2023/02/12
【中編】ハイレベルなプロフェッショナルツール「グロック19 Gen5」の軌跡を辿る【実銃】
第一世代(Generation 1/Gen1)
1986年1月から米国に輸入されたモデルを指す。AH000,AK000,AL000などのロッドナンバーだ。バレルの外径が13.47mmとなっていた。すでに触れた通り、オーストリア陸軍採用モデルである。その後、1987年から輸入された17のバレル外径は14.47mmと太くなった。米国はリローディングが盛んでホットロードによる事故に対処したのがその理由だと聞いた。わずか1mmの増加であっても強靭性は飛躍的に増加する。そしてこれもGen1に該当する。本来ならバレル外径14.47mmモデルはGen1.1、あるいはGen1.5とかにすべき改修だ。最初期モデルとはバレル、スライドに互換性がないからだ。この細身のバレル付きの最初期モデルは数が少なく、現在ではペンシルバレルモデルと呼ばれ、コレクター間でエライ高値を呼んでいる。
Gen1の米国サイドからみた一番の欠陥はグリップフレームとマガジンの関係だ。マガジンキャッチを押した時、空マガジンなら自重で何とか落ちるが、カートリッジが装填されたマガジンならマガジンキャッチを押しながらマガジンボトムをつかんで強引に引き出さなければならない。オーストリア陸軍が望んだいわば脱落防止機能だ。マガジンが空になった時、マガジンが抜けるのならいいではないか…という意見もあろう。しかしこれは米国市場じゃ歓迎されなかった。
さらにグリップの滑り止めテクスチャー(肌触り)ものっぺりし過ぎていて粘土系の泥にでも浸かったら滑ってしまう。グリップフレームとマガジンについてはこの時点で改善されなかった。実際に両モデルを所持してるのでこの点については間違いない。
第二世代(Generation 2/Gen2)
1988年、グリップフレームの前部、後部に滑り止めのグルーヴが備えられ、グリップの握りが飛躍的に向上した。今回のリポートの中ではレーザーサイトを組み込んだGlock 19とGlock 21がこれに当たる。同じ時期の Glock 17も同じようなグリップを採用したが、これは所持していない。Glock 21(.45ACP)ではロッキングブロックの大型化に伴いクロスピンが2本となった。
第三世代(Generation 3/Gen3)
1998年、ユニバーサルグロックレイルと呼ばれるクセサリーレイルをダストカバー部を備えた新型が登場し、この頃から、Generation 3という呼称が識別のために持ちいられるようになり始めた。レイル装備とともにグリップ両側面にくぼみが付き、これはサムレストとして機能する。さらにフレームの前面にはフィンガーチャネル(指が1本ずつ収まるような突起)が加わった。またエキストラクターを一部ステップつきに改造、カートリッジローデッドインジケータの機能を持たせた。
内部パーツでは口径9mm×19でもロッキングブロックのピンを1本増加、計2本となった。後退するバレルのトラストを分散させる目的だったという。Glock 37だけなのかもしれないが、スライドストップの指かけ部分が高くなり操作性が向上した。
またスライド下部の両側面がやや丸くなり、前面も両側面から絞ったような傾斜付きとなった。従来の角の立った箱型のスライドではなく、一段と洗練されている。従来までブラックだったグリップフレームはダークアース、オリーブなどの色も選択できるようになった。
レポートの中のGlock 37がGen3にあたる。まだスライド側面にGen3と刻印されていない。2009年、G22にRTF2(Rough Textured Frame 2)モデルが加わった。粗い滑りにくいグリップフレームのパターンが採用されており、これは他のモデルにも波及した。
第四世代(Generation 4/ Gen4)
