実銃

2023/05/03

【実銃】NAVY SEALSも使用した拳銃「HK45 Compact Tactical」実射レポート

 

Heckler & Koch

HK45

Compact Tactical

 

 

ネイビーシールズも採用したHK45のコンパクトタクティカルモデル

 

 ヨーロピアンガンメーカーは.45ACP対応ハンドガンの開発にあまり積極的でない場合が多い。しかし、ヘッケラー&コッホはP9Sの時代から.45のバリエーションを加え、米国市場へのアプローチを続けてきた。現行のHK45は同社の.45オートの完成形であり、そのコンパクトモデルはNAVY SEALsも採用するなど、高い評価を獲得している。

 

前回はこちら

 

実射

 

HK45CTの実射。WinとS&Bの230gr FMJでテストした。ネジピッチが違うので今回は先月号で使用したサプレッサーは装着できなかった


 先月に引き続きSHOT SHOWのインダストリーディの会場になっているベガス郊外のレンジで実射を行なった。弾はWinとS&Bの230grのFMJ弾頭を使用した。


 筆者のHK45は11年間所持しており、これまで1,500発くらい撃ったと思うがジャムは一切起こらず問題らしい問題はまったく見当たらない。強いていえばスライドキャッチレバーの仕上げが剥げてきたくらいだ。HK45は総合的に大きな不満もなくバランスの良い.45オートという印象を持っている。

 

 

背の高いHK45CTのサプレッサーサイトの方が、ノーマルのHK45より狙いやすい

 

 HK45CTはコンパクトサイズではあるが、バレルはスレデッドということもあり、HK45より長い。短くなったグリップも大型フロアプレートによって充分な長さがある上に、装弾数も10発で変わらない(マガジン自体は同一)。ということで、この組み合わせではコンパクトさをあまり感じない。

 

 HK45とHK45CTのリコイルの印象もよく似ている。どちらも銃口初速は780fps前後と変わらずグリップサイズも事実上ほぼ同寸だし、重量差もそれほどない。スローモーション動画で確認するとスライドの前後サイクルは僅かにHK45CTの方が速い程度だが、体感的には違いはない。

 

命中精度を向上させるというH&Kご自慢のOリングだが、実際どの程度の効果があるのだろうか? 分解時はバレル後部から斜めにスライドから抜き取るので、バレル先端部との隙間に最低限のクリアランスが必要になる。そこで直径16mmのバレルから僅かに飛び出すOリングがその隙間を埋めてガタツキを減らすという非常に単純なアイデアだ。バレルを逆向きに抜き挿ししてみると確かに対抗感があるのが確認できる。精度重視する場合、1911系のようなバレルを前から抜き取れるブッシング方式が有利だ


 LAに戻ってからのHK45の追加テストではH&Kの伝統であるOリングの有無が及ぼす精度の差を簡単ながら比較してみた。結果はあってもなくても劇的には変化しないが、Oリングの効果は僅かだが感じる。消耗品なので使い続ければ切れる時がやってくるが、切れたら途端に精度が下がるなんて事はない。

 

 HK45は基本であるV1仕様だが、もし本格的にキャリーガン等の実用品として使うならLEMトリガーのV7仕様にコンバートするだろう。

 

1種類の弾(LAX 230gr FMJ弾頭)で15mから5発×3回という限られたテストだが、Oリング装着状態と外した状態で精度の比較をしてみた。左がOリングなしで、右がOリングありの結果だ。Oリングなしでは平均52mm、最小46mm、Oリングありでは平均49mm、最小36mmという結果で、限定的だが今回のテストではわずかに精度アップという結果が出た。但し、その差はわずかで、Oリングがなくても極端に精度が落ちるという心配はない

 

 2019年7月号で紹介したP30Lにも内蔵されていたもので、使用感を例えるとプリトラベルをかなり長くしたストライカー方式のSAに匹敵する。初弾を撃つためにはDAと同じ距離を引く必要があるものの、ハンマースプリングは既に圧縮されており、トリガーリターンスプリングのテンションしか掛かっていないので楽にSAポジションまでたどり着く。したがって実質的にはセイフティを掛けずに安全に初弾が撃てるSAオンリーという具合だ。

