2023/05/14
【実銃】三八式のレアモデル、三八式騎兵銃の実射性能とは?【後編】
Arisaka Type 38
ScoutRifle
約40年間ショップの片隅で埃をかぶっていた旧日本軍三八式に命を吹きこみ、ハンティングライフルとして現役復帰させる…そんな気分で始めたのが今回のプロジェクトだ。セミオートで撃ちまくるのではなく、一発入魂のボルトアクションで勝負する。ベースとなるのは三八式騎兵銃…、「そんな名前の銃は聞いたことがない!」という声が聞こえてきそうだが、昭和15年頃に作られた旧日本軍の改造ライフルだ。これにちょっと手を加えるだけで、アグレッシブなスカウトライフルに変身する。
実射
今回使用の6.5mm×50はすべてリロードアモである。リロード弾のスペックはノルマケース/120gr Hornady/IMR 8208 XBR 36gr、銃口初速2,777fps、エナジー2,000ft.lbだ。22.5"と短いバレルながらオリジナルに優る性能となっている。
もともとオリジナルミリタリーカートリッジの性能が列強国の採用カートリッジに比較し、弱かったことがデータからも知ることができる。三八式はリコイルも小さく、撃ち易かったといわれる理由はここにあるのだ。
一般論ではあるが、効果的なマズルブレイクがかった当時の銃器は、“リコイルが小さい=威力がない”であり、三八式はまさにそれだった。九九式が日本兵に歓迎されなかったのは、リコイルが大きかったからだともいう。戦後、自衛隊の前身である保安隊が創設された時、米軍倉庫に山となっていた九九式のチェンバーを.30-06用に改造、保安隊員に使わせたという。リコイルが強いということで評判はよろしくなかった。その後、米軍兵器が供与されたことはご存じの通りだ。
スコープを装着する前にアイアンサイトで100ヤードから撃ってみた。既に述べたようにフロントサイトの高さから戦闘照準でのインパクトはかなり下目となった。リアサイト(梯子)をアップし調整後、なんとかエレベーショイトツールをその時持っていなかったこともあり、ウインデージはホールドした。若い眼との違いもあり、Vノッチでの射撃は難しい。ピカティニーレイルの装着は、広範囲なアクセサリーの装着を可能とし、かつてのボルトアクションライフル/アイアンサイトだけだった三八式に拡張性を与えた。
ピストルスコープ7×32フィックスド、2-8×32、4×といろいろ装着し、操作してみて感じたのは、シンプルなVector 1×20×28とフラッシュライトの組み合わせが一番だった。目的は野豚ハンティング用なので100ヤード以上で撃つチャンスはほとんどない。フラッシュライトとVectorの組み合わせはまさに貧乏人のナイトヴィジョンである。ナイトヴィジョンの有効性能にはかなわないが軽快性、経済性となるとフラッシュライト+Vectorも捨てたもんじゃない。
暗くなっても強力なフラッシュライトとの併用でそれほどのハンデになるとは思えない。それについては実猟で確かめよう。最近、流行してきたのがThermal Imaging Hunting Scopeだ。値段はピンきりだが5,000ドルでしかもコンパクトな優れものが登場してきている。しかしこの価格帯じゃ筆者には高嶺の花だ。野豚猟にそれほどハマっているわけではないからでもある。
筆者のこのクラスのライフルとしては、AR系口径.300 AAC Blackoutがある。各メーカーのパーツで組み上げたものでブランドメーカー製ではない。アクセサリーパーツ類がARスタンダード規格で作られているので組み立てる側にはありがたい。リロード弾は220gr/W-W296 10.3gr/1,200fpsの性能だ。オプテイカルサイトはこれまた古いタスコのレッドドットサイトだ。故障知らずなのはありがたい。このクラスのタスコ製サイトは3本持っているが一本としてサービスに送ったことはない。ファンシーなサイトではないが基本的な機能は備えている。
野豚云々に終始したリポートとなったが、三八式+ドットサイトでも鹿猟に使える。もちろんMaxは100だろう。素早く狙うとなるとスコープに優る。なんといってもコンパクトなサイズが大きなメリットだ。
ただしVectorのようなヘッドアップディスプレイは、全天候性ではないので猟にはチューブタイプのドットサイトを薦める。日本には多くのボルトアクションハンティングライフルが輸入されているのではないかと思う。しかし旧日本軍用ライフルをハンティングに使いたいと思う読者もおられるに違いない。ミリタリーライフルの恰好だと許可にならないのであれば(ミリタリーったって80年も前の骨董品だが…)、アクション、またはバレルドアクションだけでも輸入し、カスタムライフルとすることも法的に可能ではないかと思う。
カスタムアクションは、サージャン、BAT、ケルブリーなどいろいろあるが、日本人として三八式、九九式のアクションでハンティングライフルを組み上げるというのも、とても渋さがあって良いのではないだろうか。
Photo&Text:テキサス支局
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年3月号に掲載されたものです。
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