2010年、初めてデュアルリコイルスプリングアッセンブリーを採用したGlock17、22が登場した。リコイル軽減を目的とした改良だ。グリップフレームはこれまでのRTF2を更に改良したものとなり、握った感触が一段と改善された。何といっても一番の特徴はグリップ後部がサイズ、形状の異なるバックストラップに交換可能となったことだ。これは1997年に登場したワルサーP99が採用し、その後、多くのメーカーが導入したもので、グリップの太さを調整できないポリマーフレームの握り心地を改善する機能がある。Glockは遅れること約13年でこれを取り入れた。これにより、使用者の好みに合わせたグリップの太さが選択可能となった。Glockの場合、他社とは違ってバックストラップを取り外すのではなく、ベーシックサイズがあってそれに被せていく。これで5通りの太さが選択できる。Gen4 のベーシックグリップサイズはGen3までと比べ、若干小さめとなっている。しかし大半の者がベーシックサイズで違和感はない。そしてまたマガジンキャッチを入れ替えることで、左右切り替えを可能とした。これも他のほとんどのメーカーが既に導入していた機能で、Glockがこれを取り入れたのは遅すぎるともいえる。あらかじめ両側面からリリースできるマガジンキャッチはワルサーP88やH&K USPで採用されたが、これはあまり普及していない。
そしてこのGeneration 4から、スライド側面に“Gen4”と明確に刻印されるようになっている。Genと4の間にはスペースもピリオドもないGen4だ。
Glock Gen1以来、複数モデル愛用している筆者に言わせてもらえば、Glock 21などの.45ACP、および10mmモデル以外は、握りにくい、大きすぎる、何とかしなければ撃てない、といった経験はない。たとえ初めは違和感があっても、百発も撃てば慣れるというレベルのものだ。グリップアングルが慣れ親しんだ1911と違うため、初めて手にしたG17 Gen1には少々戸惑いを感じたが、これもすぐに慣れた。
第五世代〈Generation 5/Gen5〉
Gen5のパーツ展開図からその形状等の違いを見てもらいたい。
展開図からは判らないが、バレルのライフリング形状がこれまでのポリゴン(polygon:多角形)の遠い親戚というべき従来のスタイルから、エンフィールド型に変った。リローダーによるキャストブレットやカッパープレーティングブレット使用から来たボア内のこびり付きなどからくる異常高圧による危険性を回避するための改善だという。メーカーによればエンフィールド型になってアキュラシーが向上したそうだ。しかし以前は“ポリゴン系なのでアキュラシーに優れている”と宣伝していたと記憶しているが…これは筆者の聞き違いだろう。たぶん(笑)。
これまで何回となく述べてきたが、現時点ではエンフィールド型が総合的に見て一番なのだ。アフターマーケットにはGlock用バレルが多数存在するが、そのライフルリングはほとんどエンフィールド型だということもそれを示している。Gen5のバレルは、オートピストルのバレルマズルクラウンには珍しいボアのエッジの保護を確実にするためのリセットクラウン(またはステップクラウン)となっている。Gen3、4ではロッキングブロック部のピンは2本だったが、Gen5ではそれが1本とGen1、2のデザインに回帰した。もっともGlock19Gen5だけがそうなのか定かではない。先にも触れたがストライカー/ストライカーセイフティのデザインが変更となった。そしてまたストライカー先端の舌先も変更され、自然水晶の先端のような形状となった。大きな違いは外見からもわかるようにスライドストップがアンビとなったことだ。これについては意見も様々、Glock誕生以来38年を経た今日まで、それほど組み込みが困難でなかったにもかかわらずアンビとしなかった理由だが…スライドリリースは基本的にスライドを掴んで行なうことを前提としていたことが関係している。しかし近年はアンビが当たり前となり、それを備えていないのでは具合が悪いことから組み込んだのであろう。
Gen3以降、グリップフレームのフロントストラップ部分にフィンガーチャネルがあったが、Gen5でこれがなくなった。
第5世代がこれまでのGlock総決算という意見もあるが、ユーザーサイドからは様々な意見が交差している。
Glockトリガー