 

 それに加えてLEMには不発の際にそのままDAに切り替わり再度トリガーを引けばプライマーを叩けるセカントストライクケイパビリティが備わっている。これはVP9/40にはない利点だ。

 

 

HK45CTとHK45のリコイルの比較。小型化されてもバレル長はほぼ同等でグリップも長く、安定感もあるため、跳ね上がりもリコイルの感じもかなり似ている

 

スライドの前後の作動サイクルは、ごく僅かにHK45CTの方が速いがスローモーションビデオで確認できる程度で体感的にはほぼ同じだ

 

 ユーザーの好みを反映して様々なトリガーに変更可能なUSPから続くコントロールレバーによるモジュラーアプローチの魅力は、最新のHK45シリーズを支え続けている。それが冒頭に述べた、“VPシリーズが発売されてからもハンマー方式の人気を完全に奪い取るには至らない理由”であると思う。


 HK45CTは作動不良もなくテストを終え、フルサイズ同様の信頼性の高さを感じた。10連マガジンを装着すればフルサイズと遜色ない安定感と射撃のしやすさがあり、コンパクトさを優先したい時には8連マガジンと通常バレルに交換すれば良い。

 

 米海軍特殊部隊がHK45C/CTを選択した理由もよく解る。Mk 23 Mod 0が極端に大きなモデルで使用条件が限定されていた事に対する改善策でもあったからだろう。いつかサプレッサーやレーザーエイミングモジュールを装着しMk 24 Mod 0に近い姿にしたHK45CTの実射テストも行ないたい。

 

 

LAに戻ってから筆者のHK45とMr.Ikedaのコルト1911ガバメントXSEを比較し追加テストを行なった。実射モデルはコロナ自粛から久々に外出して開放感全開のがい君だ。Special thanks to Mr.Ikeda

 

フルサイズのHK45の実射。11年所持しているHK45だがこれまで作動不良など一切の問題を経験したことがない

 

今はなき名ガンスミスのJim Hoag(ジム・ホーグ)氏にトリガージョブしてもらったコルトのXSE。HK45の説明書にはグリップアングルはM1911のプロファイルとマッチするようにデザインしていると解説されている。握り比べてソックリとまでは思わないが大まかにフィーリングやバランス感は近いものはあると思う。​​​​​パーツ交換等ややカスタマイズしたもので重量1,200g。HK45よりも撃ちやすさでは勝っている

 

 

1911ではサムセイフティを解除し親指を乗せて撃つのが一般的だ

 

HK45のコントロールレバーは、水平位置のファイアポジションにしたとき、手応えのあるクリックがあって、セイフティレバーを押し下げた勢いでそのまま下に回転させてデコックしてしまわないように考慮されている。しかし、コントロールレバーに親指を乗せたまま撃つと跳ね上がった瞬間、ハンマーをデコックさせるほどレバーが下がってはいかないが、若干ずれ落ちているのがわかる(ビデオからのキャプチャなので電子シャッターの関係で銃全体が歪んでいるが)。P30では側面にセイフティレバーがあるモデルでも、デコッキングレバーがP2000のようにフレーム背面に分割されていて、その方が理想的だと思う。両手保持の場合、親指の下にサポートハンドが加わってレバーは殆ど下がらず、問題なく射撃できるので基本的には心配は要らないが、片手保持ではレバーには力を入れ過ぎないように意識するか、あるいはデコッキングレバーを省略したV9/V10にするのも手段だ

 

HK45及びそのコンパクトであるHK45CTを今回テストしてみて、現在市場にあるハンマー方式の.45ACPオートとしては、非常に完成度の高いモデルだと感じた。エクステンション付きの10連マガジンならHK45Cはフルサイズに近くなり、逆にコンパクトさを優先するなら8連マガジンという使い分けもできる。どちらかを選ぶなら個人的にコンパクトがお勧めだ

 

Photo&Text:Gun Professionals  LA支局

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2020年8月号に掲載されたものです。

 

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