印有効
  • お届け予定時期:2022年3月中旬予定
  • 価格:60,500円(税込)(本体価格55,000円+税)

 

※完全受注生産品につき、お支払いは先払いとさせていただきます。
※お客様都合によるキャンセルはお受けできません。
※送料として別途550円(税込)がかかります。
※ご注文数はおひとり様3挺までとさせていただきます。
※初回出荷分の製造数には上限があるため、それを上回る数のご注文をいただいた場合は2次出荷分(お届けは2022年6月頃予定)での受注となります。初回出荷分でのご購入をご希望の方は早めのお申込みをおすすめいたします。

 

 

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