購入時、ファクトリーで組み込まれたGlockトリガーは競技射撃にハマった連中にはスポンジのような感じということで評判がよろしくなかった。普通に使うにはファクトリー物で十分なのだが…それもあっていくつかのカスタムGlockトリガーがアフターマーケットに存在する。やっとGen5になって幾分改善されたという意見が多い。筆者はGlockピストルでの競技をやらないので所持するすべてのGlockはファクトリーオリジナルのトリガーが付いている。そしてまたこれで満足している。もう少し理屈をつけて、ああだ、こうだ、と言いたいところだが…本格的に競技をやっていないと詳細がわからない。これが正直なところだ。ライフルトリガーについてなら言いたいことがいろいろあるのだが…(笑)。
この辺の詳しいことはGlockで競技に参加するライターに、いずれカバーしていただこう。
筆者のGlock
筆者は元々Glockファンで、初期のオーストリア陸軍P80/G17、そしてその後の改良G17、いずれも今日 でいうところのGen1を所有している。既に述べたように太いバレル付きはGen 1.1 、またはGen1.5というべ きものだ。そして1988年、Glock 19(9mm×19)、 Glock 21(.45ACP)を入手、これらはGen2だ。その後、 2003年末に入手したのが口径.45GAP Glock 37 Gen3のレイル付き。このGlock 37については旧Gun誌2004年1月号でリポートしている。.45GAPは疑問のある口径カートリッジだったが、機能本位の平凡な冴えない角型外見のGlockオリジナルより精悍なGlock37の格好は好感が持てた。スライドストップが高くなり指がかかりやすく改良され操作性が一段と向上している。そしてGen4へと進化したGlockだが、スライドストップの形状はGen1、2に逆戻りとなった。
Gen1、1.1(1.5)オリジナルでの不満はその後、発売のGlock19 Gen2で改良を遂げ、それ以来、長い間、G37を除いてGlock購入は見送ってきた。
今回購入のG19 Gen5はバリバリの最新モデルではない。2017年8月30日、G17 Gen5と同時に発表されたモデルだ。しかし、長年使っているG19 Gen2をはじめ各種Glockで満足し、それ以降のモデルはスライドストップがアンビになったとか、マズルがステップクラウンになったからといって入手しようという気にはならなかった。特にG19 Gen2にはレーザーサイトを組み込んでいるのでこれをリタイヤさせるのはもったいない。Gen5の評判は良くも悪くもいろいろ耳にしている。 友人はみんな何らかのGlockを所持しているのだが、どれもGen2、3ばかりでGen5はもちろんのこと、Gen4 さえ所持している者はいない。Gen2またはGen3で満足、いずれも新たに買う理由がない…と語る。筆者もその中の一人なのだが…。だからといって最新のGlockについてその詳細を知らないというのもシャクなので、最新モデルであるGen5入手に踏み切った。入手が意外にも困難であったことについては先に触れた通りだ。
Glock 19 Gen5入手後、知ったのだがGen5とはいっても2017年8月30日の登場からほぼ3年が経過し、今回のリポートモデルは発表当初のモデルとは少々違いがある。内部メカについては手元に初期モデルがないので判らないが、その外見から即座に判る違いがある。
まず今回、入手したモデルにはスライド前方両側面に後部両側面と同じセレーション(滑り止め加工)が施されていることだ。2017年モデルはこれがない。フランス陸軍サービスサイドアームとなったGlock17Mにも 同じセレーションが備えられている。今後、製造されるすべてのモデルがこのパターンになるのか不明だが…。また初期のG19 Gen5のスライド前部のコーナーはリポートモデルと同様、両側面から絞り込んだカーブとなっていたが、グリップフレームの先端がマッチせず角のままだった。
カーブのラインがマッチしないということでこれは結構、批判された。不思議に思ったのはメーカーとて市場に出す前にこのデザイン上の問題は判ったはず?プロトタイプなら理解できるが、量産モデルでとなると首を捻らざるを得ない。正直、いったい何を考えてるんだろうって思った。
TEXT:Gun Professionals テキサス支局/アームズマガジンウェブ編集部
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2020年9月号 P.30~P.33をもとに再編集したものです。