実銃

2022/10/13

実銃で見るサブマシンガンコレクション【無可動実銃】

 

無可動実銃の魅力

 

 実銃に加工を施すことにより弾薬の発射機構を完全に廃し、安全かつ合法的に所持できるようにしたものを無可動実銃という。射撃は不可能だが、発射機構とは関係がない外装やギミックはそのまま残されており、“本物”が醸し出す鉄肌の魅力を存分に感じ取ることができる。銃規制が厳しい日本国内においても民間人が制約を受けずに購入し、所持することが可能なものであり、最も身近な“実銃”である。今回はそんな無可動実銃のサブマシンガンをピックアップし紹介していこう。

 


 

トンプソンM1928A1

 

 

 

DATA

  • 全長:855mm
  • 使用弾薬:.45ACP
  • 装弾数:20/30/50/100発

 

 トンプソンM1928A1はまだサブマシンガンという武器のジャンルが確立する以前、1920年代に作られた銃だ。開発当初はただ単純に、大量の弾丸を連続的に発射し続ける銃というコンセプトの元で開発されたM1928A1は、発売当初は軍用としては重すぎるという評価からアメリカ軍の制式採用には至らず、禁酒法時代の無法者たちが起こす犯罪に多用された暗い歴史を持つ。しかし1940年代に入り第二次世界大戦が勃発すると、アメリカ軍はトンプソンM1928A1が持つ火力に注目し、制式採用銃として配備を開始した。戦時中の大量生産に適合するためにM1928A1を簡略化したM1A1ミリタリートンプソンなど派生モデルも登場し、これらは朝鮮戦争やベトナム戦争でも使用され1970年代まで第一線で活躍したモデルとなった。

 


 

スオミ M44

 

 

 

 

DATA

  • 全長:825mm/625mm(ストック収納時)
  • 使用弾薬:9mmx19
  • 装弾数:71/50/36発

 

 スオミM44短機関銃は1944年にフィンランドにて開発されたサブマシンガンだ。1941年〜1944年に勃発した継続戦争において、敵対国であるソビエト連邦軍から鹵獲したPPS-43サブマシンガンを参考に設計されており内部構造と外見はほぼ同じだが、フィンランド軍の要望により使用弾薬が9mm×19パラベラム弾に変更されている。これは当時、同盟国であったドイツ軍と弾薬を共有するための改修であったが、戦後に9mm×19パラベラム弾は西側諸国のスタンダードな弾薬となったことでスオミM44は1970年代まで使用され続ける息の長いサブマシンガンとなった。

 


 

Walther MPL

 

 

DATA

  • 全長:737mm/455mm(ストック収納時)
  • 使用弾薬:9mmx19
  • 装弾数:32発

 

 1950年代、冷戦直下の西ドイツでは法執行機関の装備更新計画が発表され、ワルサーもこの需要に合わせた新型サブマシンガン、MPLを開発し、各機関に売り込みをかけた。プレス加工によりコストを抑え、バレルより上方に機関部を配置したレイアウトを採用することにより反動を抑制し命中精度を高め、L型ボルトの使用にて全長の短縮化に成功したMPLはドイツ製品らしい高性能を持ち合わせており好評を博した。だが1960年代に入ると、より高性能なH&K MP5が登場したことにより、MPLのシェアはMP5に奪われ、法執行機関の制式採用銃としての座を明け渡すことになったが、その後もMPLはベトナム戦争などの非正規作戦で使用され1988年まで製造が続いた。

 


 

IMI Micro UZI

 

 

 

 フルサイズのUZIはイスラエル国防軍の制式採用銃として1950年代から使用され続けていた。1980年代に入り、よりコンパクトなサブマシンガンを求める声が高まるとIMIはUZIの全長を限界まで短く切り詰めたMicro UZIを開発。Micro UZIはフルサイズUZIに比べてボルトの後退量が減少し、スプリングも強化されたため、毎分1,400発という高レート射撃が可能となった。32連発弾倉を2秒で撃ち切ってしまうフルオート射撃のリコイル制御は不可能に近いものだったが、この銃を好んで使う法執行機関の人々からは近距離の制圧力に優れると好意的な意見が多かった。2000年代に入りドットサイトなどが普及するとボルトハンドルを左側面に移設し、トップレールを備えた近代化Micro UZIが登場する。これは後に大改修を受けたUZI PROという発展型となり2022年現在でも製造が続けられているモデルとなった。

 


 

H&K MP5A3

 

 

 

DATA

  • 全長:660mm/500mm(ストック収納時)
  • 使用弾薬:9mmx19
  • 装弾数:10/15/30発

 

 1960年代に開発されたMP5は基本的な構造レイアウトはそのままに、50年以上も世界中で使用され続けているサブマシンガンのベストセラーだ。1960年代のサブマシンガンでは珍しかったクローズドボルト方式を採用し、H&Kのローラーロッキング機構と相まって非常に高い命中精度を獲得し、高い性能を誇ったMP5だったが、リリース当初は西ドイツの法執行機関にて少数が使用されるだけだった。1977年に発生したルフトハンザ航空181便ハイジャック事件と1980年の駐英イラン大使館占拠事件において突入部隊が使用したことが報道されると、MP5の性能に世界中から注目が集まり出した。多数の人質がいる状況で犯人だけを正確
に撃てるSMGという評判は瞬く間に広がり、今日のMP5が持つ高い信頼性を築いていったのだ。

 


 

B&T APC9 SD

 

 

DATA

  • 全長:768mm/556mm(ストック収納時)
  • 使用弾薬:9mmx19
  • 装弾数:15/20/25/30発

 

 2010年代に入り、法執行機関では長年使用が続けられてきたMP5シリーズを超える、新たな世代のサブマシンガンを求める声が大きくなっていた。米軍が制式採用銃のコンペティションを開催すると、各銃器メーカーは新規設計のサブマシンガンを製造しトライアルに参加し、その中でも注目を集めたのはスイスの新興メーカーB&TのAPC9であった。B&Tは主にサプレッサーなどアクセサリーパーツを開発し製造と販売を行なっていたが、2004年にはステアーTMPの製造権を買い取り、自社にて改修を加えた後にMP9サブマシンガンとして販売を開始。様々な法執行機関にて高い評価を得ている。そんなB&Tが完全新規設計にて作り上げたAPC9は米軍の制式採用銃という座を獲得し、新たな世代のサブマシンガンとして道を切り開いた。

 


 

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TEXT:津軽太郎

 

この記事は月刊アームズマガジン2022年10月号 P.56-59をもとに再編集したものです。

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