2022/09/08
【実銃】フランスの軍事イベント「EUROSATORY」で見た陸軍装備
EUROSATORY
フランス国防省が開催するユーロサトリ。そこではフランス軍の様々な部隊がデモンストレーションを行なった。大迫力のイベントの取材レポートを公開し、最新鋭の小火器、個人装備を確認・紹介する。
待望のユーロサトリ
フランスでは安全保障、あるいは防衛に関わる展示会として内務省が主催するミリポール、国防省が主催するユーロサトリが毎年代わる代わる開催されている。今年は国防省のユーロサトリが開催される年だ。それぞれ2年ごとに開催される展示会ではあるものの、前回はコロナ禍真っただ中ということで中止となってしまい、今回は実に4年ぶりの開催となった。
このユーロサトリは国防省が主催ということもあり、展示されるものは戦車や装甲車の軍用車輌、ヘリコプターや今流行りのドローン、小火器から制服などの個人装備と様々。大型の展示物も多いため、会場はホール内だけでなく野外にも設けられている。
このユーロサトリで特に面白いのは、ライブデモンストレーションが行なわれることだ。これは会場敷地内で実際に展示物を動かして見せるという催しで、特設会場の悪路の中を走り回る新型の戦車・装甲車など、普段なかなか動いているところを見る機会のない装備を存分に見ることができる貴重な場である。
フランス陸軍
Armée de Terre française
フランス陸軍はかなり前から「フューチャーソルジャー計画」を提唱している。これは戦場で空中警戒機、あるいは空中の指令機を経由し、一歩兵から戦車・戦闘機、司令部に至るまで戦場の情報をリアルタイムで共有するというものだ。「フューチャーソルジャー」とは銘打っているものの、今や現代戦に必須のシステムとなっている。そういうこともあり、今回のデモンストレーションでは「未来」というタイトルは取っ払い、現代戦術の一つとして紹介された。特に戦闘車輌群は近代化計画「スコーピオン・プログラム」によってアップデートされている。これが適用された車輌にはSCIS(Scorpion Combat Information System)と呼ばれる戦闘情報ネットワークシステムが搭載されており、各車輌間での高度な情報共有を実現している。この「スコーピオン・プログラム」に基づいた戦術は“ミッション・スコーピオン”と呼称されるようだ。
今回のデモンストレーションのシナリオはこうだ。
仮称“マーキュリー”という独裁国家がフランスの友好国“サヴォワージ”に侵攻。サヴォワージ国はコロナ禍で経済が低迷しており、自国を守り切るだけの防衛力がない状況だ。そこでサヴォワージ国はフランス政府に応援を要請。NATOの許可を得たフランス軍が正式に軍事介入した。このサヴォワージという名称はフランスのサヴォワ地方に似せている。これに合わせて、実際にサヴォワ地方の山岳部隊がこのデモンストレーションに参加している。
作戦目標は敵の本拠地を索敵し壊滅させることにある。ドローンを使用しての情報収集の後、軽歩兵と軽装甲装輪車輌化歩兵部隊で構成された第11落下傘旅団が、A400M輸送機から投下された120mm迫撃砲を引くファルディエで威力偵察を行なう。なお、車輌や迫撃砲などの物資の降下にはSMTCOPSという最新の落下傘システムを導入している。
さて、ここからが“ミッション・スコーピオン”の出番だ。第27山岳歩兵旅団のグリフォン(指揮車:汎用装甲車)はジャガー(戦闘装甲車)、サーバル(汎用装甲車)を指揮運用して敵拠点を特定。カエサル155mm自走榴弾砲で砲撃を加える。これは2分間で6発の砲撃が可能なトラック車載式の榴弾砲で、停車から砲撃、砲撃地点を探知され反撃されるまでに移動し再度砲撃を行なう戦術を基本としている。カエサルの砲撃でミサイル発射基地など脅威を破壊した後、AMX-10RC機動戦闘車や主力戦車のルクレールを投入する。
最後に歩兵部隊による制圧が行なわれる。まず爆発物による罠などがないかを確認するFOSが展開。脅威を取り除くと歩兵が投入される。彼らの装備は最新鋭のものに更新されており、軽量で快適ながら充分に頭部を保護するF3ヘルメットにJVN O-NYX暗視スコープ、BDUにはトレリス F3、ボディアーマーはSMB、メインウェポンにはHK416F、サイドアームにはグロック17FRというのが現代フランス軍兵士の個人装備だ。フランス軍ではここ数年で個人装備から電子戦車輌まで、一気に装備が新型に入れ替えられている。
フランス陸軍のデモンストレーションだけでも見応えがあるが、ユーロサトリではGIGN、RAIDといった部隊もデモンストレーションを披露した。次回はユーロサトリで見たGIGNのレポートを公開しよう。
Photo & Text:櫻井朋成(Tomonari Sakurai)
この記事は月刊アームズマガジン2022年9月号 P.202~209をもとに再編集したものです。