実銃

2022/08/22

【実銃】FNX-45タクティカルの原型になったハンドガン「FNP-45」

 

FNX-45の原型「FNP-45」

 

 エアガンで使用する方も多いFNX-45タクティカル。それの原点となったハンドガンといえるのがFNP-45だ。今回はベルギーの銃器メーカー、FNハースタルが手掛けた.45口径のハンドガンの実銃レポートを公開しよう。

 

 

FN HERSTAL

 

 ベルギーに本拠地があるFNハースタル(以下FNH)は、拳銃から軽機関銃、グレネードランチャーまでのフルラインアップを提供する総合銃器メーカーだ。ちなみにフルラインアップを提供可能な銃器メーカーは意外と少なく、このFNHとヘッケラー&コックのみである。特にベルトフィード式機関銃(各サイズ・HMG、LMG、SAW)に関しては実質的にFNHが100年近くの製造経験により、ほぼ市場を独占している。小銃部門においても近年ではSCAR-Lが米陸軍最精鋭のレンジャー連隊(第75歩兵連隊)によって採用されたことにより、その優秀さを内外に改めて誇示した。今回は、そのFNHが製造した拳銃「FNP-45」を紹介してみたい。

 

 

FNP-45

 

 FNP-45はFNX-45タクティカルの原型であり、サプレッサー用のスレッデッドバレル、高いリア/フロントサイト、マイクロドットサイト搭載用スロットがないだけで、基本的には同じ拳銃である。それ以外の大きな違いは、エジェクションポートの形状である。FNX-45タクティカルでは、エジェクションポートが若干大きくなったのと、排莢されたケースが射手を直撃しないようにと、小さな壁がエジェクション・ポート後方に追加されていた。後述するように、筆者が射撃した限りでは作動不良は一切なかった。なのでエジェクションポートを大きくしたのは必要性があったというよりも、保険の意味合いが高いと推測できる。また筆者は撃っていて真横にケースが問題なく排莢されていたので問題ないとは思ったのだが、これは右横にいる友軍兵士を考慮しての改良と思われる。実際問題、実射訓練中に真横で発砲する友軍兵士の銃から排莢されたケースが顔面を直撃するのは、鬱陶しいことこのうえないし、ケースが熱いので、火傷を負うことがある。

 

FNP-45はこのように堅牢なプラスチック製ガンケースに収納されて販売される。マニュアル、スペアマガジンが2個、ワイヤーロック、替えグリップパネルが付属してくる

 

スライド前方、銃口付近。この拳銃が.45口径であるという.45ACPの刻印が確認できる

 

スライド中央部。スライドにはFNHのロゴマークと、この拳銃のモデル名であるFNP-45が刻印されている。フレームにはスライドストップがあるが、凸が少なく引っかからないデザインだ

 

フレーム/ダストカバー部のアクセサリーレールは、当然のごとく米軍標準のピカティニースペック。これは米軍制式採用メーカーの各種ウェポンライトのセットアップに対応するのが目的であるためだ。レール中央部には識別用バーコードとシリアル番号があるのがわかる

 

リアサイトはNOVAKスタイルのTwo-Dotで、引っかかりがないデザイン。これは筆者がもっとも好むデザインでもある。リアサイト背面はセレーションが切ってあり、太陽光の反射を抑える効果がある

 

フロントサイト。リアサイトにセレーションが入っているのだからフロントサイトにも同じようにセレーションを入れてほしかったというのが本音だ。だがトリチウムサイトと交換するのが前提だとしたら、必要のないアップグレードではある

 

トリガーガードは丸びを帯びたデザインとなっている。グローブを着用しての射撃を考慮してはいるが、初期のヘッケラー&コックUSPのように露骨なデザインではない。トリガー前部に適度なスペースがあるように設計されている。初期のタクティカルピストルであるUSPなどはトリガー前部のスペースを開けすぎたため、ライトの装着と操作が難しくなったのと、USP専用ライトしか装着できないという欠点があった

 

グリップ表面には20LPIチェッカリングが入っており、手によく馴染む。フロントストラップにはチェッカリングは入っておらず、ホリゾンタルグルーブのみである。感心したのはマガジンキャッチボタンとその周辺のデザイン。上手く埋没する感じで、誤作動がないように設計されている。それでいて押しやすい

 

グリップのリアパネルは2種類あり、ストレートデザインとカーブがある。筆者の手にはカーブがしっくりきたが、グローブを着用した場合はストレートのほうが合う。この辺もUSSOCOMでの使用を意識したデザインなのだろう

 

セーフティとスライドストップレバーは当然ながらアンビである。これらも大き過ぎず小さ過ぎないデザインでちょうどいい感じだ。これが大き過ぎると何かに触れて勝手にオン/オフになってしまうし、小さすぎると操作しづらい。また、このセーフティはデコッキングレバーも兼ねている

 

 月刊アームズマガジン2022年8月号ではより詳しくFNP-45の特徴を解説している。このハンドガンについて気になった方はぜひそちらもご覧いただければ幸いだ。次回のレポートではこの実銃を実射。使用感を確かめてみよう。

 

TEXT&PHOTO:飯柴智亮

 

この記事は月刊アームズマガジン2022年8月号 P.146~153をもとに再編集したものです。

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