2023/04/23
【実銃】高精度な.300 AAC Blackout口径の実力を解説!
B&T SPR 300
Cal.300 AAC Blackout
Bolt Action Rifle
目立たないながら異色の光芒を放っているのが、B&T AG社が数年前にリリースしたSpecial Purpose Rifle(SPR)300だ。このローエンフォースメント用として、限りなく静かな発射音と携帯性を追求して生み出されたボルトアクションスナイパーライフルにスポットを当ててみたい。
.300 AAC Blackout
.300 AAC Blackout(7.62×35mm)口径は、2010年にAAC(Advanced Armament Corporation)によって、ARプラットフォームのバレルを交換するだけで7.62mm口径の弾頭を発射できるよう開発された弾薬だ。
デザインの基本コンセプトは5.56×45mmNATOのケースをベースに、AKライフルでポピュラーな7.62×39mm弾と同等な威力を発揮できる新弾薬を作り出すことにあった。これまでにも6.8mmSPC(6.8×43mm)や6.5mm Grendel(6.5×39mm)など似たようなコンセプトで開発された口径もあったが、ボルトの交換が必要だったり、マガジンの装弾数が少なくなったりといった細かい支障があり、ポピュラーにはなりえなかった。
その点、バレル交換だけで口径スイッチができる.300 AAC Blackoutは、そのコンセプトが浸透しているだけでなく、中型獣のハンティングに向いていることもあり、結構ポピュラーな口径として認知されつつある。
今年の春頃、ウィルソンコンバット社の.300 AAC Blackout口径“Recon SR Tactical”というモデルを撮影のためにしばらく預かったことがあった。私が写真を撮り、友人がレポートを書くというプロジェクトがあったのだ。いわゆるAR-15プラットフォームで、ハンターでもある友人は雑誌社からロードの違うアモをたっぷりと送ってもらい、ゼラチンからコンクリートブロックまでを撃ちまくり、おこぼれに与った私も楽しい撮影をさせてもらった。
もし私がサプレッサーを所有できる場所に住んでいたなら、勢いに乗ってこのARを買ってしまっていたかもしれない。そのリコイルと威力、悪くはない精度、そしてサプレッサーの効き具合に惚れ込んでしまったのだ。
10インチほどのバレルに、OSS社あたりの短めのサプレッサーがあれば、セルフプロテクションからホグ(野生豚)ハンティングまで使えるオールラウンドARが所有できることになる。友人とともに結構盛り上がってしまった。
唯一の問題点はファクトリー弾の価格が高いこと。1発の値段は、かなり安くても50セントで、性能のいい弾頭を使ったアモは1発1-2ドルしてしまうのだ。30連マガジンを気持ちよく2本も連射してしまえば100ドルを超えてしまいかねない。
エンプティケース(空薬莢)を1,000個も持っていれば、比較的安価な7.62mm用弾頭は手に入るので、やはり自分でリロードする覚悟が必要になってくる。
もし口径の変更が簡単なリローダーが手に入ったら、真剣に.300 AAC Blackout口径ARカービンを手に入れてしまう予感がしているのも確かだ。
ところで、.300 AAC Blackout口径についての話をいくつか紹介したい。私の友人であるレポーター氏も言っていたのだが、火薬量の少ない.300 AAC Blackoutでは9インチまでのバレル長が有利で、それ以上の長さにしても銃口初速が上がるわけでもなく、無駄となる、というまことしやかな話がある。
ウィルソンコンバットのリーコンモデルをテストする際、着実なARモデルを作ることで知られているFERFRANS社に協力してもらい、10.3インチと16インチのモデルを借り受け、レポーター氏がもらい受けた110grから220grまでの弾頭における銃口初速を計測してみた。銃身長が長くなれば、明らかに銃口初速も初活力も向上している。
上記のアモの場合、110grから150grまでがスーパーソニック弾、220grがサブソニック弾ということになる。私の個人的な好みから言えば、やはりセルフプロテクション用には110grの初速とエナジーが好ましい。サプレッサーの使用が必要な場合のみ、サブソニック弾を使うというのが理想だ。
あと、今回のB&T SPR300モデルでは、1990年代からある.300 Whisper口径も撃てるとされているが、ARシステムから.300 AAC Blackoutを撃つ場合、この二つの口径を混同しないほうがいい、という話がある。
この.300 Whisperというのは、トンプソンTCコンテンダーなどの競技用単発銃などでよく使われる“ワイルドキャット”と呼ばれるカテゴリーに入る弾薬で、厳密にいうとケースのデザインに違いがあり、SAAMIスタンダードのカテゴリーには入っていないため、腔圧が高すぎるなど、特にガス圧をオペレーションに使うAR等では、発射に危険を伴うこともある。堅牢なボルトアクションライフルでは問題ないが、気を付ける必要があるだろう。
また、.300 AAC Blackoutは精度的にやや問題のある口径だという話もある(エレンもそんなようなことを言っていたが)。しかし以前テストしたウィルソンのリーコンは、110gr弾頭のファクトリーロードで、600ヤード先のスティールターゲットをほぼ外すことはなかった。問題の無い高精度といっていいだろう。
今回のB&T SPR300は、カリフォルニアに住むシビリアン(一般人)である私には、合法的に所有できないという理由で、やや遠い存在だ。精度的な結論は今後のテストに委ねられるが、相性の良い弾頭を見つけられれば、400ヤードほどまでは問題ない精度を持っているという予感はしている。各部の造り込みにも好感が持てるが、いかんせん小売価格が5,500ドルというのは考えさせられてしまう額ではある。もし.300 AAC Blackout口径のARを所有しており、スーパーディスカウントの機会があれば、という前提ならば、魅力的なモデルなのは間違いない。
Photo&Text:Hiro Soga
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2020年1月号に掲載されたものです。
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