ミリタリー

2022/09/17

【陸上自衛隊】機動師団の中核、第43普通科連隊

 

戦技を磨く“令和の防人”を見た!

 

 近年、ますます緊迫の度合いを高めつつある南西諸島の防衛において、有事の際緊急展開が可能な「機動師団」として生まれ変わった陸上自衛隊西部方面隊第8師団。その中核を担う部隊の1つが、宮崎県は都城駐屯地に所在する第43普通科連隊だ。今回は、今年6月に霧島演習場で実施された市街地戦闘訓練の模様をお伝えしていく。

 

市街地戦闘訓練


 第43普通科連隊の市街地戦闘訓練が実施された霧島演習場は、宮崎県えびの市と鹿児島県湧水町に跨がり、約10万㎡の敷地を持つ。陸上自衛隊の演習場としては中規模程度であり、場内では各種戦闘訓練、野営訓練、へリ離発着訓練、ヘリボーン訓練等が行なわれる。その中でも特に注目されるのが、大小さまざまな鉄筋コンクリート製の建造物が並ぶ「霧島市街地訓練センター」と呼ばれる一角だ。この施設はレーザーを用いる装置を使用することで、実戦的な市街地戦闘訓練を実施できるのが特徴となっている。
 本訓練の目的は、同普通科連隊の隊員による「市街地での戦闘能力向上」で、訓練ではこの市街地訓練センターを用いて室内における前進、射撃、支援などが念入りに演練され、室内における戦闘要領が各隊員に叩き込まれていった。

 

ブリーフィングでは本訓練の目的や実施要領の再確認、特に安全管理についての確認が徹底された

 

訓練開始前。脚を立てた89式5.56mm小銃が並ぶ

 

まず目標の建物に接近し、突入までの要領から。基本的にバディ(相棒)と息を合わせながらの組行動で、89式小銃を構えつつ入口に到達。内部を警戒しつつ進入する

 

建物への突入の様子。意思疎通は手信号を用いて、全周を警戒しつつビル内へ突入する。無駄のない機敏な動きで、静かに突入していく姿が印象的だった


第43普通科連隊とは

 

 九州・沖縄を警備区域とする、陸上自衛隊西部方面隊。その隷下部隊の中でも第8師団は、九州南部の3県(熊本、宮崎、鹿児島)の防衛警備や災害派遣任務を遂行しつつ、平成29年度末には全国の部隊に先駆けて機動師団に改編。必要に応じて警備区域を越えての緊急展開を可能としている。
 今回ご紹介する第43普通科連隊は、「鎮西機動師団」こと第8師団の中核を担う部隊の1つだ。同連隊が所在する都城駐屯地は宮崎県南部の主要都市・都城市の南側高台に位置し、その北西方向には天孫降臨の地として知られる霊峰・高千穂峰がそびえるというロケーションで、明治の頃から地域住民に親しまれてきた。そして、同駐屯地に所在した帝国陸軍歩兵第64連隊はノモンハン(満蒙国境)やルソン島(フィリピン)、歩兵第23連隊は中国戦線やブーゲンビル島(ソロモン諸島)など日中・太平洋戦争で奮戦して勇名を馳せており、その足跡は同駐屯地の資料館にも残されている。

 

訓練時は雨天だったため、隊員の装備は迷彩雨衣にチェストリグのスタイルで統制されていた。マガジンポーチやダンプポーチなどのセットアップも各自に創意工夫が見られる

 

閉所(建物内など)での射撃に慣れるため、空包を用いた射撃訓練が行なわれた。銃口には射撃音を抑制しつつ安全に空砲射撃ができる装置が装着されている

 

弾倉には空砲以外に、ランダムにダミーが装填されており、不発に対処する訓練も行なわれた。不発が出ると隊員たちは速やかに処置し、射撃を続けた

 

部隊の沿革と編成

 

 戦後、警察予備隊を経て保安隊(陸上自衛隊の前身)が創設された後、昭和26(1951)年8月には宮崎県の防衛・警備を担当するため、鹿児島県鹿屋市から第12普通科連隊第2大隊が移駐。昭和37(1962)年8月には第43普通科連隊へと改編され、現在に至っている。なお、同連隊所属隊員の約8割は地元の宮崎および隣県鹿児島の出身であり、まさしく郷土とともにある部隊と言えるようだ。そして、日本国民の信頼と期待に応えるべく、日夜訓練に精進している。
 現在、同連隊は地上戦闘の骨幹部隊として機動力、火力、近接戦闘能力を有し、作戦戦闘に重要な役割を果たしている。また、都城駐屯地には後方支援部隊の第8後方支援連隊第2整備大隊第3普通科直接支援中隊や駐屯地業務隊などの部隊が所在している。

 

続いて室内戦闘訓練が行なわれる。訓練を前に戦闘要領の認識統一が各隊員に再確認され、各人の役割にしたがって行動する

 

彼らの動きを見ながら、インストラクター(教官)がアドバイスをかける

 

ドアの手前でルームエントリーに備える隊員たち。女性隊員も男性隊員と同様に訓練に励んでいた

 

戦闘要領に従って各部屋を一つ一つ確認(クリアリング)しながら敵がいれば戦闘を行ない、フロアを前進


負傷者発生への対処

 

被弾し負傷者が発生した想定の訓練も行なわれる。負傷者発生時は確実な救急法と、安全な場所への搬送などが重要となる

 

安全が確保された部屋に負傷した隊員を速やかに搬送。負傷した仲間を決して見捨てない姿勢は、全体の士気の維持にもつながる

 

救急法を施しつつ、負傷の程度に応じて野戦病院などに後送するか速やかに判断する

 

負傷した隊員がショック状態などに陥っていないかどうか、声掛けで確認することも重要となる

 

 さて、月刊アームズマガジン2022年9月号ではより多くの写真を掲載し、第43普通科連隊の訓練の模様を紹介している。気になった方はぜひそちらも併せてご覧いただきたい。

 

 

Text & Photos : 笹川英夫
取材協力:陸上自衛隊 第8師団、第43普通科連隊

 

この記事は月刊アームズマガジン2022年9月号 P.146~155をもとに再編集したものです。

 

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