2023/05/13
【実銃】新生三八式騎兵銃をスカウトライフルに ディテール&弾薬【中編】
Arisaka Type 38
ScoutRifle
約40年間ショップの片隅で埃をかぶっていた旧日本軍三八式に命を吹きこみ、ハンティングライフルとして現役復帰させる…そんな気分で始めたのが今回のプロジェクトだ。セミオートで撃ちまくるのではなく、一発入魂のボルトアクションで勝負する。ベースとなるのは三八式騎兵銃…、「そんな名前の銃は聞いたことがない!」という声が聞こえてきそうだが、昭和15年頃に作られた旧日本軍の改造ライフルだ。これにちょっと手を加えるだけで、アグレッシブなスカウトライフルに変身する。
ピカティニーレイル
三八式を含めた第二次大戦列強国のボルトアクションライフルコレクターは多数存在する。好みからいろんなタイプのコレクターがいるのだが、銃を眺めたりいじったりするのは好きだが射撃に興味がない、価値が下がるので射撃はしない…といったコレクターは結構な数がいる。アンケートなどをとって調べたものではないが、シューティングレンジでこれら旧式銃を見かけたことはこの20年、数えるほどしかない。1970年代はレンジに行けばこれら軍用銃で射撃している御仁をよく見かけたものだ。
昨今、三八式、九九式などをレンジに持ち込もうなら“それなんですか?”という質問されるのが落ちだ。射撃好きが同時に銃器に精通しているとは限らないからだ。
余談はともかく、コレクションであるこれら旧式銃に余計なベーススクリュー加工(穴あけ/ネジ切り)をせずにピカティニーレイルを装着するとなると方法は一つしかない。リアサイトのベースをそのまま利用しての装着だ。
1970年代までならこれら旧式軍用銃用としてウィーバーベース(ピカティニーレイルのルーツ)キットが販売されていた。Bスクエア社は1960年代から1980年代末にかけ、旧式歩兵銃用にガンスミスを必要としないスコープベースキットを発売していた。それらには三八式、九九式用も含まれ、加工を加えず射撃したいシューターに重宝された。リアサイトベースもいろいろありで、ケースバイケースだがじゅうぶんな強度が保てないケースも見られた。
今回、入手のキットも基本デザインはBスクエア製品とおなじだが、改良箇所もみられる。Bスクエア社は米国テキサス州のメーカーだが、今回e-bayから入手した製品にはメーカー名も生産国名もない。$30以下の価格からたぶん、中国製ではないかと思う。Bスクエアの欠点を極力補うデザインとなっていた。取り付け要領などは写真を参照されたい。
ロングアイリリーフスコープ
アイリリーフとは接眼距離のことだ。スコープサイトの接眼部からシューターの眼までの距離をいう。適正アイリリーフはコンベンショナルスコープで2-3"(50-75mm)ぐらいだ。シューターが接眼レンズを覗いた時、視野がMaxで見られる位置が適正となる。シューターの眼または好みによりプラスマイナスはある。
一方、ロングアイリリーフは、名前からもわかるようにこの接眼距離が9-10"(230-250mm)ぐらいのスコープを指す。別名エクステンデッドアイリリーフスコープ、またはスカウトスコープ、ハンドガンスコープとも言う。
もともとロングアイリリーフスコープは、アクションの上方にケースをエジェクトするレバーアクション、または旧軍用ボルトアクションライフル用にデザインされたスコープだ。コンベンショナルスコープをアクション左側面に取り付けストックをキャストオフ、または特別なチークピースとするアイデアもありだが短所もある。
ロングアイリリーフスコープはレバーアクションライフル全盛時代から存在したアイデアで別に珍しくはない。1970年代ごろからハンドガン用としても普及、今日に至っている。日本にはロングアイリリーフスコープを必要とする銃器の数は少ないはず。それもあってあまり輸入されていないタイプのスコープではないかと思う。
覗いた感じだが、コンベンショナルとはかなり違いがある。例えだが、コンベンショナルスコープは望遠鏡そのものなのだが、ロングアイリリーフスコープはスマートフォンや液晶画面のデジタルカメラで写真撮影するときのように、ファインダーを覗くのではなく、腕を伸ばしてスクリーン見ながらシャッターを切る感じに近い。一見、画面の詳細が見難い。そのためもあってか、倍率はほとんどが8倍あたりがMaxとなっている。その一方で、狙っているものだけでなく周囲の広い視野を同時に確保できるというメリットがある。別名のスカウトスコープのScoutは斥候/偵察の意味はここから来ているのだ。
