実銃

2023/06/09

【実銃】ハイキャパシティ1911「STACCATO」誕生の歴史【前編】

 

STACCATO ☆ P

The Best Shooting Duty Gun

 

 

 レースガンとしてのイメージが強いSTIの2011だが、新製品であるSTACCATO☆Pモデルは、2019年から2020年にかけて全米で250以上のローエンフォースメントエージェンシーから正式に認定されるなど、デューティガンとして華麗なる大変身を遂げた。あのUSマーシャルSOGやLAPDのSWATといったエリートチームでの採用が決まり、その影響もあって全米のエージェンシーが認定に踏み切ったともいわれている。これはその社名をSTACCATOと変えて、新しい陣容で開発&マーケティングを進めたSTIが勝ち取った快挙だ。

 


 

 

STACCATO-P 

 

  • 口径:9×19mm
  • 銃身長:4.4インチブルバレル
  • 仕上げ:DLC
  • マガジン:17連、20連
  • リコイルシステム:Dawson 4.4 アダプティブツール レスリコイルシステム
  • グリップ: 2011 G2 フルレングス
  • フレーム:ビレットスティールフレーム アクセサリーレイル付き
  • 全長:8"(203mm)
  • グリップ幅:1.3"(33mm)
  • 全高:5.5"(140mm)
  • 重量:33oz(936g)

 


第二世代 2011

 

 競技射撃用にデザインされたハイキャパシティ1911である“2011”がデザインされたのは、1990年代前半のことだ。デザイナーは、ヴァージル・トリップ(Virgil Tripp)とサンディ・ストレイヤー(Sandy Strayer)の二人で、そのフレーム/ダストカバーはスティールからの削り出しながら、トリガーガードを含むグリップ部分は、ファイバーで補強されているとはいえ樹脂製だという当時としては画期的なものであった。

 

迫力満点のブルバレル。フレームには絶妙な位置にUSフラッグがレーザープリントされる

 

 その頃すでに発表されていたパラオーディナンス社のスティール製ハイキャパシティフレームに比べると、圧倒的に握り易く、軽いというエポックメイキングな製品であった。このハイキャパシティ1911は“モジュラーフレーム2011”と名付けられ、デザイナー二人の名前による“STI(Strayer-Tripp Inc.)”社から大々的にリリースされた。

 

147grデューティロードなので、それなりのリコイルはあるが、フェルトリコイル(実際に感じるリコイル)やマズルライズ(銃口の跳ね上がり)は、マイルドだ


 しかし二人の技術者の方向性の違いから、1994年にサンディ・ストレイヤーはSTI社を去り、新たに競技用フルカスタムガンを製作する“Strayer Voigt Inc.(SVI)”を設立した。これによりモジュラーフレームはこの2社から供給されることになる。

 

ブルバレルと、ファイバーオプティックがインサートされたフロントサイトが存在感を主張する。マガジンは9mmの専用デザインだ

 

 STIからは、その後も各種競技に適応したセミカスタムともいえる魅力的なモデルがリリースされるが、その価格はほぼ2千ドル以上と、その内容からすると妥当とはいえ安くなく、我々競技シューターにとっては憧れのモデルであった。1990年代後半からは、このモジュラーフレームのみのキットが売られるようになり、シューターは自分のお気に入りのガンスミスにハイキャパシティ1911を作ってもらえるようになっていく。

 

前後セレーションの凝ったデザインをご覧いただきたい。角度、指のかかり具合など洗練されている


 しかしながら、この2011フレームにはハイクオリティ、ハイパフォーマンスが故の弱点もあった。マガジンである。

 もともと競技用にロードされた.38スーパー口径用にデザインされたハイキャパシティマガジンは、供給メーカーや製作時期によってばらつきがあり、特に9mm口径にコンバートした場合はスペーサーやらフォロワー、マガジンリップの整形など、細かいチューニングが必要不可欠だったのだ。

 人によっては各社のマガジンを買いあさり、相性のいいものだけを残すというヒット&ミス方式か、私のように開き直ってカスタムマガジンチューブ(いわゆる金属製のボディ部分のみ)を手に入れ、それを1本100ドル払って専門のスミスにチューンしてもらうという時間とお金がかかる方法をとる必要があったのだ。

 

スライド後端を残したリアサイトの作り込みや、握り込んだ状態でブレンドしてしまうグリップセイフティ、新形状のビーバーテイルなど、各所に心憎い造形がちりばめてある。スライド/フレームにガタはない


 2000年代に入ると、STI社ではいくつかの変革が起き、オーナーが変わったり、外部からCEOを迎えたりといった会社の方向性が変わる事態が続く。それでも引き続き魅力的な競技射撃用セミカスタムガンはリリースされていたが、これは“それ以上でもなく、またそれ以下でもない”という状態であった。

 

スライドのトップは薄く面取りがしてあり、落ち着いた佇まいを見せる

 

前後セレーションの凝ったデザインをご覧いただきたい。角度、指のかかり具合など洗練されている

 

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Photo&Text:Hiro Soga

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年2月号 P.156-160をもとに再編集したものです。

 

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