ミリタリー

2022/08/23

【陸上自衛隊】第7師団の10式戦車&90式戦車を解説

 

日本の主力戦車の実力とは

 

 我が国では唯一の機甲師団である第7師団において、戦力の要となるのが10式戦車と90式戦車だ。ここでは、日本が誇るこの2種類の主力戦車について解説していこう。

 

【陸上自衛隊】第7師団のさまざまな部隊についてはこちら

 


 

10式戦車

 

第71戦車連隊第2中隊所属の10式戦車。乗員は車長、砲手、操縦手の3名。日本製鋼所が開発した国産44口径120mm滑腔砲は軽量高腔圧砲身を備え、新型の国産徹甲弾により従来型よりも装甲貫徹力を向上させている

 

  • 製造:三菱重工
  • 全長:9.42m
  • 全幅:3.24m
  • 全高:2.3m
  • 重量:44t
  • 最高速度:70km/h
  • エンジン:液冷4サイクルV8ターボディーゼル1,200ps
  • 懸架方式:油気圧
  • 主砲:10式120mm滑腔砲(口径長44)
  • 車載機銃:12.7mm重機関銃M2、74式車載7.62mm機関銃
  • 乗員:3名

 

 冷戦終結後の多様化した脅威に対応すべく開発された10式戦車は戦後国産戦車としては4代目にあたり(世界的に見れば戦後第3.5世代MBTに相当すると言われている)、平成22(2010)年度より調達を開始。日本全国での運用を想定し従来の90式戦車に比べ軽量化され、新世代のパワーパック(動力装置)と相まって応答性・敏捷性を向上させている。さらに、C4Iシステム(ネットワークを用いた指揮統制や情報共有、射撃指揮等)や高性能の射撃統制装置、モジュール型装甲(装甲を分割することで被弾時や更新時の交換が比較的容易)、より威力を増した純国産の戦車砲を装備するなど、最新主力戦車にふさわしいスペックを誇る。

 

分割式のモジュール型装甲に覆われた砲塔。敵が照準の際に用いるレーザーを検知するためのセンサーも備えている。描かれたマークは、第71戦車連隊のシンボル「鉄牛」

 

車長ハッチに備えられた12.7mm重機関銃M2

 

砲身の向かって右下に、連装銃と呼ばれる74式車載7.62mm機関銃の銃口がのぞく

 

車体後部。排気口や、装着された牽引用のケーブルの様子が分かる

 

 


 

90式戦車

 

90式戦車は西側諸国の重厚長大な戦後第3世代MBTに匹敵するスペックを備えており、日本では北海道での運用がメインとなっている。こちらは第72戦車連隊第4中隊所属車

 

  • 製造:三菱重工
  • 全長:9.8m
  • 全幅:3.4m
  • 全高:2.3m
  • 重量:50.2t
  • 最高速度:70km/h
  • エンジン:液冷2サイクルV10ターボディーゼル1,500ps
  • 懸架方式:油気圧+トーションバー
  • 主砲:90式120mm滑腔砲(口径長44)
  • 車載機銃:12.7mm重機関銃M2、74式車載7.62mm機関銃
  • 乗員:3名

 

 西側諸国の戦後第3世代MBT(ドイツのレオパルト2、アメリカのM1エイブラムスなど)にあたり、戦後国産戦車としても3代目となる90式戦車は、冷戦期に開発がスタートし、平成2(1990)年に制式化された。パワーパックに1,500馬力のエンジンを備え、ハイブリッド懸架方式(油気圧懸架とトーションバー併用)を採用するなど、高い機動性を実現。射撃統制では各種センサーやデジタル計算機、熱線映像装置、照準具安定装置などが装備されたことで、走行間や夜間射撃において精度を向上させている。防護力の面では複合装甲、レーザー検知装置、個人吸気式CR防護装置を採用するなど、採用当時の列国第3世代MBTと比較してもひけをとらない実力を備えている。

 

ドイツのラインメタルが開発し、日本製鋼所がライセンス生産した120mm滑腔砲L44を装備。西側諸国の戦後第3世代MBTでは標準となっている戦車砲だ

 

1部の車輌はアタッチメントを介してドーザーブレードを装着できる

 

90式も砲身の向かって右下に74式車載7.62mm機関銃が装備される

 

排気口や牽引ケーブルを備えた車体後部。10式戦車と似ている

 

乗員は10式同様車長、砲手、操縦手の3名。西側の第3世代MBTとしては他に先駆けて自動装填装置を採用し、省力化を図ったことが注目された

 

 月刊アームズマガジン2022年8月号では第7師団に配備されたさまざまな装備を解説している。そちらも併せてご覧いただければ幸いだ。次回は89式装甲戦闘車と第11普通科連隊の普通科隊員について解説しよう。

 

Planning & Photos : 笹川英夫

取材協力:陸上自衛隊第7師団

 

この記事は月刊アームズマガジン2022年8月号 P.108~111をもとに再編集したものです。

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