今回、選んだロングアイリリーフスコープはタスコ 2-8×32mmズームSFP、タスコ 7×、Leopold 4×だ。いずれも20年以上前のスコープで最新モデルではない。
これまでルガーブラックホーク.44マグナム、デザートイーグル.50AE 10"モデルで使っていたものを外して、三八式に取り付けた。現在、ロングアイリリーフを必要とするライフルは所持していない関係もありこのタイプのスコープはここにあるだけだ。
本誌ライターのトルネード吉田氏は、昨年、ウィンチェスター モデル1895用にバーリスのロングアイリリーフスコープを入手、本誌2020年11月号と姉妹誌の「ガンズ&シューティング Vol.18」で紹介している。クラシックなレバーアクションライフルにスコープを載せるには、やはりこのタイプを選択することになる。
併せてダットサイトも用意した。タスコのレッドダットサイトは20数年前のもの、そしてもう一つ、用済みとなった旧型EOTechだ。但しこのモデルは配線故障がたびたびあり、これまで何回もメーカーに送った。今も調子が悪いが、送り返してサービスを受けるのにも疲れた(笑)。最新ものはVector レッドダットサイト1×20×28mmのみだ。Vectorについては実射の項で触れたい。
旧日本軍歩兵銃のアモ
読者からの質問の一つなのだが、ここでスペースを借りて回答したい。もし6.5mm×50、7.7mm×58のケース(薬莢)の入手がままならない場合はどうすれば良いのか?というものだ。ご自身がこれらを使う銃をお持ちなのか、あるいは単なる興味なのかは不明だ。
これまで6.5mm×50、7.7mm×58カートリッジのアモ、そしてケースの供給元は何十年とNorma(ノルマ)1社だったのだがこれも製造中止となって久しい。世代交代なのか旧軍用銃を撃ちたい者の数が減り、需要が落ち込んだのが中止の原因であろう。長いこと銃砲屋の棚で埃を被っていた日本軍用銃アモも既に売れてしまった。需要が落ちたといってもハードコア旧日本軍歩兵銃射撃愛好家は米国内各地にいる。
正直に言わせて貰うと、元々ノルマのケースは好みじゃない。リローディングするシューターなら筆者の言う意味がわかるはずだ。リローダーが好むケースはフィンランドのLapua(ラプア)社製だ。筆者もこの何十年、6PPC 、6.5mm-284そしてマグナム用としてはラプア以外使わない。しかしラプア社はマイナーなカートリッジには手を出さない。賢明な判断だが、金にならないことには手を出さないということかもしれない(笑)。
ノルマは旧日本軍アモからバイバイとなったが、アモの総合メーカーとして成長してきているセルビアの大手アモメーカーPPU(Prvi Partizan)は最近になり、6.5mm×50、そして7.7mm×58のケースをカタログに加えた。アモはリストアップされていないがケース販売だけでもありがたい。筆者も1パック50発ばかり購入したが、まだ使っていないので性能についてはなんとも言えない。
“ケースの入手がままならない場合はどうすれば良いのか?”に対する一番簡単な回答(日本で使う場合)は、業者に頼んでPPUを輸入して貰うか、個人輸入すれば良いとなる。松尾副編によれば、アモの個人輸入はほぼ不可能だが、ケースなら可能だそうだ。彼自身も、まだ6.5 Creedmoorのケースが日本に輸入されていないとき、輸入許可を取得して自分で輸入したという。
ここからはそれとは別の方法を述べる。両カートリッジについて書こうものなら話が長くなるのでここでは今回のリポートと関係した6.5mm×50について述べてみたい。カートリッジケースには系列というかパターンがある。例えば.243Win、.260Rem、7mm-08、.308Winは基本的には同じケースで口径が違うだけだ。.30-06、.25-06、.270Win、.35Whelenにも同じことが言える。元々は.30-06なのだ。.308も含め、いずれも公称ヘッド径は0.470"だ。
ということは、.30-06のケースからいろんな口径のここで列挙したカートリッジケースが作れることになる。もちろんマグナム、リムドケースにも系列があり、系列外となるとどう試行錯誤しても互換性がない。.308/7.62mm×51のケースから6.5mm×50は作れないのが一つの例だ。
6.5mm×50の公称ヘッド径は0.451"だ。ところがノルマが発売していた6.5mm×50のこの部分の径は0.443"しかないのだ。チェンバーのこの部分の内径が0.452"ぐらいあるので発射のたびにケースが膨らみ、弱装弾を撃つ分にはさして問題とはならないのだが、RCBS発売の6.5mm×50のリローデイングダイもノルマケースに合わせ矯正したとき0.443-0.444"となってしまう。
