2022/08/07
【実銃】FNの現行最新ピストル「FN 509」の実力とは?
FNの現行最新ピストル
ついに発表されたブローニングハイパワーの後継と目されるFN HiPer。それの期待が高まる一方で、現行の最新ピストルFN 509はどのような魅力を秘めているのだろうか? 今回はその実射レポートを公開しよう。
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FN 509
- 使用弾:9mm×19
- 全長:190mm
- バレル長:100mm
- 重量:760g
- 装弾数:17発
FN509は米軍のXM17モジュラー・ハンドガン・システム・コンペティション(MHS)にあわせてFN USAが開発したストライカーファイアのピストルだ。コンペはご存じの通りP320が勝ち残ったものの、FN509はフルサイズからコンパクトまで揃ってFNのカタログに載った。
FNはベルギーの半国営企業ではあるが、決して保守的なブランドではない。F2000やP90のような他にはないデザインとシステムを持つ銃でしばしば世間を驚かせているが、それでいてすぐに壊れたり作動不良を起こすような粗末なものは出てこない。徹底的にテストされてからリリースされるのだ。そんなブランドが初めて手掛けたポリマーフレームピストルはFN Five-seveNだった。ただしこれは市販向けではなくあくまでも法執行機関向けで、そのうえ内蔵式のハンマードモデルだった。市販品ではFN フォーティナインが初めてとなるが、商業的には失敗に終わる。このモデルに続きFNPが登場するが、これもポリマーフレームを持ちながらハンマードモデルであった(ハン
マードモデルが無条件に悪いと言っているわけではないので念のため)。その後登場したFNXとFN45というハンマードのモデルは高く評価された。そして、米軍のMHSに合わせて登場したのが509というわけだ。
FN 509を射撃
Five-seveN以降のFNのピストルはどれもアメリカの子会社によるモデルだ。FN HiPerの登場によってこの509もカタログから消えていくだろうということで、撃ち納めの意味も込めて今回射撃することに相成ったわけである。ちなみにFN初のストライカー式の銃は1900年に登場した、世界で初めて市販されたスライド式ピストルのFNブローニングM1900だった。FNはストライカー式ピストルに関して長い歴史と経験を持っているのだ。
ピストルの理想はバレルの真後ろにグリップを持ってくることでマズルジャンプをなくすことだが、それは構造上無理なので出来る限りグリップとバレルの高さを近づけるのが基本となる。ストライカーの場合、ハンマードに比べバレルを低くしてグリップに近づけられるのがメリットのひとつでもあるのだが、最近のポリマーフレーム・ストライカーファイアピストルはそのあたりを考慮しない傾向にあるようだ。米軍に採用されたP320は元々ハンマードのP250をベースにしているからバレルもスライドも高い位置にある。今回のFN509も同様だ。それがどんな影響を与えるかを気にしながら射撃をした。
マガジンに弾を装填し、スライドを引く。スライドの背が高いぶん、セレーションの効果も大きくなり操作しやすい。エイミングも良好だ。いざ撃ってみると、何よりもトリガーフィーリングがいい。以前、FNはフォーティナインのトリガーを重くしすぎてまともに射撃できないという失敗を犯していたというのが頭にあって、意地悪にトリガーフィーリングをやたらと気にしてしまっていたのだが、まったく問題がない。それどころか、トリガーフィーリングをよくしにくいストライカーファイアピストルとしてはこの上ないほどの切れ味を誇っている。グリップのチェッカリングのおかげで、マズルジャンプも小さくはないが暴れるというほどではない。総じてなかなか悪くない撃ち心地であった。
このFN509の射撃を通じて、まだ写真で見るだけのFN HiPerを想像する。グリップの形状やチェッカリングからも高いグリップ感が期待できる。スライドも低く収まっており、バレルとグリップの高低差はかなり狭まっているようだ。FN HiPerはレジェンダリーなハイパワーをオマージュしたピストルということもあり、期待が膨らむ。現行のFN 509を見てより強くそう思うのだった。
Special Thanks to
FN HERSTAL S.A. : https://fnherstal.com
Le cercle de tir de Wissous:https://www.youtube.com/c/
LecercledetirdeWissous/featured
Photo&Text:櫻井朋成(Tomonari Sakurai)
この記事は月刊アームズマガジン2022年8月号 P.138-145をもとに再編集したものです。