発射後、膨らんだケースは7-8/1000"もリローディングするたびに元のサイズに戻されるのだ。写真で見られるように、どうしてもこの部分がヘタる。最悪の場合、ヘッドセパレーションが起こる。もともと三八式アクションはヘッド破損に対処したデザインが完璧なので、シューターに危害を及ぼすことはない。
どんな理由でノルマケースの寸法が決められたのだろうか?これは推測だが、戦後、どの米国内アモメーカーも6.5mm×50の製造販売には興味を示さなかった。そのため射撃したい者は.220Swiftに目をつけた。.220Swiftのヘッド径は0.445"だった。セミリムドケース(リム径0.466")で6.5mm×50(リム径0.467")との類似性もあり、サイズも6.5mm×50よりわずかに小さいだけでエキストラクテイング機能に問題がなかったからだ。
難点はヘッド径だった。RCBS社も6.5mm×50のリローデイングダイを発売するにあたり.220Swiftケースを使うという前提で寸法が決められたようだ。既に市場には数多くのRCBSリローデイングダイがあり、寸法上の混同を避けるため寸法の間違いを承知でダイの寸法をきめたのではないかと考えられる。PPU発売のケースもノルマ製とほとんど寸法が違わないことを知り、再確認した次第だ。
以上は資料として読んだものではなく筆者個人の推測であり定かではないが、“当たらずとも遠からず”ではなかろうかと思う。間違っていたら申し訳ない。
じゃ.220Swift以外使える6.5mm×50に転用できるカートリッジはないのか? .35Remというカートリッジがある。1908年、Remington Model 8セミオートライフル用として登場したカートリッジである。現在も発売されているカートリッジなので入手可能だ。
ヘッド径はほぼ三八式6.5mm×50のチェンバーにマッチするのだが、口径が.35だ。これを6.5mmにネックダウンしなければならない。まずリサイジングワックスをまぶし、.308リサイジングダイで.30に絞る。その後、7-308リサイジングリーマで7mmに絞る。そして最後に無理やり6.5mm×50のリサイジングダイで6.5mmネックとする。
本来ならヘッド径を大きめに変更したリサイジングダイセットを使うべきなのだが、所持していないのでここではネックダウンの要領だけ知ってもらえば幸いだ。ネックダウンも段階を経なければならず手間がかかる。これだけネックダウンすると、どうしてもケースに凹み、そしてシワがでる。
.35Remingtonケースはもともと6.5mm×50より短いケースだが問題はない。ネックダウンしたとき注意しなければならないのはネックの厚さからくるチェンバーとの適合性だ。ネックダウンが終了したら6.5mmブレットをシーティングし、定められた全長とする。プライマー、パウダーなしのダミーであることは語るまでもない。
ネック部の外径を計測、.290"前後を確保できたらOKとなる。確認のためチェンバーに装填、ボルトをクローズしてみる。それがOKならプライマーを取り付け、パウダーをチャージ、ブレットをシーティング、ファイヤーフォームすることになる。
通常ロードの80%ぐらいでまずはスタートする。.35Remingtonはリムレスカートリッジで、リムの直径は.460"だ。一方、6.5mm×50セミリムドケースの直径は.467"ある。7/1000"の差があって機能するのか?筆者のテストではOKだった。サイズから見て6.5mm×52カルカノも候補としてあげられそうだが、カルカノケースは使えない。問題はリム径が6.5mm×50より18/1000"小さいため、エキストラクターがうまく作動しないからだ。
写真で見られるように凹みはなくなるが、皺は残るかもしれない。以上がケースネックダウンの基本的ノウハウである。ただし.35Remingtonケースを使うとなると、適正サイズのリローディングダイが必要だ。もしあなたがガンスミスでダイを作るとなるとツーリングでかなりの散財になる。ダイ専門メーカーに頼んでも断られるか、または請求額で吃驚することになるかもしれない。一昔前の情報だが米国にもカスタムケースメーカーは存在するが、ミニマムオーダー5万個と聞いた。今じゃ3万個でもOKとか…大々的に販売するというのであればそれもありだろうが…。
Photo&Text:テキサス支局
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年3月号に掲載されたものです。
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